第二十九話 重力の魔法
フレディア達が天界に戻ると、すぐにダレス様が主だった神々を集めて会議を開きました。
「セレノス殿、フレディアにカーナよ!ご苦労であった!」
「どうやら大変な目に合わせてしまったようだな、すまなかった!」
「実は天界でもその方たちがいない間に、色々とあってな・・・」
「そして新たに分かった事もあるのだ」
「で、その方たちの報告との整合性を確認したいと思っておるのだ」
「そのうえで問題の抽出と検証を行い、対策を考えたいと思っておる」
「今から尋ねる事に、率直な意見を忌憚なく述べて欲しい」
「うむ、了解ですぞ!」
「あい!」
「キャハハ!ラジャー!」
「ではストレートに聞くが、今回の異常現象の原因は何だったのだ?」
この問いにはセレノス様が答えました。
「ザキュエルの仕業じゃな」
「むっ!やはりそうであったか!」
ダレス様とルミナテス様は、深刻な面持ちで頷き合っています。
そこからは、ザキュエルがデプロスの国王と手を組み、王家の霊廟を解放した事。
使役した魔物を使って、ロックルーラーを襲ってホワイトストーンを奪った事。
さらにマラドガードのドラゴンを倒してグラビティストーンを手に入れた事を報告しました。
「何と!奴は天地創造の杖を完成させたというのか?!」
「「「「何ですと~~~~!!!」」」」
この事実にダレス様をはじめ、会議にいた神々は驚愕の声を上げました。
そしてフレディア達は、ダレス様にザキュエルと戦った時の状況を説明しました。
「間違いないですな!」
「わしはもう少しで、ペッチャンコにつぶされる所じゃったわい!」
「あたしの作った竜巻が奪われて、セレノス様を襲ったんです」
「セレノス様が死んじゃうかと思いました!」
「それに調査隊のカレンが放った雷撃も、かわされてしまいました」
「わたしは飛んでいたら、いきなり墜落しちゃって・・・」
「その時翼を傷めて、まだ今もちゃんと飛べないのです」
フレディアの報告に、水の女神セレイヤ様が答えてくれました。
「その事はフロイドから聞いております」
「フレディア、フロイドにはあなたに従うように伝えています」
「いつでも使っていいですからね」
「ありがとうございます、セレイヤ様!」
「あとね、周りの木々もペチャンコにつぶされていましたよ」
「これって、なんで?」
三人の報告を聞いたダレス様は、頭を抱えて唸っています。
そのダレス様に代わって、星詠みの女神ルミナテス様が、フレディアの問いに答えてくれました。
「それは重力です」
「えっ、重力って?」
「物体を大地・・・正確にはこの惑星『アース』の中心に向かって引き付ける力の事です」
「天地創造の杖は、その重力を何倍にも強くする事が出来るのです」
「フレディア、あなたが墜落する時、地面に引き寄せられたのではありませんか?」
「うん、どんどん加速して行った!」
「セレノス様も同じ現象ですね?」
「うむ、間違いなくあれは重力操作であったわ」
セレノス様とフレディア、カーナから言質を取ったルミナテス様は、間違いなく天地創造の杖が完成していると確信しました。
そして、本当の杖の力を神々にも伝えます。
「ですが、天地創造の杖が恐ろしいのは、重力操作だけではありません」
「カーナが言ったように、魔法攻撃を奪って、味方に仕向ける事が出来るのです」
「また落雷を避けたように、物質の軌道をゆがめる事も出来るのです」
「「「「ええ~~~~っ!!!」」」
ルミナテス様の発言に、神々も驚きの声を上げています。
「えっ?どうしてそんな事が出来るのですか?」
実際に見ていないフレディアは、驚いて尋ねました。
「初めに落雷の件ですが、これは重力レンズ現象により、強力な重力によって時空がゆがめられた結果なのです」
「じ、重力レンズ?」
フレディアの頭上に『?』のマークが浮かんでいます。
「次に竜巻が奪われた件ですが・・・」
「この宇宙には、ブラックホールと、ホワイトホールという二つの現象があります」
「ブラックホールとは、すべての物質を引き寄せて飲み込む力を持っています」
「光でさえ、引き寄せられて逃げられません」
「逆にホワイトホールは、すべての物質を吐き出す現象です」
「天地創造の杖は、光と闇を支配します」
「ホワイトストーンはホワイトホールを作り、グラビティストーンはブラックホールを作る事が出来るのです」
「その二つが時空の狭間で繋がっていた場合、あるいは繋げた場合・・・」
「カーナの竜巻をブラックホールで吸い取り、そしてセレノス殿の頭上に発生させたホワイトホールで吐き出したと言う訳です」
「「「「おぉ~~~!!!」」」」
ルミナテス様の説明を受けた神々は、驚きながらも納得せざるを得ませんでした。
「あの・・・」
「わたしの光の魔法で攻撃してもダメ?」
「ダメです!ブラックホールは、光でさえ逃がしませんから」
「ガ~~~ン!」
「どうしたらいいの、カナちゃん?」
「あ、あたしに聞かれても・・・」
「セレノス様、どうしたらいいのですか?!」
カーナはどうすれば良いのか全く思いつかないので、師であるセレノス様に助けを求めました。
「そんな事も分からんのか?」
「えっ?セレノス様はわかるの?」
「あたりまえじゃ!」
「「「「おぉ~~~!!さすがはセレノス殿!!」」」」
セレノス様の自信に満ちたその声に、会場の神々も期待をかけています。
カーナも「さすがはセレノス様!」と、尊敬の念を新たにしました。
「そんなもの、攻撃するからダメなのじゃ」
「えっ?」
「じっと、耐えるのじゃ!それしかない!!」
「「「「ガ~~~~~~~ン!!」」」」
「カナちゃん、一発殴ってもいい?」
「いや、そこは耐えてよ・・・」




