第十三話 マラドガードへ
次の日の朝
ロファのお城では、王様が落ちつかない様子で、部屋の中を行ったり来たりしていました。
「あなた、ちょっとは落ち着いてはどうですか?」
「セレノス様が旅立ったのは昨日なのですよ」
「そんなに早く結果はわかりませんわよ」
落ち着きのない王様を王妃様がたしなめています。
「うむ、それはそうなのじゃが・・・」
「すでに調査隊を派遣してから一ヶ月も経っておる」
「もう、向こうに着いておるはずなのじゃが・・・」
「セレノス様からではなく、そちらの方からの知らせがあるかも知れんじゃろ?」
「もう、まったく、あなたったら・・・」
「大臣!合図の狼煙はまだ上がらぬのか?!」
「はっ、まだ上がっておりません」
「もう一度確認してまいれ!」
「は、はっ!」
実は昨日の早朝に、マラドガードの村から救援を求める赤い狼煙が上がり、セレノス様とカーナが飛び立ったのですが、まだ結果が分からないため、王様はずっと気になって落ち着けずにいるのでした。
合図の狼煙とは作戦成功の合図の事で、無事に解決できた場合は緑色の狼煙が上がる事になっています。
もし作戦が失敗した時は、黒い狼煙が上がる手はずとなっているのですが、そうなると国家の一大事なので、王様が落ち着かない気持ちも分かります。
慌てて出て行く大臣と入れ替わりに、王子のハンクの妻となったルナが速足で入ってきました。
「まぁ、ルナちゃん!どうしたのですか、その服装は?」
いつもは美しいドレスを着ているルナが、ズボンをはいて男の子のようなカッコをしているので、驚いた王妃様が尋ねました。
「お父様、お母様、もうすぐ白いドラゴンがこちらへ来ます」
「なに?ドラゴンじゃと?!」
「はい、でも安心してください」
「そのドラゴンは神の使いで、おそらくそれに乗っているのはフレディアだと思います」
「なんと!天使のフレディア殿が?!」
「はい、ですから騒がないように兵士たちに伝えて欲しいのです」
「分った!わし自ら出迎えようではないか!」
王様は慌ただしく部屋から出て行きました。
「あっ、見て!ロファのお城が見えたよ!」
「ふぁ?もう朝なの?」
!!!
「えっ、ここどこ?」
「ロファの街よ!」
「え~っ!夜通し飛んでいたのかよ~!」
「あっ!お城の広場にみんな集まっているよ!」
「フロイド、あそこへ降りて!」
広場に到着すると、真っ先に駆けつけて来たのはルナでした。
「フレディア!!」
ルナは勢いよくフレディアに抱き付きました。
「会いたかったわ!!」
「キャハハ!わたしもだよルナ!」
ルナは赤い髪に茶色い瞳の、とても美しいモデルのような体形の女性で、水の精霊の加護を持っています。
そしてルナは、この国でたった4人しかいないSランク冒険者の、フレディア、カーナ、カレン、そしてこの国の王子であるハンクと共に、堕天使バズエルと戦った強い女性でもあるのです。
二人が久しぶりの再会を喜んでいる所へ、今度は王様と王妃様もやって来て、その当時の思い出を語り始めました。
そして大臣をはじめ、お城の役職の人たちも集まって、パチパチと拍手を送っています。
そんな和やかな雰囲気の中で、一人だけ浮いている者がいました。
「なんか、オレの事忘れてね?」
楽しそうに話している人たちの様子を見ていたロックが、ポツンと呟きました。
その後フレディアたちは場所を移し、デプロス王国の企みや、魔物を使役する謎の人物の話などを王様に報告しました。
そして王様からは、昨日セレノス様とカーナがマラドガードの村へ向かった事や、その一月前にカレンが隊長を務める、ギルドの調査隊を派遣している事などを聞きました。
「えっ!セレノス様が直々に出向いたのですか?」
「そうなのじゃよ!」
「セレノス様ご本人が、ワシに任せろとおっしゃってくれたのだ」
「え~っ、信じられな~い!」
「あのセレノス様が、自分から行くって言ったの?」
「本当よ、フレディア」
「わたくしもカーナからそう聞きましたわ」
「え~っ!」
「そっかぁ、ルナまでそう言うなら、本当の事なのね・・・」
「う~~~~~ん・・・・・」
「おかしい・・・」
「あのセレノス様がなぜ・・・」
「いや、絶対におかしい・・・」
それからしばらくフレディアは、黙り込んでしまいました。
そんなフレディアの様子を見て、ロックは恐る恐るルナに尋ねました。
「あの・・・セレノス様って何者なんですか?」
「あらっ?」
「ところで、あなた一体だれ?」
「えっ!そこから?」
しばらく考え込んでいたフレディアが、突然立ち上がって言いました。
「よ~し!わたしも行くよ!」
「えっ?行くってどこに?!」
「マラドガードに決まっているじゃない!」
「え~~~っ!今さっきここに着いたばかりなんだよ?!」
「だって!セレノス様が自分から行くなんて、絶対におかしいでしょ!!」
「いや、だから誰なんだよセレノス様って?!」
ロックは泣きそうな顔でフレディアに尋ねています。
とにかく彼としては、ここでゆっくりしたかったのでしょが、それはどうやら無理のようですね。
「わたくしも一緒に参りますわ!」
今度は突然ルナが立ち上がり、参加すると公言しました。
「「「ええ~~~~っ!」」」
この場にいた全員が驚きの声を上げました。
「まぁ、それであなた、その様なカッコをしていたのね?!」
「はい!お母様!」
「これは国の存亡の危機ですわ!」
「夫のハンクも、国のために最前線に立って戦っているのです!」
「妻のわたくしが、何もせずにいて良いはずがありませんわ!」
「いや、しかし王子妃よ、女性のあなたが危険な場所に行くのは・・・」
「キャハハ!大丈夫だよ王様!」
「ルナはすっごく強いからね!」
「ありがとうフレディア!」
「では、失礼して準備をして参りますね!」
バタ、バタ、バタ、バタ・・・・
そう言うとルナは急いで部屋を出て行きました。
王様や王妃様たちはあんぐりと口を開いたまま、目だけでその姿を追っています。
「キャハハ!」
「ルナって、あんなに明るい性格だったっけ?!」
「だから、知らねえって・・・」
フレディアに聞かれたロックは、ドヨドヨと下を向いてしまいました。




