第十六話 ルナとの再会
「おぉ~!!これはセレノス様ではありませぬか?!」
「まぁ、セレノス様とカーナ殿!お久しゅうございます!」
「久しいのう王よ、王妃よ!」
「そしてカーナ殿も!!」
「お久しぶりです王様!それに王妃様!」
玉座に案内されたセレノス様とカーナは、さっそく王様と王妃様の挨拶を受けました。
「あれからもう2年になりますかな?」
「その節は本当にありがとうございました」
「うひゃ、ひゃ、ひゃ・・・」
「礼などかまわぬ、かまわぬ!」
「いえ、いえ、あの時は本当に・・・」
当時を懐かしむ王様と、感謝を述べる王妃様の話をしばらく黙って聞いていたカーナでしたが、とうとうしびれを切らせて口を開きました。
「あの~・・・」
「ハンクとルナはどうしているのですか?」
「おぉ!そうであったな!」
「カーナ殿と二人は共に戦ったお仲間でしたな!」
王様はそう言うと、大臣にすぐにここへ呼んでくるように申し付けました。
「実はハンクは今、ここにはおらんのですよ」
「えっ?どうしてですか?」
「うむ、実はですな・・・」
王様は二人に、いまのロファ王国の状況を説明してくれました。
隣国のデプロス王国がこの国を狙って、戦争を仕掛けて来ようとしている事。
そのため王子のハンクが、国境近くの砦で陣頭指揮を執っている事。
デプロス王国とは長年友好関係にあったのですが、3年前に代替わりしてから親交が途絶え、2年前から徐々に険悪な関係になっていったそうです。
そして2カ月ほど前にもう一つの問題が発生しました。
ロファ王国では2年前の堕天使バズエルの反乱を教訓に、異常事態が発生した時に、すぐさま対応できるよう、それぞれの町や村からロファ城まで間に、10キロメートル間隔で狼煙台を建て、有事が発生した時にすぐに対応出来るようしたのだそうです。
その合図の方法とは・・・。
赤色の狼煙が上がった場合、町や村の存亡に関わる異常事態で、国家の一大事である。
黄色の狼煙が上がった場合、危険が差し迫る状況のため、至急兵を派遣する必要がある。
青色の狼煙が上がった場合、緊急性はないが、状況捜査が必要である。
そしてこの度ロファ王国の最北端、ヘルパス地方で青色の狼煙が上がったのでした。
「ところが今、デプロス王国と小競り合いが続いておりましてな」
「国の兵を動かせないため、パステルのギルドマスタ―のカレン殿をリーダーに、各地のギルドの精鋭を集め、実態の調査に乗り出しているという訳なのです」
「う~~~む・・・・」
「国王よ、狼煙が上がったのはヘルパス地方とのことじゃが・・・」
「一体どの町から狼煙が上がったのじゃ?」
「はい、マラドガードという、小さな村落だそうです」
「なんじゃと?!マラドガードじゃと?!」
「う~~~~む・・・・」
「事態は深刻じゃな・・・」
難しい顔で、セレノス様は考え込んでいましたが、何か気になる事があったのでしょう、今回は珍しくやる気を出したようです。
「よし!わしがヘルパス地方へ出向いてやろう!」
「えっ?!」
「正気ですかセレノス様?!」
真っ先に驚いたのはカーナでした。
いつもはカーナたちに任せっきりで、自分は遊んでばかりいたセレノス様が、今回は自分から行くと言い出したのです。
カーナにとっては、まさに寝耳に水だったに違いありません。
「おぉ!誠ですかセレノス様!!」
「セレノス様がお力添えしてくだされば、まさに鬼に鉄棒です!!」
王様と王妃様は驚いて玉座から身を起こし、二人で手を取り合って大喜びしています。
「うひゃ、ひゃ、ひゃ!」
「わしに任せておけ!!」
「おぉ!ありがとうございます!!」
「おい!宴じゃ!!」
「宴の用意を!!」
王様は宴の準備を家臣に命令し、セレノス様を伴って別室へと移動して行きました。
そしてその時、大臣に案内されたルナが玉座の間へやって来ました。
「カーナ!!」
「えっ?ルナ?!」
二人は速足で駆け寄ると、熱い抱擁を交わしました。
「ルナ、元気にしていた?」
「ええ、元気にしていたわ!カーナは?」
「あたしも元気にしていたよ・・・って、ルナがしゃべってる?!」
「ええ、わたくし、しゃべれるようになりましたの!」
ルナは両手を頬に当てて、少し気恥ずかしそうに顔を赤らめています。
「知らなかったの?」
「いやぁ~、フレディアからは聞いてはいたんだけど・・・」
ルナがしゃべれるようになった事はフレディアから聞いていたのですが、直接聞いたことがなかったので、ルナに会うまでは半信半疑なのでした。
「ねえ、どうしてもっと早く会いに来てくださらなかったの?」
「わたくしもだけど、カレンなんて・・・」
「フレディア達が急にいなくなったって、もう大泣きしちゃって大変だったんだから!」
ルナは少し拗ねたような顔をして尋ねました。
「てへへ・・・」
「あのカレンがねぇ~?!」
「ごめんねルナ!」
「あたしたち天使だから、色々と制約があるのよ~」
「はぁ・・・」
「それなら仕方がありませんわね!」
「でも、今日はゆっくりしていってくださるのでしょ?」
「うん!セレノス様も宴会を楽しみにしているし!」
その後セレノス様の歓迎の宴が、夜遅くまで続きました。
そして次の日の早朝に、マラドガードから赤色の狼煙が上がりました。
「大変です王様!」
「マラドガードから赤色の狼煙が上がりました!」
「なんじゃと!赤色の狼煙じゃと?!」
王様は慌ててセレノス様を見ました。
「王よ!心配せずともよい!」
「カーナよ!出発じゃ!!」
「はい、セレノス様!!」
旅立つカーナに、ルナは不安げな顔で声をかけました。
「カーナ、気を付けてね!」
「大丈夫だよルナ、だってセレノス様が一緒だもの!」
「ルナもしっかりね!」
「ハンクなら大丈夫よ!だって彼は強いから!!」
「ええ、ありがとう!」
「では、行くぞカーナ!」
「あい!」
慌ただしく旅の準備を終えたセレノス様とカーナは、王様たちをはじめ、城の者全員に見送られ、最北端の地ヘルパスにある、マラドガードの村へと旅立ちました。




