第百二十七話 ナンガ・ロギの要塞(二)
「よお!みんな元気にしていたか?!」
巨大なドラゴンの背中から降り立ったカレンが、集まった仲間たちに向かって言いました。
「おいカレン!これがあのタマゴから孵ったドラゴンなのか?」
ハンクが驚いて尋ねます。
「そうだよ!オレの娘のイレーネだよ!」
「可愛がってくれよな、ハンク!」
「お、おう・・・」
「イレーネ、ハンクはルナの旦那様だからな!」
「ちゃんと挨拶しなさい!」
「ギヤ~~~~ス!!!」
「「「「ひっ!!」」」」
周りにいた者達は、イレーネの迫力ある雄叫びに驚き、みんな縮こまっています。
「よろしくね、ルナちゃんの旦那様!」
「あ、あぁ、こちらこそ!」
「よろしく頼むよ、イレーネ!」
「「「「うわっ!しゃべった!!!」」」」
イレーネの迫力に押されて、唖然としているクラッシャーズに気付いたカレンは、真っ先にジェンナに声をかけました。
「やあ!ジェンナじゃないか?」
「元気にしていたかい?」
「あっ、カ、カレンさん、お久しぶりです!」
ペコリ!
「あ、あの、そのドラゴンさん、わたしの事を噛んだりしませんよね?」
ジェンナは、怯えながらカレンに尋ねました。
「あっ、はっ、はっ、はっ!」
「大丈夫だよ!そんな事はしないよ!」
「ほっ!よかった・・・」
「あっ!!」
「えっ?」
「そう言えば、カチュアを頭からパクッてやったな・・・」
「ひっ!!」
「あ、大丈夫だよ!すぐに吐き出したから!」
う~~~ん・・・
パタ!
「キャッ!ジェンナしっかりして!!」
ナタリーが慌てて、気絶して倒れたジェンナの介抱を始めました。
その後は再会を祝った宴へと進み、初めて顔を合わす者達の紹介や、これまでの戦歴などを仲間と共有する流れとなり、夜遅くまで笑い声が絶えませんでした。
そして翌日、ハンクを中心にナンガ・ロギの要塞を攻める会議が開かれました。
「問題は、30門の大砲の一斉射撃なのだが・・・」
「疑っている訳では無いが、フレディアよ、本当に何とか出来るのかい?」
「うん、出来るよ!」
ハンクの質問にフレディアは、即答しました。
「そうか!なら安心だ!!」
何度もフレディアと一緒に戦った事のあるハンクは、フレディアに絶大な信頼を寄せています。
ですが、ここでルミナテス様が、フレディアに対して釘を刺しました。
「フレディアちゃんなら、大砲の砲弾を何とか出来るでしょう」
「ですが天界の掟で、人間に危害を加える事は禁止されています」
「分かっていますね?」
「ラジャー!」
「もちろんだよ、ルミちゃん!」
「そう・・・」
「なら、よろしいですわ!」
(えっ?三人の天使の中では、この子が一番幼いのに、何かすごく威厳があるよな?)
(いったい、どういう関係なんだろう?)
ハンクは勿論、他の仲間たちも不思議に思っているようです。
そして次にオリビアが発言しました。
「そんな訳で、魔物は相手にするけど、人には手を出されへんから」
「うちらは戦闘には直接参加せんと、怪我をした人の治療に専念するわ」
「勿論、それでオッケーだよ、オリビア!」
「戦闘はオレ達に任せてくれ!」
カレンがやる気満々で答えます。
「いや、けが人の治癒をしていただけるのは、本当にありがたい!」
「どうかよろしく頼みます!」
ハンクもオリビアの申し出に感謝し、頭を下げました。
それから具体的な作戦の話になり、決行は二日後に決まりました。
ヘーベル歴252年3月8日。
ハンク率いるおよそ1万の兵が、ナンガ・ロギの要塞へ進軍を始めました。
先頭に立つのはフレディアです。
その右側にはハンク、左側にはカレンが並んで進みます。
そして先頭から100メートル程空けて、全軍が続く形となっています。
要塞からおよそ800メートルの地点まで進んだところで、ハンクがフレディアに声をかけました。
「フレディア、砲弾の着弾距離は、最長で700メートルだからな」
「けどこれだけの数だと、おそらく半数が狙える距離まで攻撃してこないと思うけどな」
「うん、わかった!」
「このまま、どんどん進んでいこうか!」
フレディア達は射程距離の中に入っても、歩む速度を落とさずにどんどん進みます。
後方の兵士たちは、さすがに緊張した面持ちで、不安を口にしている者もいます。
「おい、このまま進んで大丈夫なのか?」
「俺たちの持っている盾では、あの砲弾は防げないぞ」
「わからん!けど、あのフレディア様が大丈夫だと言っているのだ」
「俺たちはそれを信じて進めばいいのさ」
「そうだな、きっと何とかしてくれるに違いない」
こうして一抹の不安を抱えながらも、ロファ軍の兵士は誰一人離脱せずに進軍します。
一方この様子を眺めていた要塞の兵士たちは、すでに勝ち誇ったつもりでいました。
「オイ・オマエ!また懲りずに敵兵が攻めて来たぞ!」
伝令の兵士が自称隊長の元へ報告に来ました。
「おう、懲りずにまた来たのか?!」
身体がゴリラで顔がヤギの自称隊長が、指令室にふんぞり返ったまま返事をしました。
「どうせ大砲で蹴散らすのでゲロ?」
「わしらの出番はあるまいよ!」
バカでかいカエルのヌシガエルも、水を入れた大きなタライに浸かったままで答えます。
「もう、お前たちの好きにやってかまわんぞ!」
(ちっ!相変わらずでかい態度だな!)
(なんの役にも立ってねえのによ!)
「了解で~す!」
「さっさと、蹴散らしてやりますよ!」
そう返事をすると、伝令の兵士は戻って行きました。
「すげえ高い防壁だな~!」
カレンが要塞の防壁を見上げて言いました。
両側を高い絶壁に挟まれた峡谷を、塞ぐように作られた防壁の高さは、15メートルもあります。
「さすがに、難攻不落と言われているだけの事はあるな!」
カレンが感心して見ている地点は、要塞から300メートルほどの距離に近づいた所です。
そしてついに、敵に動きがありました。
「砲撃開始~~~!!!」
ドドドド~~~~ン!!!!
30門の大砲が、一斉に火を噴きました。
「おっ!撃って来たよ、フレディア!」
「ラジャー!」
カレンの声を合図に、フレディアは魔法を発動しました。




