第百二十八話 ナンガ・ロギの要塞(三)
「スターライト・ゲート!」
フレディアの前に、目には見えない巨大なブラックホールが出現しました。
そしてもう一つの巨大なホワイトホールは、ナンガ・ロギの防壁の真上に出現しています。
要塞の中では、勝利する事を信じ切っている兵士たちが、大声で叫んでいます。
「ヒャッ、ハハハ~~!!」
「お前ら、これで終わりだ~~!!」
「全滅!全滅!!」
「どっか~~~ん!!」
「思い知ったか!!」
「あれ?」
「おい!砲弾がどこかにいったぞ?」
兵士の1人が、砲弾がどこかに消えたと言い出しました。
「なにを寝ぼけた事を言っているのだ!」
もう一人の兵士が文句を言おうとしましたが、確かに着弾した様子が見当たりません。
「えっ?着弾していないだと?」
30門の大砲から発射した弾が、忽然と消えてしまった事を信じられない様子です。
しかしその消えた砲弾の行方を知るのに、そう時間はかかりませんでした。
『闇と光よ、道を開け!スターライト・ゲート!!』
ドッカ~~~~~~~ン!!!
ドドドド~~~~~~ン!!!
グラ・グラ・グラ・グラ・・・・・・
「「「「どわ~~~っ!!」」」」
激しい爆発音と、地震のような揺れが要塞の兵士たちに襲い掛かり、全員床にしゃがみ込んでしまいました。
「な、なにが起きたのだ?!」
指令室でふんぞり返っていた自称隊長と、ヌシガエルが慌てて砲台へやって来ました。
「いや、それが良く分からないのです!」
そう言いながら、兵士の1人が立ち上がって周りを見渡すと、崩壊した防壁が目に入りました。
「あれ~~~っ?」
「なんで壁が崩れているんだ?」
その様子を見た自称隊長は、勘違いして兵士たちを怒鳴りました。
「アホか~!!」
「お前たち、自分の要塞を攻撃してどうすんだ!!」
「さっさと敵を攻撃せんか~!!」
「「「「はい~~っ!!」」」」
兵士たちは、慌てて次の砲弾を発射します。
ドドドド~~~~ン!!!!
30門の大砲が、一斉に火を噴きました。
ですが砲弾は着弾せずに途中で消えたと思うと、再び激しい爆発音と、地震のような揺れが要塞を襲います。
ドッカ~~~~~~~ン!!!
ドドドド~~~~~~ン!!!
グラ・グラ・グラ・グラ・・・・・・
「「「「どわ~~~っ!!」」」」
「こ、これは、どういう事だ?」
自称隊長が目を凝らして砲弾の消えた場所を見てみると、立ち込めた薄い煙が、ある一点に向かって渦を巻きながら消えて行くのが見えました。
「なんじゃ、これは?」
「ま、まさか?」
今度は慌てて要塞の上空を見ると、明るい光の渦が出現しているのが見えます。
「ええ~~~っ?!!」
驚く自称隊長に、ヌシガエルが声を掛けました。
「どうしたゲロ?」
「何をそんなに驚いているゲロ!」
「こ、これは・・・」
「この業は、ザキュエル様が使ったヤツだ!!」
マラドガードの戦いに参加していた自称隊長は、ザキュエルが天地創造の杖で起こした現象と同じである事を悟ったのです。
「お前ら!大砲による攻撃は中止だ!」
「撃った砲弾は、すべてこちらに返って来るぞ!!」
「「「「ええ~~~~~っ!!?」」」」
「オイ・オマエ!じゃあ、どうすんだよ?!」
兵士の1人が、自称隊長に尋ねました。
「もちろん、外に出て適を迎え撃つのだ!!」
「「「「ええ~~~~~っ!!?」」」」
「全軍、突撃の準備をせよ!!」
「そしてオレ様に続け!!」
「突撃だゲロ!!」
「「「「ええ~~~~~っ!!?」」」」
シ~~~~~ン・・・・・・・・
「攻撃が止まったね?」
「ちっ!あいつら、スターライト・ゲートに気づいたのかな?」
フレディアのつぶやきに、カレンが忌々しそうに答えました。
「もう少し様子を見てから攻め込むか?」
ハンクがカレンに尋ねました。
「あぁ、そうするしかないね!」
それからしばらくすると、要塞の門が音を立てて開き始めました。
「おっ!敵さん、やっとやる気になったみたいだぞ!」
カレンが嬉しそうに言います。
ギ、ギ、ギ、ギ・・・・・・ガ~~~~ン!!!
先頭には、身体がゴリラで顔がヤギの大きな魔物が立っています。
そしてその後ろには、巨大なカエルの魔物が、大木槌を担いで立っていました。
「よし、お前たち!!」
「この戦いで勝利し、我らの武功をザキュエル様に褒めてもらうのだ!!」
「とつげき~~~!!!」
「「おお~~っ!」」
ドタ、ドタ、ドタ・・・・・。
「あれ?」
あまりに足音が小さい事に気付いた自称隊長は、慌てて後ろを振り返ります。
そして付き従う兵の少なさに驚きの声を上げました。
「なんじゃ、こりゃ~?!!」
見ると、後ろにはたった50匹ほどの魔物が従っているだけでした。
「ほかの兵士は何をしているゲロ?」
見ると、いつも伝令に来る兵士が、砲台から声を張り上げて叫んでいます。
「オイ・オマエ!俺たちが逃げる間、そこで敵を食い止めておけよ!!」
「じゃあな!!」
そう言うと、慌てて逃げて行きました。
「ガ~~~~ン!!」
「なん、だと?」
これまで難攻不落の要塞と言われて来たのは、兵士たちの力ではなく、大砲という最新鋭の武器のお陰だったようです。
その武器が通用しなくなった今、実戦での肉弾戦を経験したことの無い兵士たちには、戦って要塞を守ると言う概念は無かったようです。
彼らは要塞を捨てて一目散に逃げて行きました。
ビユ~~~~ッ・・・・・
3月上旬の冷たい風が、両軍の間を吹き抜けて行きました。
「あれま・・・」
フレディアが気の毒そうに見ています。
「こりゃ、ひどいな・・・」
「オレ、なんだか、あいつらが可愛そうになって来たよ」
カレンがポツリと呟きました。
「ほんとうになぁ・・・」
「あいつら、一体どうするつもりだろう?」
ハンクも心配そうに敵を見守っています。
「クソッ!!こうなったら!!」
自称隊長は大声で命令を下しました。
「よし!お前ら!!」
「ひとまず、てった~~い!!」
「「「「おぉ~~~~っ!!!」」」」
ドタ、ドタ、ドタ・・・・・。
適は一目散に逃げて行きました。
「はぁ、やっぱ、そうなるよな・・・」
カレンがため息交じりに呟きました。
「お疲れ、フレディア、カレン!」
「さぁ、要塞を占拠するか・・・」
「全軍、進め!!」
ハンクの命令で、ロファ軍はナンガ・ロギの要塞を陥落させると、その噂は瞬く間にデプロス王国中に広がって行きました。




