第百三十六話 セレスフィア様の神殿(一)
フレディア達がアッシュフォードの村で、アンデッドの王モルグデウスの対策について会議を行っていた頃、ルナたちはオルフェオン王墓群にあると言われる、セレスフィア様の神殿を探す旅を懸命に続けていました。
ヘーベル歴251年12月の中頃に、セレスフィア様の神殿を捜すために旅立ったルナ、カーナ、スージー、シラ、ロック、ポンポンたち6名は、年の変わった252年1月にリヴァーヘイムの町に到着していました。
リヴァーヘイムの町はロファ王国の最南端の町で、海辺の町なので漁業が盛んですが、周辺には山も森もある自然豊かな町で、物資が豊富にそろう活気にあふれた町です。
現在この町を中心にデプロス王国への輸送路が切り開かれ、アルサンドラの町や、クロッサムの町へ次々と物資が輸送され、革命軍によって魔物の支配から脱却した町や村を支える、重要な町になっていました。
リヴァーヘイムの町に到着したルナたちを迎えてくれたのは、この町のギルドマスターであるダグラスでした。
「白いドラゴンが飛来したと町の者が騒いでいたので、誰が来たのかと思えば、ルナ様たちではありませんか!」
「うふふっ、ダグラス殿ごきげんよう」
「町を騒がせて、ごめんなさいね」
「いえ、いえ!ルナ様がいらっしゃったと分かれば、町の者達も大喜びしますよ!」
ダグラスの言葉通り、その日はルナたちのために、町を上げて盛大な歓迎の催しが行われました。
山のように積まれたごちそうの前で、モグモグと忙しそうに口を動かしていたポンポンですが、この歓迎ぶりに驚いてシラに理由を尋ねてみました。
「のうシラよ、ルナはえらい人気者じゃのぉ?」
「町の者が一目見ようと、たくさん集まって来ておるぞ?」
「それは、そうだわ!」
「次期国王になるハンク様のお后様だもの!」
「ほう・・・」
(いや「ほう・・・」って、普通にルナ様を呼び捨てにしているアンタに、私は驚くわ!)
シラの返事に、スージーも付け加えます。
「それだけじゃないわよ~」
「ルナ様はこの国を救ったライトブリーズの1人として、国民からとっても尊敬されているのよ~」
「なんと!ライトブリーズだと尊敬されるのか?」
「そうよ~!」
「ポンポンもライトブリーズの一員なんだから、頑張ってね!」
「そ、そうじゃの!」
「リーファとジャックよ、わしらも頑張って尊敬されるのじゃ!」
「だから、いっぱいご飯を食べて大きくなるのじゃぞ!」
「いや、一杯食べてもオイラはこれ以上大きくならねえよ!」
「リーファより、ポンポンが早く大きくならないとダメ!」
「ご主人様がお子様だと、リーファ達が恥ずかしいから!」
無茶を言うなとジャックに文句を言われ、リーファからは人の事より自分がもっとしっかりしろと言われてしまいました。
「おぬしたち、最近わしに当たりがきつくないかの?」
「気のせいだぜ!」
「リーファはいつもと同じだよ」
「そ、そうか!」
「では、わしも頑張ってご飯を食べるのじゃ!」
パク、パク、パク・・・
「おい!それご飯じゃなくて、お菓子じゃねえか!」
「ポンポンさっきからお菓子しか食べていない」
「野菜も食べないから、大きくなるのは絶対に無理!」
二人の妖精から文句を言われているポンポンの隣の席では、ルナとカーナが、ダグラスを筆頭にリオン、クラット、ボトル、カチュアのスターバーストのメンバーと席を囲んで話をしていました。
「なんと!オルフェオン王墓群を探すために旅をされているのですか?」
ルナたちの目的を聞かされたダグラスは、驚いた様子でルナに聞き返しました。
「ええ、そうなのですわ」
「カーナに、偉い神様から勅命が下りましたの」
ルナに続いて、カーナが目的の詳細を説明しました。
「その古代の遺跡、オルフェオン王墓群にあると言われている、セレスフィア様の神殿を探しているの!」
「いや、あの場所はすごくヤバイ所なので、恐れて誰も近づかないと聞いておるが?」
「うん、幽霊とか亡霊とかが出てくる、めちゃくちゃヤバイところだって、オリビアが言っていたよ」
「えっ!?」
「そんなヤバイ所に行くのですか!?」
話を聞いていたリオンが、興味津々で入ってきました。
どうやらこの話が、彼の冒険心を刺激したようです。
「リオンは目的の場所まで、どれくらいの距離があるのか知ってる?」
カーナの問いに、リオンはしばらく考えから答えました。
「俺は詳しくは知らないけど、リヴァーヘイムの町からだと、オルフェオン王墓群のあると言われている場所までは、およそ500キロメートルの距離でしょうか?」
「そう言えば、この町で手広く商をしている商人が来ていたので、呼んできますね」
「彼らなら、なにか詳しい事を知っているかも知れませんから」
そう言うとリオンとスターバーストのメンバー達は、商人を探しに行きました。
そしてしばらくすると、キャラバンの隊長だという男を連れて戻ってきました。
「これはルナ様!お初にお目にかかります!」
「私はキャラバンを率いております、商人のカイエルと申します!」
「以後、お見知りおきくださいませ」
カイエルという男は、日焼けした顔に濃い髭を生やした男で、魔物が徘徊するこの世界を旅しているだけあって、屈強な体格の厳つい男でした。
そのカイエルに、ルナが尋ねました。
「カイエル殿のキャラバンは、ここから南にあるフォルカノス火山へは行く事があるのですか?」
「はい!火山の近くの町へは、行商のためによく訪れます」
「まぁ!そのような危険な場所に、町があるのですか?」
「はい、バレーロウという鉱山の町です」
「火山地帯で取れる、金、銀、銅、亜鉛といった鉱物や、火薬の原料となる硫黄を採掘している町で、私どもはそこで買い付けをやっておりますので」
「まぁ、そうなのですね!」
「では、その先にある古代の遺跡、オルフェオン王墓群へは?」
ギョッ!!
「め、滅相もありません!」
「あそこはとても恐ろしい場所でございます!」
「常に濃い霧に包まれており、その霧の先には幻の都があると言われておるのですが、そこへたどり着いた者は決して生きては戻れないと言われています」
「あのような恐ろしい場所へは、誰も近づく者はおりませんよ!」
「う~~~ん・・・そうなのですね?」
その話を聞いたカーナが、ルナに言いました。
「天使たちの調査でも、オルフェオン王墓群と思われる場所は、年中濃い霧に覆われているので、空からは確認出来ないって言っていたよ」
「そうなのですね?」
「じゃあ、フロイドで行っても分かりませんね・・・」
この国の王子妃である高貴なルナが、忌まわしいオルフェオン王墓群に興味がある事を不思議に思ったカイエルは、恐れ多いと思いましたが、ルナにその事を尋ねてみました。
「ところでルナ様は、なぜそのような事をお聞きになるのですか?」
「うふふっ、ちょっとその幻の都に用がありますのよ~」
「え~~~っ!!!」
「な、なんと・・・」
豪胆な商人のカイエルも、さすがにルナの言葉にはド肝を抜かれたようです。
「カイエル殿、今度はいつバレーロウの町へ行くのですか?」
「は、はい、5日後にこの町を出発いたしますが・・・」
「まぁ!では、わたくし達もお供してよろしいでしょうか?」
「え、ええ!それは、もちろんでございます!」
「ルナ様さえ宜しければ・・・」
カイエルは、いきなりの申し出にオロオロしながらも、ギルドマスターのダグラスに護衛の依頼をしました。
「ダグラス様、そんな訳でいつものように、ギルドに護衛を依頼したいのですが?」
「今回はルナ様たちもご一緒という事で、より厳重に護衛をお願いしたいのですが・・・」
「はぁ?なにを言っているのだ、カイエル!」
「ルナ様たちがいれば、うちのギルド全員を護衛に付けるより安全ではないか!」
「ええっ?」
「それは一体、どういう事で?」
戸惑うカイエルに、リオンが説明しました。
「カイエルさん、ルナ様の戦闘能力はSランク冒険者と同等なのですよ!」
「そしてカーナさんもSランクだし、同行する仲間もAランク以上の強者ばかりなんだよ!」
「な、なんと?」
ルナの事を、かよわい高貴な御方だと思っていたカイエルは、目を丸くして驚きました。
「あっ!だけど、帰りはルナ様とは別々になるだろうから、カイエルさんに護衛は必要ですよね?」
「ギルマス、俺たちスターバーストのメンバーが護衛に付いてもいいですか?」
「久しぶりに、ルナ様やカーナさんと一緒に旅をしたいし・・・」
「そうだな、ルナ様の要件は時間が掛かりそうだからな・・・」
「よし、お前たちにカイエルの護衛を頼むとしよう」
「そしてリオン!お前はそのままルナ様と一緒に行動するように!」
「ルナ様の護衛を頼んだぞ!」
「はい!了解しました!」
ダグラスの命令に、リオンは嬉しそうに満面の笑みで返事をしました。
他のスターバーストのメンバーも、またルナたちと旅が出来ると大喜びです。




