第三十三話 パステルの町へ立ち寄りました
ヘーベル歴250年9月早朝。
フレディア達はフロイドに乗ってアルガの町へ旅立ちました。
「すごいですわフレディア様!」
「まさかドラゴンに乗って旅が出来るなんて、わたし夢にも思いませんでした!」
シルヴィーは下界の様子を眺めながら、興奮気味にフレディアに話しかけました。
てっきり歩いて旅をするものと思っていたシルヴィーは、フレディアが銀のラッパでフロイドを呼んだ時、驚いてすっ転んでしまったほどです。
「キャハハ!」
「シルヴィー、わたしの事はフレディアでいいよ」
「いいえ、フレディア様!」
「わたしたちの救い主様に向かって、呼び捨てになど!」
「シルヴィーよ、わしには別に様をつけなくてもよいぞ!」
「おぬしはわしより年上じゃからのぉ」
「あら~ぁ?ポンポンは年下なのにシルヴィーを呼び捨てなのね?」
「ルナよ、細かい事を言うでない」
「わしはすべてに平等なのじゃ!」
「はい、はい」
(この子やっぱりすごいわ~)
(ロファ王国の王子妃のルナにも物怖じしないなんて!)
(やっぱりこの子を仲間にして正解だったわ!)
フレディアはクスクスと笑いながら、これから始まる旅にワクワクしています。
その日の夕方、フレディア達はパステルの町近くの高原に降りました。
フロイドの姿を見たら、町が大騒ぎになるからです。
初めてパステルの町を訪れたシルヴィーは、その美しい街並みと人々の活気に驚いていました。見る物すべてが新鮮で、色とりどりの美しい陶芸品や、ランプが並ぶ華やかなお店に、目が離せなくなっているのです。
(あぁ、お父様がロファ王国を理想にしていたのは、こういう事だったのね!)
(私も、自分の国をこのような豊かな国にしたいわ!)
シルヴィーは未来のデプロス王国に思いを馳せました。
「今日はギルドに寄ってから、明日の朝アルガの町へ出発するよ」
そう言って一行をギルドまで案内したフレディアは、元気よくギルドの扉を開けました。
バ~ン!!
「キャハハ!来たよ~!!」
ギルドのフロアーにいた沢山の冒険者たちが、一斉にフレディアたちの方を向きました。
「「「「おぉ~~~!!!」」」
「フレディア様がいらっしゃったぞ!!」
「おい、急いで副ギルドマスターに知らせろ!」
冒険者たちは一斉にフレディアたちの前へ集まって来ました。
(キャハハ!)
(前に来たときと全然ちがうのね?!)
「あれ?」
見ると隅っこの方でモジモジしながら、フレディアに向かってペコペコと頭を下げている冒険者がいました。
「あっ、モヒカン!」
フレディアが気付くと、モヒカンと言われたレプロが、ヘコヘコしながらやって来ました。
「ど、どうもご無沙汰しておりますフレディア様」
レプロが恥ずかしそうにもみ手をしながら挨拶をすると、何者かの手がレプロの頭をモサモサと触り始めました。
「おぬし、おもしろい頭をしておるの?」
ポンポンです。
(な、なんだ、このガキは?!)
(なれなれしく、オレの頭を触るんじゃねえ!)
レプロがイラっとした時でした、バ~ン!と扉の開く音がしたと同時に、物凄い音を立てて階段を駆け下りて来る者がいました。
ド ド ド ド ド~~~~ッ!!!
まるで転げ落ちるような勢いでフロアに到着すると、ガバッとフレディアの両
手を握り締めました。
「フレディア様~!!!」
「よくぞおいで下さりました~!!!」
副ギルドマスターのサントスでした。
ところがフレディアの横を見たとたん、奇声を発して飛び跳ねてしまいます。
「ひえ~~~!!」
「こ、こ、こ、これはルナ王子妃様~!!」
「ど、どうしてこの様な場所へ?!!」
「「「「え~~~~っ!!!」」」」
驚いた冒険者たちは、慌てて片膝をついて挨拶をしました。
ポンポンに頭を撫でられていたレプロも、驚いてその場で尻もちをついています。
フレディアと一緒にバズエルと戦い、後に王子のハンクと結婚したルナの話は、この国の者なら誰でも知っているのです。
腰砕けになったレプロは、顔を青ざめながら考えました。
(フレディア様に、王子妃様?!)
(って事は、このガキ・・・じゃなくてお嬢様も、きっとすげえお方なのか?)
ギルドの全員が恐縮している中、ルナは照れて赤くなった頬を両手で隠しながら言いました。
「今日はお忍びで来ておりますので、そのような挨拶はおやめ下さいませ」
「いや、そう言う訳には・・・」
サントスの返答を遮ってフレディアが尋ねました。
「カレンはここへは帰って来たの?」
「あ、はい!20日ほど前に、仲間の冒険者たちと・・・」
その話を聞いて、フレディアはチラッとレプロを見ました。
(どこもガタガタにはなっていないわね?)
(って事は、カレンにはバレなかったのね!)
「良かったね、モヒカン!」
フレディアはレプロを見て、ニタッと笑いました。
「は、は、は、はい~~~っ!!」
ゴン!
レプロは頭を床に打ち付けて、フレディアにお礼を言いました。
「ところでフレディア様、そちらのお二人はどの様なお方なのですか?」
壁に貼られているギルドの依頼書を眺めているシルヴィーとポンポンを見て、サントスが尋ねました。
「あっ、そうだ!」
「まだ紹介していなかったね!」
「そうね、ではわたくしが紹介いたしますわ」
そう言うと、ルナが二人の紹介をしてくれました。
「この御方はシルヴィー様」
「デプロス王国、前国王の第二王子のお嬢様です」
「この度は、わたくしたちロファ王国と同盟を結ぶために来てくださったのよ」
「皆さんも、失礼のないようにお願いしますね」
「「「「はは~~~~っ!!」」」」
「おぉ!何と国賓の方でしたか!?」
「それは失礼をいたしました!」
「私はパステルの町の副ギルドマスターを務めているサントスでございます」
「どうぞお見知りおきください」
そう言うとサントスは片膝をつき、シルヴィーの手を取って挨拶をしました。
「これはどうも、ご丁寧なご挨拶ありがとうございます!」
シルヴィーもチョコンと膝を曲げて、丁寧なあいさつを返しました。
(おわぁ~!なんかカッコいいな!)
(これが大人の世界の社交辞令っていうやつね!)
(やっぱりルナが紹介してくれてよかったわ~!)
フレディアは大喜びで見ています。
次にルナはポンポンの背中をやさしく押して、一歩前に立たせました。
ポンポンは少し緊張した面持ちですが、それでも胸をググっと反って偉そうな態度を取っています。
「で、この子はポンポン!」
「ちょっと変わっているけど、皆さんよろしくね!」
「以上ですわ!」
「「「「えっ?それだけ?」」」」
あまりにも格差が大きいので、冒険者のみんなは唖然としています。
「うおぃ!」
「ちょっとルナよ!なんかわしの紹介が軽すぎるのではないか?」
ポンポンが右手を上げて意義を申し立てていますが、ルナは口に手を当てて必死に笑いを堪えています。
「キャハハハハ・・・」
フレディアはその様子を見て、大爆笑していました。




