↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
133/138

第百三十三話 動き出したアンデッドの王(二)

へーベル歴252年5月上旬。


オッサムの住むデプロスの城に、ザキュエルがモルグデウスを伴って入城しました。

ですが、その恐ろしい異様な光景を見た街の人々は、恐怖に凍り付きます。


「ひぃ!な、何だ、あの行列は!」


「死人の行進だ!」


「黄泉の国から使者がやって来たのか?!」


「恐ろしや!この国は亡者の支配する国になったのか?!」


街中の人が、恐怖の言葉を口にしています。

その恐ろしい光景とは・・・。




先頭は馬に乗ったザキュエルが進み、そのすぐ後ろをモルグデウスが進むのですが、彼は馬ではなく、禍々しい飾りのついた大きな輿(こし)に乗り、その輿を大勢のガイコツ共が担いで進んでいるのです。


その輿の後ろには大きな鎌を持った死神のネグロスと、3メートルの巨体に大きな棺桶を担いだゲゲロムが続きます。


さらに後からは黒いローブを纏った死霊の様な不気味な集団と、甲冑を身に着けたガイコツの戦士数千体が、ぞろぞろと続いて行くのです。


その様子は、まさに百鬼夜行と言ってもよいでしょう。



一行が城に到着すると、衛兵が急いで玉座の間へ走り、オッサムに伝えます。


「ただいまザキュエル様が戻りました!」



「うむ、やっと戻りおったか!」

「すぐにここへ通せ!」


城の窓から、続々と入城するザキュエル達の様子を見ていたオッサムは、上機嫌で答えます。


しばらくすると、玉座の間にザキュエルがモルグデウスと、護衛のネグロスとゲゲロムを伴って参上しました。


「王よ、只今戻りました」


ザキュエルは、オッサムに恭(うやうや)しく挨拶をします。


「うむ、待ちかねておったぞ、ザキュエル!」


国中で反乱が起き、王としての権力が脅かされている現状で、ザキュエルだけが頼りのオッサムは、以前と変わらぬザキュエルの態度を見て安心しました。


ところが、相手の力量を見極めることの出来ない無能のオッサムは、ザキュエルが連れて来た三人の魔人から放たれる、身も凍るような冷たい威圧に底知れぬ恐怖を感じたため、主従関係を分からせようと、わざと尊大に振舞ったのです。


(な、なんだ、この恐ろしい者どもは?!)

(まるで死者の国からやってきた、亡者ではないか!)


(ここでなめられては王の威信に係わる!)

(よし!わしの方が上だと分からせるために、ひとつ釘を刺しておくか・・・)



「で、ザキュエルよ!」

「後ろにいる者は、何者なのだ?!」


「王であるこのわしに、挨拶をせぬとは無礼であろう!!」



オッサムが怒鳴った瞬間、ネグロスの大きな鎌から鈍い光が放たれました。


ヒュン!!


「止めよ!ネグロス!!」


モルグデウスの声で、ネグロスはピタッと動きを止めました。

見るとネグロスの持つ鎌が、オッサムの首の手前数ミリの所で止まっています。


「ひぃ~~~っ!!」



ドタッ!!



オッサムは腰を抜かし、玉座から床へ転げ落ちました。

それと同時に、恐怖のあまり失禁したようで、股間がビショビショに濡れています。


その姿を見たザキュエルは、口を押えて必死に笑いを堪えました。


(クッ、クッ、クッ・・・)

(小心者が、相手を見る目が無いから、大恥をさらすのだ!)



側にいたオッサムの家臣たちが、慌ててオッサムを抱き起して玉座に戻すと、自分の羽織っていた外套を、オッサムの腰に被せました。


玉座の警備をしていた兵士たちも、ザキュエル達に向けて一斉に槍を構えています。

それを見たザキュエルは、王に向かって厳しい口調で言いました。


「王よ!モルグデウス殿を、私の家来か何かと勘違いされては困りますな!」


「モルグデウス殿はアンデッドの王であり、また人であった時は、一つの大陸を治める偉大な王であったのですぞ!」


「つまりはオッサム王よ、あなたと対等な立場の御方なのですよ」


ザキュエルから説明を受けたオッサムは、慌てて家臣に命じました。


「な、何をしておる!」

「早くモルグデウス王に、椅子を用意せぬか!!」


「そ、それではモルグデウス王よ!」

「王を歓迎する用意のため、わしも少しの間、席を外す事を許されよ!」


そう言うと、オッサムは逃げるようにその場を離れました。



情けないオッサムの姿を、さげすむような目で見たザキュエルは、モルグデウスに尋ねました。


「アンデッドの王よ、何故あの者の首をはねるのを止めたのですかな?」


その言葉に同調して、ネグロスとゲゲロムも首を縦に振っています。特に止められたネグロスは不満そうにしています。


「グフフフ・・・」

「国を亡ぼすのは、何も外からだけではない」

「あのような無能な輩こそが、国を崩壊させる最も優れた人材なのだよ」


「貴様もそれを承知で、従う振りをしているのであろう?」


「まぁ、豚もおだてれば木に登りますからな」


モルグデウスの問いに、ザキュエルも「確かに・・・」と頷きますが、聞いていたネグロスとゲゲロムは意味が分からず、つまらなそうにしています。

その二人に、モルグデウスは言い聞かせました。


「あの者は予のおもちゃとして、飼い馴らす事にしたのだ」

「予の許可もなく、勝手に始末してはならんぞ!」


「あっ、それと城の人間もな!」


ザキュエルも追加で注文を付けました。



「シャーーーッ!」


「仕方がない・・・」


モルグデウスとザキュエルの命令に、ネグロスとゲゲロムは、しぶしぶ従います。



それから数時間後、改めて謁見の場が設けられました。


そしてその場で、モルグデウスはオッサムにある物を差し出しました。


「先ほど予の部下が、王に無礼を働いたようだ」

「そのお詫びとして、これを受け取ってもらいたい」


そう言うとモルグデウスは、オッサムに美しく装飾された小瓶を渡しました。

小瓶の中には、青く光り輝く液体が入っています。


「こ、これは?」


神秘的な輝きに目を奪われたオッサムが、モルグデウスに尋ねました。

するとザキュエルが、その小瓶を見てオッサムに答えます。


「これはエルドウィンの秘薬ですな」


「!!?」


ザキュエルの返答に、オッサムは驚きます。


「こ、これが?!」

「あの、不老不死を与えるという秘薬なのか!!」


「ふっ、ふっ、ふっ・・・」

「そうですよ!」


「アンデッドの王は、オッサム王と長い付き合いを望んでいるようです」



「おぉ!な、なんと言うありがたいお言葉!!」

「で、では!さっそくいただくとしよう!」


オッサムは興奮のあまり、震える声で感謝を述べると、一気に薬を飲み干しました。



ゴクッ、ゴクッ、ゴクッ・・・


ウッ!!


「ぐおっ!何だこれは!!」

「か、身体が燃えるように熱い!」

「な、何者かが、わしの体中を駆け巡っているようじゃ!」


「うお~~~っ!!」


オッサムは絶叫すると、その場で意識を失ってしまいました。



「き、貴様!我が王に何を!!」



衛兵たちが槍をモルグデウスに向けようとした瞬間、ザキュエルが天地創造の杖を振るい、兵たちを床に押し付けました。



ズド~~~~ン!!



「慌てるな!」

「動けば押しつぶすぞ!!」


ザキュエルが一括して兵士の動きを止めると、今度はモルグデウスが口を開きます。


「グフフフ・・・」

「お前たちに、エルドウィンの秘薬の効果を見せてやろう」


そう言うと、不気味な声で笑いました。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。