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第十伍話 ロファ王国

大神ダレス様からの書状をセレノス様に手渡したオリビアは、しばらく町を見て回った後、天界へと帰って行きました。

セレノス様はもっとオリビアと話がしたくて、しつこく引き留めていましたが、カーナが癇癪(かんしゃく)を起しそうになったので、渋々送り出す事になったようです。


セレノス様は風を(つかさど)る神様で、天界12神の一人と言われたとても強い力を持つ神様です。

「力の杖」と呼ばれるどんなモノにも変身する事の出来る、すごい魔力を秘めた杖を持ち、堕天使バズエルからこの国を救った神様なのですが、ちょっとエッチな性格が災いして、天界から地上へと降りた変わり者の神様でした。



「はあ~」

「また難儀な事を言うて来よったのぉ~」


ネコの姿から本来の神様の姿に戻ったセレノス様は、ダレス様からの書状を見てため息をついています。


セレノス様は人間の世界で言うと、70歳ぐらいのお年寄りに見えます。

銀色の長い髪を、編み込まれた紺色のヘアタイを使って後ろで束ね、鼻の下には同じく銀色の髭を蓄えた、なかなかダンディーな顔立ちをしています。

きっと若い頃には、さぞかし女性にモテたのではないでしょうか?


そのセレノス様が、難しい顔をして書状を読んでいるので、心配したカーナが声をかけました。


「セレノス様は今回の異常について、何か思い当たる事でもあるのですか?」


「う~~~む・・・」


「いや、今の時点ではまだ何も分からぬのぉ」


「ま、大ごとにならなければ良いのじゃが・・・」


眉間に皺を寄せて考え込むセレノス様は、何か思い当たる節があるのかもしれません。


「ともかく、わしらはロファ王国から情報を集めるよう言われておる」


「カーナよ、今から国王に会いにゆくぞ!」


「は~~~い!」


ミントの町からロファのお城までは、馬車だと10日はかかる旅路ですが、風の神様とその弟子ならば、1時間もかかりません。


二人は空高く舞い上がると、疾風のごとき速さで飛び去って行きました。



ロファのお城に到着したセレノス様は、すぐに神様の姿からネコの姿に変身しました。


「あっ、やっぱりその姿で行くのですね?」


いつものネコの姿に変身したセレノス様を見て、カーナが尋ねました。


「ふぁっ、ふぁっ、ふぁっ!」


「カーナよ、神様たるもの、そう易々と人前で姿を見せてはならんのじゃよ」


「で、お前は人の姿にならぬのか?」


「あっ!そうでした!」


「あたしはもう、神様にお願いしなくても良くなったんだ!」


そう言うと、カーナは自分の力で人の姿へと変身しました。


純白の翼と天使のリングは無くなり、頭にはピンクの髪に良く似合う淡いピンクの花びらの付いたカチューシャ。

服装は白のワンピースに赤いカーデガン姿です。


「では、行くとするか!」


二人はお城の門をくぐって中へ入って行きました。


しばらくすると、お城の門番ともめている声が聞こえて来ました。


二本足で歩いて人の言葉を話すへんてこなネコと、まだ幼い女の子という奇妙な組み合わせなのです。お城の門番が不審に思うのも無理はありません。


「バカ者!わしは神様じゃぞ!」

「さっさと通さぬか!!」


「そうですよ!こちらのネコは風の神セレノス様で、あたしはハンクとルナのお友達なんだからね!」


「ハ、ハンクとルナ?」


「あっ!ぶ、無礼者め!」

「王子様と、そのお后様の名を呼び捨てにするとは何事か!!」


門を守る二人の兵士ともめていると、お城の中から黒髪でカイゼル髭のよく似合う、恰幅(かっぷく)の良い男が出てきました。


「騒々しい!一体何の騒ぎじゃ!


カイゼル髭の男が兵士たちを一喝すると、二人の兵士は一瞬で震えあがり、慌てて説明を始めました。


「はっ!こ、これは大臣!!」


「も、申し訳ございません!」

「この小汚いネコと、生意気な少女が王様に会わせろと騒いでおりまして・・・」


「はぁ?小汚いネコと、生意気な少女だと?」


大臣がいぶかしい顔をして確認しようとしますが、二人の兵士の影に隠れて見えません。


「まぁ、よい!」

「王様はいま忙しいのじゃ!アポの無い者とはお会いにならぬ!」


「さっさと引き取ってもらえ!!」


そう怒鳴って城の中に引き返そうとした時でした。


「こりゃ、タマキンテ!」

「わしを無視して行くのか?」


「ギョッ!!」

「な、なんでワシの名前を知っておるのじゃ?!」


ごく一部の者にしか明かしていない本名を呼ばれ、慌てて大臣が振り向くと、そこに一匹の小汚いネコが、腰に手を当てて偉そうに突っ立っていました。


「セ、セレノス様!!」


「ハ、ハ~~~ッ!」


大臣は大声で叫ぶと、慌ててひれ伏しました。


「「ええ~~~~っ!!!」」


その姿を見た門番たちはあまりの驚きに、その場に茫然と立ち尽くしています。


「うひゃ、ひゃ、ひゃ・・・」


セレノス様とカーナはその間を悠々と通り過ぎ、お城の中へと入って行きました。



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