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第二十六話 聖獣マラード

村の集会所に集まった者達の前で、長老のバタンダは深刻な面持ちで口を開きました。


「わしは今から急いで竜を祭る神殿へ向かわねばならぬ!」


「そこで頼みがあるのだが、治癒の魔法を使える者がおれば、同行してもらいたいのだ」


「簡単な治癒魔法の使える者なら、この村にもおるのだが・・・」

「事態は極めて深刻なものと思われるのでな!」


長老の呼び掛けに答えたのは、セレノス様でした。


「それは聖獣マラードのことじゃな!?」


「「「「え~~~~っ!!!」」」」


「ネ、ネコがしゃべった?!」


「しかも偉そうに二本足で立っておるぞ?!」


(なんじゃい!そっちで驚いておるのかい!)

(普通わしがドラゴンの名前を知っておる方に驚くもんじゃろ!)


セレノス様は、村人の反応に不満そうにしています。


そして村人の驚く声を聞いたカーナは、赤い顔をして口を尖らせました。


(も~っ、セレノス様ったら・・・)

(だからもっと偉大そうに見える姿に変えてって、いつも言っているのに・・・)


「驚くでない!これは仮の姿じゃ!」


「わしは風の神セレノスじゃぞ!」


「「「「はぁ~~~っ?」」」」


カレンはセレノス様の言っている意味がよく分からず、隣のマウロに尋ねました。


「あれって、カーナの飼っているペットだよな?」


「いや、俺はちょっとわかんないっす!」


ネコの姿で偉そうにしているセレノス様では話が進まないので、カーナが立ちあがって声をかけました。


「あの~!治癒魔法ならあたしが使えます!」


「あたしはセレノス様の弟子の天使ですから!」


「「「「え~~~~っ!!」」」」


またしても村人たちは驚きの声を上げますが、その時カレンが立ち上がりました。


「彼女の名前はカーナ!」


「本物の天使だ!」


「「「「え~~~~っ!!」」」」


「あんた達も見ただろう?巨大な竜巻が魔物を壊滅させているのを!」


「あの竜巻を作り出したのが、そこにいるカーナなんだぜ!」


「「「「おぉ~~~~っ!!」」」」


「どうだ!すごいだろ?」

「ちなみに、カーナはオレの頼りになる、妹のようなものなんだぜ!」

「フフン!!」


カレンは最後にドヤ顔で付け加えていますが、妹を頼りにするのはどうかと思うのですが、長老はその話を聞いて改めて尋ねました。


「では、このネコは本物の神様なので?!」


尋ねられたカレンは即座に答えました。


「いや、そいつはカーナのペットだ!」


「「「「おぉ~~~~っ!!」」」」


「すごい!しゃべるネコをペットにするとは、さすがは天使様だ!」


パチ!パチ!パチ!・・・・


ドテッ!


「あっ、セレノス様大丈夫?!」


カーナがズッコケたセレノス様を、慌てて抱き起こしました。



竜を祭る神殿へは長老を筆頭に、セレノス様、カーナ、カレン、マイオス、そして最後にポンポンが付いて来ています。


松明に照らされた祭壇に続く長い回廊には、巨大な柱が幾本もなぎ倒され、激しい戦いが繰り広げられたことが容易に想像出来ました。


そして突き当りの祭壇には、息も絶え絶えな巨大なダークドラゴンが横たわっておりました。


「こ、これはひどい!」


長老は駆け寄ると、急いでカーナとマイオスを呼びました。

二人は必死に回復魔法をかけますが、すでに致命的な傷を負っているマラードには、手遅れだったようです。


「す、すごい!本物のドラゴン!!」


カレンは恐る恐るマラードに近づくと、体にそっと触れました。


「素晴らしい!なんて神々(こうごう)しい生き物なの?」


そう言うとドラゴンの体に頬をぴったりと付けて、こうこつの表情を浮かべています。

カレンは2年前、聖獣フロイドに恋焦がれ、何度も何度も通い詰めたけれども、結局袖にされた苦い経験があるので、初めて触るドラゴンに感激しているようです。


(そこにおられるのはセレノス様ですね?)


聖獣マラードが、荒い息で声をかけました。

この時セレノス様は本来の神様の姿に戻っていたので、カーナ以外の他の者達には姿も声も聞こえません。

セレノス様とマラードは、心で話していたのです


(うむ、マラードよ、永いお勤めご苦労じゃった!)


(後はわしが何とかするので、安心して天国へ召されるがよい)


(セレノス様、一つだけ心残りがあります)


(何じゃ、申してみよ!)


(わたくしは最後の力を振り絞り、タマゴを産み落としました)


(なんと?!)


(そのタマゴには、わたくしの持つすべての力が宿っております)


(どうか、この子を育てていただきたいのです)


(あい分かった!)


(安心せよ!神に忠誠をささげたそなたの願い!かならずかなえて見せようぞ!)


(ありがとうございます・・・)


そう言うと、聖獣マラードは息を引き取りました。

その亡骸(なきがら)は、光となって天へと昇って行きます。


「「「あっ!」」」


「き、消えた!」


大きなドラゴンの姿が、光と共に消え去りました。


「そ、そんな・・・」


カレンはドラゴンの死を受け入れられず、涙をためた目で消えた姿を追いました。

するとドラゴンのいた場所に、何か丸い大きな形をした物を見つけました。


「あっ!これは!!」


「タマゴ!ドラゴンのタマゴ!!」


カレンはタマゴに飛びつくと、ギュッと胸に抱きしめました。


「カーナよ、あのタマゴはマラードの忘れ形見じゃ」


「天界へ持って帰るぞ」


「はい!」


再びネコの姿に戻ったセレノス様に言われ、カーナはカレンの元へ行きました。


「カレン、そのタマゴはマラードの赤ちゃんだから、天界へ返すって・・・」


「ダメ!絶対にダメ!」


カレンはタマゴを抱えて、激しく首を横に振ります。


「えっ!ダメって言ったって・・・」


「神様がそうおっしゃっているのだから・・・」


「ねっ!」


「ダ~~~メッ!この子はオレが育てるの!!」


「え~~~~っ!」


「セレノス様、カレンがあんな事を言っているのですが?」


「バカを言うでない!それは人間の手に負える代物ではないのじゃぞ!」


「ですよね~」


「カレン、やっぱりダメだって神様が・・・」


「神様ってだれよ!」


「えっ?それは、そこのセレノス様が・・・」


カーナは困った顔で、ネコのセレノス様を指さしています。


(あっ!カーナのペットのネコか!)

(あいつがウンと言えば、いいんだな?)


「じゃぁ、その神様がいいって言えば、オレにくれるんだな?」


「えっ、ま、まぁ、そういう事になるの・・・かな?」


カレンはタマゴをそっと置くと、セレノス様の所へツカツカと歩いて行きました。

カレンは必死の形相でセレノス様に迫ります。


「カーナから聞いたわよ!」


「な、なんじゃな?」


(な、なんか顔が怖いんじゃが・・・)

(でも、怒った顔もまた美しいのぉ~)



「あんたがいいって言えば、タマゴをくれるって!」


「な、なんと!」


「う、うむ・・・じゃがそれは無理な話じゃ!」

「あれは神に仕える聖獣の子供じゃからの!」


(がんばれわし!ここは神の威厳を見せて、カーナに尊敬されねば)


「人間には手に負えぬ代物じゃ!!」


キッパリ!


(こいつ、ネコのくせに偉そうに・・・)

(いや、待てよ、このオスネコ、何だか事あるごとにオレに近づいて来ていたな・・・)

(ひょっとして、女好きのネコなのか?エッチなのか?)

(よし!じゃぁ、試しに仕掛けてみるか・・・)


「え~~~っ、そんなこと言わないで頼むよ~」


カレンは急に態度を一変し、少し甘えた声でセレノス様に詰め寄りました。


ドキ!!


「い、いや、無理なモノは無理なのじゃ!」


(が、がんばれ!わし!)


「そんな事言わないでさぁ~」


「ねっ、お・ね・が・い!」


カレンはセレノス様の腕を捕まえて、耳元で囁きました。


彼女は自分が美人だと言う事を全く自覚していませんが、とにかく、何がなんでもドラゴンのタマゴが欲しいカレンは、今まで使ったことの無い女の武器に手を出したのです。

そして絶世の美女と言われる彼女の武器は、想像を絶する破壊力でした。


ドヒャ~~~ッ!!


ドキ、ドキ、ドキ・・・・


「い、いや、それは・・・」


セレノス様の膝がガタガタと震えています。

それを見たカレンは、心の中でニヤッと笑いました。


(やった!これは落とせるかも?!)

(オレはこのドラゴンのタマゴは絶対に手に入れるからな!)

(そしてフロイドとフレディアのように、オレもこの子と一緒に大空を翔るんだ!)


そう決心すると、ついに大胆な行動に出ました。


「おねがい、セレノスさまぁ~」


甘えた声で、セレノス様をギュッと抱きしめました。


「ねっ!」


(あっ!これはもうダメだわ!)


セレノス様が落ちるのを確信したカーナは、「はぁ~っ」とため息をついています。


ドキュ~~ン!!


セレノス様のシッポが5倍の太さに膨れ上がり、完全に理性がぶっ飛びました。


「うひゃあ~~~~~っ・・・」


「いい!」

「もう、すきにしていいから!」


パタッ!


そう言うと、その場に倒れてしまいました。


「やった~!!」

「オレの勝ちだ~!!」


カレンはタマゴを抱いて、大喜びで飛び跳ねています。

カーナはセレノス様の姿をジト目で見ると、もう一度小さくため息をつきました。


そんな姿を見たポンポンは・・・。


「あのカレンと言う女、なかなかやりおるな!さすがはSランクの女帝!」


「欲しい物のためなら、手段をえらばぬとは・・・」

「わしも見習わなくてはならぬのぉ・・・」


何をどう見習うのかは分かりませんが、ポンポンはそう呟きながら、拾った棒でセレノス様をツンツンと突いています。

でもセレノス様の反応はありませんでした。


「しかし、このネコ大丈夫なのか?鼻血が出ておるぞ!」



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