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第百三十四話 動き出したアンデッドの王(三)

エルドウィンの秘薬の効果を見せると言ったモルグデウスは、オッサムを介抱している家臣の1人に向かって言いました。


「お前の本音を言い当ててやろう」


「な、なにを・・・」


怯える家臣の男を、モルグデウスは青白く燃える鋭い目で睨みつけました。


「ひっ!」


鋭い眼光で睨まれた家臣は一瞬で意識が遠のき、催眠状態に陥りました。


「お前は、いつもえばり散らすこの王が憎いのであろう?」


モルグデウスの問いに、家臣の男は答えます。


「はい・・・そうです・・・」


「・・・無能のくせに、偉そうにしている王が憎い・・・」


「では、どうしたいのだ?」

「お前は王を、殺してやりたいと思っているのではないか?」


「・・・はい」

「・・・殺してやりたい・・・です・・・」


「では、そうすればよい」


「・・・はい・・・」


家臣は懐から鋭利なナイフを取り出すと、倒れているオッサムの心臓をめがけて、渾身の力で突き立てました。


「死ね!オッサム!!」


グサッ!!


「ぐわっ!!」



「「「「ひぃ~~~っ!!!」」」」



歓迎の宴会場にいた人たちは、突然の出来事に全員が悲鳴を上げました。

ところが次の瞬間、心臓を刺されたオッサムが、何事も無かったように立ち上がったのです。


「あいたたた・・・」

「な、なにがあったのじゃ?」


そして胸に刺さったナイフを見たオッサムは、自分を刺した家臣に向けて大声で叫びました。


「この痴れ者が~~!!」

「わしを殺そうとしたな!!」



「あわわ・・・・」

「私は一体何を?!」


「ひぃ~~~っ!!」


オッサムに怒鳴られて正気に戻った家臣は、自分のナイフが王の胸に刺さっているのを見て、そのまま気を失ってしまいました。


オッサムは胸に刺さったナイフを抜くと、何事も無かったように消えて行く身体の傷を見て、不死の力を得た事を悟りました。


「な、何という事だ!」

「傷が勝手に治って行くではないか?!」


「そ、そうか!これはエルドウィンの秘薬の効果か!」


「わっ、はっ、はっ、はっ・・・・」


「ついに、ついにわしは永遠の命を手に入れたのだ!!」


「わっ、はっ、はっ、はっ・・・・」



この信じがたい光景を目の当たりにした者達は、まず自分たちの目を疑い、そしてその事実に愕然としました。


デプロス王国の王オッサムが、不死の力を得た話は瞬く間に国中に広がりました。

そして、この最悪の王が不死の力を手に入れた事を知った国民は、まさに絶望のどん底に突き落とされた思いだったに違いありません。



アッシュフォードの村で軍備を調えていたハンクの元にも、緊急の報告として諜報員が駆け込んで来ました。



「ハンク様、デプロスの街に潜んでいた諜報員から、緊急の報告が入りました」


参謀のブレメンが、ハンクに告げます。


「デプロス王国の王オッサムが、不死の力を手に入れたそうです」


「なに!?」

「それはマズいなぁ・・・」


「来月には革命軍と一緒に、デプロス城に攻め込む手はずだったのだが・・・」

「敵の王に不死身の力を与えるほどの者がいるとなると、迂闊に攻め込むのは危険だな」


「よし、この情報をフレディア達と共有して、作戦を立て直すぞ!」


「はっ!すぐにフレディア様に連絡いたします!」


こうして緊急の軍事会議が開かれました。


集められたメンバーは、ルミナテス様とフレディア、オリビアの天使達と、カレン率いるイレーネファイターズとクラッシャーズの面々です。

それとアッシュフォード村の防御を強化するために呼ばれた、ギリガンとロックルーラー2名も同席しています。


その場でハンクが、デプロス側から得た情報を公開しました。


「フレディア、国王のオッサムが不死の力を得たそうだ!」


「えっ!そんな事ができるの?!」


ハンクの報告にフレディアは驚きますが、横にいたカレンがすぐにモルティナに尋ねました。


「それって、魔女ママと同じだよね?」


「そうさね!」

「どうやら、国王にエルドウィンの秘薬を使ったようだね」



「「「「えっ!!」」」」


モルティナの言葉を聞いた一同は、驚きの声を上げました。


「って言う事は、ついに?」


オリビアが、ルミナテス様を見て尋ねました。


「ええ、間違いありません」

「モルグデウスが復活したのですわ!」



「「「「え~~~~っ!!!」」」」



ルミナテス様の一言で、ついに最悪の予言が始まった事が確定したのです。


「ルミちゃん、それって、これから一体どないなるの?」


オリビアは、この中で唯一モルグデウスの脅威を知っている、ルミナテス様に尋ねました。



「そうですね・・・」

「まずは、あちこちから死者があふれ出てきますわね~」


「ええっ!それって、死んだ人が生き返るってことですよね?」


ゾンビやアンデッド、ガイコツなどが苦手なオリビアが、念のために尋ねました。


「前にも話したように、モルグデウスはアンデッドの王なのです」

「人でも魔物でも、死んだ者を操る力を持っているのですわ」


「しかもその者達は既に死んでいるので、倒してもすぐに復活してくるのです」

「それにモルグデウスは、死者だけでなく生者も呪いの力で操る事ができますわ」


「えっ!?」

「死んだ者だけじゃなく、生きている者も操れるのですか?」


ハンクが驚いて尋ねました。


「ええ、意思の弱い者や、邪念を持つ者などは一瞬で操られてしまいます」

「そして何よりも厄介な事は、モルグデウスは不死身という事ですわ」



「「「「え~~~~~~っ!!!」」」」



淡々と語るルミナテス様の話を聞いた一同は、ドヨドヨと、まるで底なし沼に沈んで行くような感覚を覚えました。


その様子を見たルミナテス様は、みんなの士気を高めるために、ヘーベル歴251年8月下旬に天界で行われた、不死身のアンデッドへの対策を口にしました。


「ですが、こうなった時のために、昨年の夏に既に対策を練っておりますわ!」


「まずは、聖職者たちに回復魔法を反転させた、リバース・ヒールという魔法書を授けているはずです」


「この魔法は回復魔法ですが、対象がアンデットなら回復量分のダメージを与える魔法ですわ」


「しかも広範囲の回復を使うと味方は回復しますが、アンデットにはダメージを与えるという、優れた対アンデッド用の魔法なのです」


この問いには、クラッシャーズの聖職者のナタリーが答えました。


「はい、聖職者全員が、教会から頂いております」

「まだ実戦では使っておりませんが、訓練はしっかりと積んでおります!」


そして天使のオリビアも、同じように答えました。


「この魔法やったら、天使は必須やって言うから、うちもカーナも習得したで!」

「まぁ、フレディアはこれより強力な光魔法を持っているから、除外やけどな!」


「よろしいですわ!」


「では、モルグデウスに操られた心を浄化することが出来る、悲劇のハープをセレイヤ様から受け取りましたか?」


この質問には、フレディアが答えました。


「はい、ルナが受け取りました」


「彼女は、ニコヤの遺跡で死霊にされたマリポサの心を、悲劇のハープを奏でて浄化させたことがあります!」


「モルグデウスに操られた人々も、きっと救えるはずです!」


「素晴らしいですわ!」

「それなら安心して任せられますわね!」


ルミナテス様はフレディアの返事を聞いて、満足そうに大きく頷きました。


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