第二十四話 マラドガードの決戦の行方(一)
太陽が西に大きく傾き始めました。
10月ともなると最北端のこの地では、陽が沈むと急速に気温が下がり、真夜中には氷点下になる日もあります。
「だいぶ冷えてきたね・・・」
「スージーも、そろそろ限界だな」
「お疲れ、スージー」
カレンはスージーの肩をポンと叩き、液状化を解くようにいいました。
「よし、後はオレたちで何とかするぞ!」
「メアリー、火炎玉の準備は出来ているか?」
「はい、準備オッケーです。200個ありますので十分かと」
「シラは魔法を発動出来る準備をして待機しておいてくれ」
「はい!いつでもお任せを」
「マルティー、爆薬付きの矢はどれぐらいあるの?」
「まだ一つも使っていないから、150本あります」
「わかった、合図をするまで待機していて」
「了解!」
「とにかく敵の数が多すぎるから、門を壊しに来た魔物を狙い撃ちにするよ!」
「それと長老、ここはしばらくオレたちが見張っているから、次の交代要員は村人で用意しておいてくれ」
「分かりましたぞ!いつでも交代しますので、声をかけて下され」
長老はそう言うと、村の中へ帰って行きました。
「それにしても、すごい数ですね・・・」
「何とか数を減らす方法はないのでしょうか?」
マウロが難しい顔をしてカレンに話しかけました。
マウロは剣士なので、この状態では働く事が出来ないため、歯がゆいのでしょう。
「問題はそれなのよね、シラもオレの魔法も広範囲魔法じゃないからなぁ」
「いくら威力があっても、せいぜい一度に倒せるのは4~5体だろ?」
「こんな時フレディアかカーナがいてくれたら、こんな雑魚どもは簡単に始末出来るのに」
口惜しそうに下を見て言いました。
それから1時間が経ちましたが、状況は何も変わっていませんでした。
「おかしいな?」
「こいつらまったく攻めて来る気配がないぞ?」
「ほんとですね!防壁の門の周りの液状化は解除されているのに・・・」
スージーも不思議そうに下を見ています。
「こやつらは頭が弱いんじゃ!魔法が解かれたのが分っておらんのじゃないか?」
「どれ、ひとつわしが教えてやろう・・・」
ペシッ!
「あいた!何をするのじゃ!!」
「あっ!じいちゃん!!」
「バカたれ!敵にそれを教えて何とするのだ!!」
「だって、このままじゃ見ていてもつまらんじゃろ?」
見ると長老のひぃ、ひぃ、ひ孫のポンポンが、長老にお尻を叩かれていました。
「あっははは・・・・」
「確かに、この子の言う通りだ、オレもつまんないよ!」
長老はポンポンと一緒に食事を持って来てくれたのですが、長老も防壁の下の様子を見て不審に思ったようです。
「確かに、まったく戦意が感じられませんな・・・」
長老に言われて、カレンも改めて何かおかしいと感じたのでしょう。
「なんだろう?すごく嫌な予感が・・・」
「まさか、時間稼ぎをしているとか?」
「はっ!!」
「ま、まさか・・・」
ドカ~~~~~~~~ン!!!
グラ、グラ、グラ・・・・
物凄い爆発音が、村の北側の山の方から聞こえてきました。
「まさか、マラード様の神殿が奴らの狙いだったのでは?!」
「えっ?マラード様の神殿?」
カレンが長老に聞き返した時でした。
「カレン様!あれを!!」
アリスの声にカレンが慌てて振り返ると、目の前にものすごく巨大な竜巻が発生し、魔物どもをどんどん巻き込んでいます。
「えっ?なにこれ?!」
どうやら、ようやくセレノス様とカーナが到着したようです。
「うひゃ、ひゃ、ひゃ、ひゃ!」
「これまた、アホ程魔物が集まっておるのぉ~」
「どれ、わしも久しぶりに暴れてやろうかの!」
セレノス様はそう言うと、力の杖を振りかざしました。
ピカッ!
眩い光と共に、巨大な山のような魔物が現れました。
ド、ド、ド~~~~ン!!!
「うわっ!何か出た!!」
コローニが驚いてすっ転びました。
「な、なんじゃアレは?ドラゴンかえ?」
ポンポンが興奮して叫んでいます。
「いや、あれはドラゴンじゃないよ!だって頭が3つもあるじゃん!」
「あれは神話の魔獣ヒュドラじゃないのか?」
カレンも驚いて見ています。
ヒュドラは3つの口からブレスを吐きつつ、巨大な足で魔物を踏みつぶしていきます。
突然巨大な魔物と竜巻に襲われた魔物どもは、クモの子を散らしたように逃げ出して行きます。
「ねぇ、カレンさん、あの竜巻ってもしかしてカーナなんじゃないの?」
マルティーがカレンに向かって尋ねました。
「あっ!そうだわきっと!!」
「あんなえげつない竜巻は、普通では考えられないもの!」
「よし!オレ達も行くぞ!!」
「この機に魔物どもを殲滅するぜ!!」
「「「「おぉ~~~!!!」」」」
カレンの号令で、戦いたくてウズウズしていた調査隊の面々は、一斉に飛び出しました。
「おぉ~っ!」
「わしの召喚魔法で蹴散らしてくれるわ!!」
同じように飛び出そうとしたポンポンは、長老に捕まって連れ戻されています。




