第三十六話 アルガの町はいま
<主な登場人物>
久しぶりに登場した人物を紹介しておきます。
<ギリガン>ロックルーラーの里の長老 黒い髪に金色の瞳 2メートルを超える大男 特技:ゴーレム生成
<ロック>長老の息子 黒いストレートの髪に、茶色の瞳 身長185センチ 17歳9月生まれ 特技:ゴーレム生成
<カミラ>ギリガンの妻 黒い髪に茶色の瞳 身長175センチ 37歳 特技:お料理が得意
12月も下旬となると、大陸の中央部でも夜は氷点下にまで下がり、寒くて飛行する事は出来ません。
日が暮れる前には地上へ降りてキャンプを設営するため、アルガの町へ到着するのに4日掛かりました。
フレディアがアルガの町へ戻って来たのは、町を解放してから3カ月ぶりになります。
「うわっ!なにこれ?!」
「すご~~い!」
町に到着したフレディアは驚きました。
町の周りは頑丈な岩で出来た高い防壁に囲まれ、まるで要塞都市のようになっていたのです。
「すごいですね!これではちょっと攻められないですね!」
「えっ!これをたったの3カ月で造り上げたのですか?」
「うん、わたしが出発する時はなかったもの」
シルヴィーも壁を見上げて驚いています。
「あ~~~っ!帰って来ましたよ!!」
防壁の上の見張り台から、フレディア達を見つけた町の人が大声で知らせています。
しばらくすると、岩で出来た扉がものすごい音を立てて開きました。
ガ・ガ・ガ・ガ・ガ~~~~ン!!!
「よくぞ帰られましたな!!」
中から出て来たのは、身の丈2メートルを超える大男のギリガンです。
「ただいま~!」
「「「「「おかえりなさ~い!!!」」」」
フレディアが帰って来たのを知り、町中の人が集まって来ました。
もちろんロックも聞きつけて、こちらへやって来ました。
「よぉ!やっと帰って・・・」
「!!?」
(な、なんでコイツもいるんだよ?!)
フレディア達の先頭に、ポンポンが胸をそらして立っているのを見たとたん、ロックは固まってしまいました。
「なんじゃ、おぬしはロックではないか?」
「お、おぅ、ひさしぶりだな・・・」
「挨拶は良いから、早く案内するのじゃ!」
「突っ立ったままでは、ゆっくり話も出来ぬじゃろう?」
「は、はい・・・」
(くそっ!なんでオレがコイツに偉そうに言われなきゃ・・・)
「あらっ?かわいいお嬢さんだね?!」
「ロックの彼女かい?」
「ちがうわ!!」
ロックの後ろから声をかけたのは、母親のカミラでした。
「あっ!ロックのお母さん!」
「フレディア様、お帰りなさいませ!」
「まぁ!」
「まぁ、まぁ、まぁ、まぁ~~~っ!!」
「どうしましょう!!」
「フレディア様のお連れの方々!!」
「みなさんお美しいお嬢様ばかりじゃな~~い!!」
「ロック!あんたしっかり頑張りなよ!!」
パシッ!
「う、うっせえな!何をがんばんだよ!!」
ロックの背中を叩いてガッツポーズをとる母親に、ロックは顔を赤くして文句を言うと、ブツブツ言いながら、みんなを町の集会所へ案内しました。
ロックの話によると、町の人たちの望みでもあったので、破壊されたロックルーラーの里を捨てて、全員でアルガの町へ越して来たそうです。
「いや~フレディア様のおかげで、この町は救われました!」
町長も満面の笑みを浮かべて、フレディアの帰還を喜んでいます。
聞けば町の人たちが開放されて帰ってきた後も、二度も魔物の兵士たちが襲って来たのですが、ギリガンたちロックルーラーにこっぴどく打ちのめされ、ほうほうのていで逃げ帰ったとか・・・。
そしてその噂を聞いた近隣の集落からも、アルガの町へ移住してくる者達が後を絶たず、今ではちょっとした街になりつつあるのだそうです。
「それでフレディア様、町にも若い者が集まって来ましたので、ギルドを再建したのです!」
「おわぁ~、やったね!」
「それでですね・・・」
「フレディア様はロファ王国で、最強のチームのリーダーだとお聞きしました」
「ぜひ、我が町のギルドマスターになっていただけないかと・・・」
町長と町のギルドの冒険者数人が、フレディアにお願いしました。
「あっ、それは無理だわ・・・」
「だってわたし、新しくチームを作ったから!」
「今からそのメンバーでオッサムとザキュエルをやっつけないとダメなのよ~」
「えっ!そのような最強のチームを作られたのですか?」
「うん、だからね!」
「ここらで一番弱い魔物が出るダンジョンを教えてくれない?」
「「「「はぁ?」」」」」
次の日の早朝、フレディア達は町のギルドの冒険者から聞いた、初心者向けのダンジョンに行く事になりました。
行先は、アルガの町から南に5キロ先にある『巨木の洞窟』です。
メンバーは、フレディア、ルナ、ロック、シルヴィー、ポンポンの5名。
出掛けにロックの母親のカミラさんが作ったお弁当を、みんなに持たせてくれました。
「みんな、気を付けてね!」
「ロック!ちゃんとお嬢様たちを守るんだよ!」
「へい、へい」
「じゃぁ、いこっか!」
ガ・ガ・ガ・ガ・ガ~~~~ン!!!
門を抜ければ、そこは魔物がたくさん潜んでいる戦いの場です。
フレディアは隊列を指示しました。
先頭はロックね!
「えっ、なんでオレが先頭なんだよ?フレディアでいいじゃん!」
「あなたは戦士なんだから前衛なの!」
「前衛が先頭なのは当たり前でしょ?」
「早くゴーレムを作りなさいよ!」
「ちぇっ、わかったよ!」
「でも危なかったら、ちゃんと助けてくれよな!」
ロックは文句を言いながら、ゴーレムを作り始めました。
「フレディア様、ロック様はどのような御方なのですか?」
「フレディア様のように、戦闘のベテランなのでしょうか?」
まだ一度も戦ったことの無い戦闘超初心者のシルヴィーが、フレディアに尋ねました。
「キャハハ!」
「聞いているよロック!戦闘のベテランかって?」
「恥ずかしい事を聞かないでくれよ!」
「まだフレディアと一緒に戦った三回だけだよ!」
ロックは顔を赤くして答えました。
「あっ、ゴブリンと戦ったあれか・・・」
「えっ!そうなのですか?」
シルヴィーは自分だけが初心者と思っていたので、ちょっと驚いています。
「それで、ポンポンはどうなの?」
「シルヴィーよ、そのような恥ずかしい質問をするでない!」
(あっ!ポンポンも初めてなんだ!)
(良かった!私だけじゃなくって!)
シルヴィーは少しだけ気が楽になりました。
ロックがゴーレムを作っている間に、フレディアは隊列の順番を決めました。
「二番手はわたしね」
「三番はシルヴィー」
「はい!」
「四番はポンポンね」
「うむ!」
「最後はルナ!よろしくね!」
「は~い!」
「ロック、準備は・・・」
「「「おぉ~~~!!!」」」
「「「す、すご~~い!!」」」
出来上がったゴーレムを見て、全員が驚きの声を上げました。
以前フレディアが見たゴーレムは、身長1メートルの戦士型のゴーレムでしたが、今回は身長150センチの騎士の姿のゴーレムで、手には鉄の剣を持っています。
「すごいじゃない、ロック!」
「短い間によくこれだけのゴーレムを作れるようになったわね?」
「へっ、へっ、へっ」
「オレも結構頑張ったんだぜ~」
(親父と母ちゃんに、どれだけしごかれたと思ってんだよ~)
「褒めてんのに、なんで悲しい顔になってるの?」
とにかくロックはフレディアのいない三カ月間、父親と母親に猛烈にしごかれたのです。
フレディアの指定した時間内に、いかにリアルで強いゴーレムを作るか、その練習を朝から晩まで、精魂尽き果てるまでやらされたのでした。
おかげで最初のゴーレムは、ロックから50メートの範囲までしか操れませんでしたが、今では200メートル離れても操作が出来るようになっています。
「ロック様すごいですわ!!」
「私、ロック様のこと、尊敬してしまいました!!」
「えっ?!」
「い、いや~、そんな事ないって・・・」
シルヴィーに褒められたロックが、赤い顔で照れていると、ポンポンが横から一言放ちました。
「これシルヴィーよ、あまりおだてるでない!」
「ロックが木に登りだしたら、どうするのじゃ?!」
「どういう意味だよ!!」
「キャハハ!」
「楽しみだね!初めてのダンジョン!」
フレディアのワクワクが止まりません。




