第二十八話 それぞれの役割
「あっ!セレノス様だ!」
「みんなが言っていた事は本当だったのね!」
フレディアはセレノス様の姿を見つけると、駆け寄りました。
「お久しぶりですセレノス様!」
「おぉ!フレディアか!久しいのぉ!」
「ところで、本当だったとは、何の話じゃ?」
「キャハハ!」
「セレノス様が自分から助けに行ったって聞いて」
「一体どういった風の吹き回しなのかなと思っていたの!」
「あっ、そっか!風の神様だから、吹き回してもいいんだ!」
「キャハハ!」
「お前は、わしの事を何だと思っておるのじゃ!」
(つまんね~!いまのはオヤジギャグかよ?)
(それにネコが神様って、いったい何の冗談だよ!)
フレディアの話を聞いていたロックは、心の中でボヤいています。
「と、ところでフレディア!」
「実はお前に頼みがあるのじゃよ」
「えっ!わたしにですか?」
「うむ!お前はカレンちゃんに好かれておるじゃろ?」
「なんでも師匠と呼ばれておるそうではないか!」
「は、はぁ・・・」
「そこでお願いがあるのじゃが・・・」
「セレノス様!!!」
ギクッ!!
「ダメですよ!ドラゴンのタマゴをフレディアに頼んでは!!」
「え~~~っ、そんな殺生な~!」
「あっ、カナちゃん!」
「ドラゴンのタマゴってなに?」
「あぁ、実はねフレディア・・・」
カーナはこれまでの経緯を、フレディアに話して聞かせました。
驚いたフレディアは、急いでカレンの元へ走って行きました。
「え~~~っ!それドラゴンのタマゴなの?」
「えっ、へへへ・・・」
「オレ、この子の母親になるんだぁ~!」
カレンはタマゴに頬ずりしながら、嬉しそうにフレディアに話しています。
「実はもう、名前も決めているの!」
「フレディア、聞きたい?」
「う、うん・・・」
(こんなに嬉しそうなカレンを見るのは初めてだわ!)
「じゃぁ、フレディアにだけ教えてあげるね!」
(いや、まるぎこえじゃん!)
近くで聞いていたロックは、そう言いたくてウズウズしていますが、グッとこらえました。
「イレーネって言うの!」
「えっ、女の子なの?」
「そうよ!女の子に決まっているの!」
(いや、おかしいだろ?タマゴだよね、それ!)
ロックは言いたくて仕方ありませんが、ここでもグッとこらえました。
「そっか、良かったね!」
「カレンなら、きっといいお母さんになれるよ!」
フレディアはアリスからブルートの話を聞いていたので、カレンの事が心配だったのですが、彼女の嬉しそうな顔を見て、本当に良かったと安心したのでした。
「ありがとう!フレディア!!」
「大好き!!」
「むぎゅっ!」
カレンはフレディを抱きしめました。
(ぐ、ぐるぢぃ・・・)
(い、息が・・・)
ジタバタ、ジタバタ・・・。
「なぁ、あのカレンって人、何者なの?」
ロックは気になってルナに尋ねました。
「彼女もSランクの冒険者で、パステルの町のギルドマスターよ」
「周りの人たちからは、『激ヤバ美女』って恐れられているそうなんだけど・・・」
「でもぉ~、わたくしには、とっても優しいお姉さんなのよ?!」
「えっ!!」
(あっぶね~!フレディアの友達って、ヤバイ人ばっかじゃんよ!)
(オレはもう絶対に余計な事は言わねえぞ!死にたくねえからな!!)
ロックの額から冷や汗が流れました。
その後、これからの事について話し合いが行われました。
セレノス様とカーナは、報告のため天界へ戻ります。
カレンは早くこの事を王国に報告したいので、フロイドにロファまで送ってもらう事になりました。
その他の調査隊のメンバーは、周辺の様子を探りながら帰路につきます。
フレディアは、フロイドでルナとカレンをロファの街へ送り届けた後、ロックを一旦アルガの町へ送り、父親のギリガンと共に町の防衛をしてもらう事にしました。
そしてフレディア本人は、最後に天界へ報告のために戻ります。
「じゃぁ、そう言う事で・・・」
フレディアが話をまとめて終わろうとした時でした。
「ちょっと待つのじゃ!」
「わしも一緒に連れて行ってくれぬか?」
ポンポンがダダをこね始めました。
「バカたれ!お前がいってどうするのじゃ!」
長老が呆れた顔で言いました。
「だってじいちゃん!この村におっても仕方なかろう?」
「わしは早く強くなりたいのじゃ!」
「強くなって奪われたグラビティストーンを取り返すのじゃ!」
「そのためには、強い仲間と一緒に戦うのが手っ取り早かろう?」
「はぁ?またそんなわがままを言いおって!」
「お前がいては、他の皆さんの迷惑になるだろが!」
そう言って長老が諦めさせようとした時でした。
「いや!やる気があるなら連れて行ってもいいぜ!」
「ただし、弟子は取らないけどね!」
カレンがポンポンを連れて行くと言い出したのです。
「いや、そんなことを言われても・・・」
「わたしも賛成するよ!」
「だって、この子面白いから!」
「キャハハ!」
フレディアもカレンの意見に賛成しました。
(うわっ、また無責任な事を・・・)
ロックが苦虫を噛みつぶしたような顔をしています。
さすがに二人の英雄から言われると、長老も返す言葉がなくなりました。
「わかった!」
「では、ポンポンよ!皆さんの言う事をよく聞いて、無茶はせぬと約束できるな?」
「任せておくのじゃ!」
「よし、ではこれをお前に授けよう」
そう言うと、長老は先祖代々伝わる『サモンの杖』をポンポンに渡しました。
ポンポンが赤トカゲを召喚したのがこの杖です。
ポンポンは杖を受け取ると、嬉しそうに飛び跳ねています。
「じゃあ!行こうか!」
フレディアの一声で、ここで解散となりました。
フレディアはカレンとルナ、そしてロックとポンポンを連れてフロイドの所へ行きました。
するとフロイドがフレディアに、仲間の事は自分に任せて天界へ帰れと言い出したのです。
「いいの?フロイド」
「あなたは早く天界に帰って、この事実を報告するべきです」
「仲間はわたくしが責任を持って届けますので」
「わかった!じゃぁ、よろしくね!」
フレディアも、ここで皆と別れる事になりました。
翼を傷めて飛べないフレディアは、セレノス様の魔法で一緒に天界へ連れて帰ってもらうようです。
フロイドのバスケットの中では、ポンポンがロックにサモンの杖を見せびらかして、思いっきり自慢をしていました。
「素人のおぬしには分からんじゃろうから、わしが説明をしてやろう」
「この杖はサモンの杖といってのう!魔力の強い者にしか扱えんのじゃ!」
「しかも魔力が強いだけではダメなのじゃぞ、センスがなければの!」
「そもそもこの杖は・・・・」
「はい、はい!すごい杖なんですね!」
(なんでフレディアは一緒じゃないんだよ~!)
(言い出しっぺは、最後までちゃんと責任とってくれよな!)
ロックはロファの街へ着くまで、ずっとポンポンの自慢話を聞かされていました。
ロファの街へ着いてカレンが降りる時、フロイドがカレンに話しかけました。
「その子はあなたが育てるのですか?」
「えっ?」
今までは話しかけても、いつも無視されていたフロイドに話しかけられたので、カレンは驚いでしまいました。
「う、うん・・・」
「マラードは、わたくしと対をなすドラゴンでした」
「大切に育ててあげてください」
「きっと素晴らしいドラゴンになるでしょう」
「わ、わかった!!」
「フロイド、あなたのような素晴らしいドラゴンに育ててみせるよ!!」
「楽しみにしていますよ」
そう言うとフロイドはアルガの町に向けて飛び立ちました。
いままで相手にしてもらえなかったフロイドに、やっと認めてもらえた事がよほど嬉しかったのでしょう。
カレンはフロイドの姿が見えなくなるまで、ずっと見送っていました。




