第三十八話 それぞれの訓練
巨木の洞窟から帰ったフレディア達は、アルガの町に復活したギルドへ立ち寄りました。
回収した魔物を買い取ってもらうためです。
このギルド、フレディアがマスターになるのを断ったので、まだその席は空いたままになっています。
そのため、今このギルドをまとめているのは、Cランクの剣士ガシュエルが、仮の副ギルドマスターとして頑張っていました。
「やぁ、フレディア殿、ごきげんよう!」
「今日は魔物の買い取りですか?」
「うん、それとね、ちょっとお願いがあるんだけど・・・」
「はぁ、なんでしょう?」
「実はうちのチームに、剣技を教えてくれる人を捜しているのよ~」
「だれか紹介してくんない?」
「剣の技術ですか・・・」
「う~~~ん・・・」
しばらく考え込んでいたガシュエルが、ポン!と手を打って口を開きました。
「あっ、それなら!」
「今は引退して鍛冶屋をやっている、バルトさんが適任じゃないかな?」
「現役の頃はBランクの剣士だったしね!」
「ありがとう!さっそく行ってみるね!」
一行はギルドを出ると、さっそく鍛冶屋へ向かいました。
その道中で少し気になったのか、ロックがフレディアに尋ねました。
「剣技を習うって、シルヴィーさんだよな?」
「何言ってんのロック!あなたもでしょ!」
「えっ、何でオレ?」
「オレはロックルーラーなんだぞ?!」
「うふふっ・・・」
「いくらカッコいいゴーレムを作っても、あの戦い方はないですわ!」
「ガ~~~ン!!」
いつもやさしいルナに言われたロックは、ショックでもう何も言えなくなってしまいました。
ガックリと肩を落とし、トボトボと後ろをついて来ます。
「ロック様!私も頑張りますから、一緒に頑張りましょうね!」
落ち込んだ様子のロックを見たシルヴィーは、励まそうとしましたが、完全に落ち込んでいるロックには逆効果でした。
「あの、シルヴィーさん、オレの事は呼び捨てにしてください」
「自分、見た通りの、ダメなロックルーラーなので・・・」
「そ、そんなぁ~!」
励まそうと声をかけたロックがますます落ち込んだので、シルヴィーはどうしていいのか分からず困ってしまいました。
「シルヴィーよ、ロックがそう申しておるのじゃ」
「え、ええ・・・」
「わかりました!」
「では、私の事もシルヴィーと呼び捨てでお願いします!」
「ふぁ~い」
ロックは気の抜けた声で返事をしました。
「うむ、それで良いのじゃ!」
ポンポンは何故か、とても満足そうにしています。
「こんにちわ~!」
「バルトさんいますか~?!」
鍛冶屋に着いたフレディアは、大きな声で呼びました。
「はいよ!」
工房の中から50代半ばの、白髪交じりでヒョロッとした背の高い男が出てきました。
「おっ、これはフレディア殿ではありませんか?」
「剣の修理に来たのですか?」
「違うよ!」
「ガシュエルに聞いて、剣の使い方を教わりに来たの!」
「はぃ?それはどういう事で?」
フレディアは、ロックとシルヴィーに、剣士としての技術を身に付けさせたいと説明しました。
「なるほど、そういう事でしたら・・・」
「ほかならぬフレディア殿の頼み、ワシでよければお引き受けいたします」
「やった!ありがとう~!」
「でね、報酬はギルドに買い取ってもらった魔物の代金の三割でどう?」
「いや、フレディア殿の頼みじゃ、お金は受け取れませんよ」
「それに、この国のために働いてくれているのに・・・」
「それはダメよ!きちんと授業料を受け取ってもらわないと!」
「これはあなたに、お仕事としてお願いするんだから!」
「ロックとシルヴィーも、お金を払うんだから、しっかり学んでよね!」
「「は、はい!」」
「なんじゃフレディアって、本当に天使なのか?」
「わしらより人間くさい気がするのじゃが・・・」
ポンポンはルナにコソッと尋ねました。
「うふふっ、そうね~」
「でも、そこがフレディアの良いところなのよ~」
「そ、そうなのか?」
ポンポンもふわ~っとしたルナに言われて、何となく納得したようです。
そんな訳で、バルトの仕事が終わってから、二人は剣の訓練を受ける事になりました。
「じゃぁ、次はポンポンね!」
「むっ?わしも何か習い事をするのか?」
「召喚魔法を使える人はこの町にはいないから、教わる事は出来ないのよ」
「ミントの町のギルドには、面白い召喚士が一人いるんだけどね・・・」
「うふふ・・・」
フレディアはギルドの試験で、とんでもない魔物を召喚してしまった、召喚士のおじさんの事を思い出していました。
「習い事じゃないけど、でも特訓は必要ね!」
「なんじゃ特訓とは、いやな響きじゃのう・・・」
「ポンポンのすごいところは、詠唱時間が短い事なのよね~」
「つまり、魔力と呼び出す力、つまり思念が強いって事なの!」
「これって、召喚士にとっては最大の能力なのよね!」
「うむ、フレディアよ、よく分かっておるではないか!」
ポンポンはググっと胸を張って答えました。
「だけど問題は、召喚してみないと何が出るか分からない事なのよね~」
「むっ!た、たしかに・・・」
ポンポンの姿勢が少し、前かがみになりました。
やはり本人も気にしているようですね。
「だったら、呼びたい相手と契約を結べばいいのよ!」
「「「ええ~~~っ?!」」」
さすがにこれには他のメンバーも驚きの声を上げました。
当のポンポンはズッコケています。
「ま、まつのじゃフレディア!」
「契約って、おぬしは簡単に言うがのぉ」
「召喚士にとって、これほど難しくて、大変な事はないのじゃぞ?」
「なにしろ、契約は相手を従わせなければならぬのじゃからの!」
「わしに、弱っちい魔物と契約を結べというのか?」
「ちがうわ、その逆よ!」
「強い力を持った精霊と契約を結べばいいのよ!!」
「「「「ええ~~~っ?!」」」」
「「「「精霊~~~!!?」」」」
バタッ!
ポンポンはフレディアの言葉を聞いて、目を回してしまいました。
翌日、フレディアはポンポンを連れて旅立つことになりました。
「じゃぁ、ルナ!後の事はよろしくね!」
「分かったわフレディア、わたくしに任せて!」
「それと、セーラムにもよろしく言ってね!」
「キャハハ!」
「ラジャー!」
ヘーベル歴251年1月
フレディアは、ロックとシルヴィーの面倒をルナに任せ、フロイドに乗って旅立ちました。
行先は妖精の里にある、『最果ての沼』です。




