第三十一話 チーム結成
会議の後、ダレス様は地上を調査した三名を集め、改めて調査の継続を依頼しました。
「厳しく危険な任務なのは、重々承知しておるが・・・」
「済まぬ!その方たちにしか頼めぬのだ!」
ダレス様は三名に深々と頭を下げました。
「ダレス様、頭をお上げ下され!」
「もとより、わしらはそのつもりでおりましたぞ!」
(こんな窮屈な所には、おりたくないからのぉ)
「あたしも、大切な仲間を守りたいです!」
「ザキュエルなんかの好きにはさせないから!」
三名はやる気満々で答えました。
「おぉ!引き受けてくれるのだな!ありがとう!!」
「こちらでも何か進展があれば、逐一連絡を入れるので、よろしく頼む!」
こうしてしばらくの間天界に滞在したセレノス様とカーナは、再び地上へ戻る事になりました。
ところがフレディアだけは翼の治療のため、天界の医療専門の天使たちに捕まり、完治する一ヶ月の間、天界に拘留させられてしまいました。
ヘーベル歴250年11月
セレノス様とカーナはロファの街へ降り立ちました。
ヘーベル歴250年12月
一月遅れて、フレディアはロファの街へ降り立ちます。
お城に到着したフレディアを出迎えてくれたのは、立派な装飾が施されたフルプレートアーマーを身にまとった身長2メートルを超える大男でした。
物凄い勢いで走って来ると、フレディアの手を握り締め、そして大声で叫びました。
「うお~~~!!」
「久しぶりだな!フレディア!!」
「元気にしていたか?!!」
「ひえ~~~っ!」
「あ、あんた、だれ?」
ドテッ!
フルプレートアーマーの大男はその場に倒れ込みました。
「うふふっ!」
「フレディアったら、ひど~い!」
その様子を見ていたルナが、楽しそうに笑いながらこちらへやって来ました。
「ハンクよ!」
「もう忘れたの?」
「え~~~~っ?!!」
フレディアは驚いて、その倒れている大男の顔を覗き込みました。
燃えるような赤い髪に、透き通った茶色い瞳を持つ、端正な顔立ちの青年です。
彼はこの国の王子で、フレディアと共にバズエルの脅威から国を救ったSランクの冒険者なのです。
「あっ!そっか!!」
「ハンクは獣人から人間の姿に戻ったんだっけ?!」
「ひでえな、フレディア!」
「カレンも前の方が良かったって言うしよ!」
「俺は獣人のままの方が良かったのか?」
「キャハハ!」
「ごめん、ごめん!」
「だって、ハンクが元の姿に戻った直後に天界へ帰ったから~」
「そうだったな、あの後カレンが大泣きして大変だったんだぞ!」
「「「あっ、はっ、はっ、はっ・・・・」」」
三人が大笑いしていた時でした。一人の少女が血相を変えて走ってきました。
「これ、おぬしら!大笑いしておる場合ではないぞ!」
「フレディア!早く何とかするのじゃ!」
「わしを置いて行くとは!」
「フレディア、おぬしのしつけがなっておらんからじゃぞ!!」
フレディアの前で、大きな声でまくし立てているのはポンポンでした。
「えっ?」
「どういうこと?」
フレディアはポンポンの言っている意味が分からず、目をパチクリさせています。
「うふふっ、まぁ、まぁ・・・」
「ポンポンも落ち着いて、とにかくお城の中でゆっくりとお話をしましょう」
「大丈夫よ、フレディアが何とかしてくれるから、ねっ!」
ルナはポンポンをなだめながら、お城の中へ連れて行きました。
玉座の間に案内されたフレディアは、王様の歓迎を受けた後場所を移し、現在のデプロス王国との戦況をハンクから聞きました。
デプロス王国はやはり、ロファ王国を混乱させるための工作員を送り込んで来ましたが、フレディアの忠告のおかげで、未然に防ぐ事が出来たそうです。
そして捕らえた工作員や、国境の戦いで捕らえた兵士たちの話を聞くと、みんな家族を守るために、仕方なく戦っているのだそうです。
アルガの町のように、ザキュエルの使役している魔物が占拠しているのでしょう。
そんな状況ですから、当然町や村の住民も国王のオッサムには強い反感を抱き、ギルドを中心に、あちこちで反乱が起こっているというのです。
そして最南端の町クロッサムでは、オッサムに親を殺されて追放された第二王子の息子が、革命軍を起こして戦いを始めたというのでした。
「なんか、すごい事になっているのね?」
「そう、だけどこんな状況だから、国境の戦いは我らが有利に戦えているんだ」
「でもね、軍の弱体を補うため、ザキュエルがあちこちのダンジョンの封印を解いて、魔物の増強を行っているみたいなの」
ハンクとルナが説明してくれました。
「もう!あいつ本当に最低ね!」
「大天使だったくせに!」
フレディアはプンプンと怒っています。
「フレディア、そこで俺たちは国内のギルドマスター達を集めて作戦を立てたんだ」
「作戦?」
「そう、ギルドと協力して、デプロス王国を内側から崩壊させる作戦さ!」
そう言うとハンクは、一人の少女をフレディアに紹介しました。
「彼女の名はシルヴィー」
「殺されたデプロス王国の第二王子の娘だ!」
紹介された少女は身長160センチで、青い髪に美しいハチ鳥の髪飾りを付け、瞳は髪と同じ澄んだブルーの美しい少女です。年齢は17歳ですが、少し大人びて見えます。
ここへ来る途中に怪我をしたようで、右足と左手に包帯を巻いていました。
彼女は前線のハンクの元へ、仲間と共に助けを求めてやって来たそうです。
反乱軍を蜂起させた兄のライズが苦境に立たされているので、助けて欲しいと訴えたのでした。
その事で国内のギルドマスター達と協議をした結果、自分たちのギルドも手いっぱいな状態で、すぐにはチームを出せないと言う事なので、まずはマラドガードの調査に向かったチームを先発隊として、シルヴィーの仲間と共に送り出したという事です。
ハンクの説明の後、ルナが説明を付け加えました。
「それでね、カーナとカレンがリーダーとなって、クロッサムの革命軍の所へ向かったんだけどぉ~」
「ポンポンが寝ている間に出発しちゃったから、あの子すごく怒って・・・」
「わたくしがポンポンを起こしに行ったんだけど」
「育ち盛りの娘を起こすとは、大人として、ちと配慮が足らぬのではないか?とか言って、起きてくれなかったのよね~」
「いや、自業自得でしょ!」
ルナの話を聞いてフレディアはあきれています。
「それで、セレノス様は?」
セレノス様はカーナ―と一緒に行かなかったのか、ハンクに尋ねました。
「セレノス様はミントの町にいるよ」
「ここに残って、ザキュエルを食い止めると言っていたぜ」
「あ、やっぱり!」
「ブレないわね、セレノス様は!」
「よ~し!」
「わたしも、その作戦に参加するわ!」
「いいのか?フレディア!?」
「そうしてくれると、これ程心強い事はないが・・・」
ハンクは身体を乗り出して尋ねました。
「もちろんよ!わたしはアルガの町へ戻って、チームを結成するわ!」
フレディアが力強く答えると同時に、ポンポンが駆け込んで来ました。
「おぬし!当然わしも連れて行くのであろうな?!」
「そも、そも、わしをおいてけぼりにしたのは、おぬしがカレンを・・」
「もちろんよ!」
「え?」
「一緒に行こう!」
「お、おぉ!さすがはカレンの師匠じゃな!」
「ま、まぁ、おぬしがわしを認めておるのは、知っておったがの・・・」
そう言うと、急に顔を赤らめて恥ずかしそうにモジモジしています。
(やっぱり、よくわかんないわ、この子・・・)
「じゃぁ、これで決定ね!」
「わたくしも急いで用意をしてきますわ!」
「えっ?」
「ちょっと、待ってくれ!」
急いで出て行こうとするルナを、ハンクは慌てて止めました。
「行くって、まさか・・・」
「フレディアと一緒に行くに決まっているじゃな~い!」
ルナはニッコリと笑顔で答えます。
「いや、それはダメでしょう!君はもう昔のような・・・」
「いいえ、ハンク!わたくしは昔と一緒よ!」
「あっ!これは無理だわ!」
「ルナは行くと言ったら絶対に後に引かないんだから!」
フレディアがハンクに諦めろと言いました。
「はぁ~・・・・」
「そうでした、昔から俺の言う事なんか全然聞かなかったわ・・・」
ハンクが諦めてため息をついた時でした、それまで黙っていたシルヴィーも声を上げました。
「お願いです!私もお供させてください!!」
「なにっ?今度はこっちかよ?!」
ハンクが疲れた顔で振り返ります。
「はい!私も黙って見ているだけなのはイヤなのです!」
「少しでも皆さんのお役に立ちたいのです!」
「怪我はもう治りました!」
「どうか、私も連れて行ってください!」
「キャハハ!」
「チーム『ライトブリーズ』の再結成ね!」
「よ~~し!みんな、がんばろうね!!」
「「「イエ~~~~イ!!!」」」
「しょうがねえなぁ~」
「ルナとフレディア、しっかり彼女を守ってやってくれよ!」
「あっ!それと、革命軍の応援に行った調査隊だが、名前を変えたよ!」
「もう、調査隊ではなくなったからね!」
「あっ、それもそうね!」
「で、何て名前になったの?」
「イレーネファイターズだ!」
「ありゃ?どこかで聞いた名前ね?」
「うふふ・・・カレンがドラゴンのタマゴに付けた名前よ」
「もう、彼女の独断と偏見で決めちゃったのよ~」
「キャハハ!カレンらしいわ~!」
「でしょ!」
こうして個性的な異色のチームが結成され、翌日フロイドに乗ってアルガの町へ飛び立つ事になりました。




