第百二十三話 新しい魔法(三)
次の日、フレディアはアストラルゲートの訓練を行いました。
大きな岩を、別の場所へ瞬間移動させる訓練です。
フレディアは大きな岩に向かって魔法を発動しました。
「虚空よ、開け!アストラルゲート!!」
ヴオ~~~~ン・・・・・
すると大きな岩は一瞬で消え去り、次の瞬間、目印の旗を立てた遠くの目標に、見事に移動させました。
この訓練を始めた時は、移動させる物をどこかへ無くしたり、目標からかけ離れた場所へ移動させたりと、思うようには行きませんでしたが、今では目の届く範囲になら、確実に移動させる事が出来るようになっていました。
「「「「パチ、パチ、パチ、パチ・・・・」」」」
この様子を見ていたオリビアたちも、拍手をして喜んでいます。
「すごいな、フレディアは!」
「まだ訓練を始めてひと月ほどしか、経っていないのに!」
カレンが嬉しそうに声を掛けました。
「ほんまやな!これはすごいわ!」
「お見事ですわ!」
初めてこの魔法を見た、オリビアとルミナテス様も驚いています。
「さすがはフレディア様ですわ!」
シルヴィーは、常に尊敬の眼差しでフレディアを見つめています。
この魔法を伝授したモルティナも、フレディアの覚えの早さに驚きを隠せません。
「いやフレディア嬢は、さすがに天使様だね!」
「もう、確実に使いこなせているさね!」
「後はブラックホールとホワイトホールを、次元の狭間で繋げるエクリプス・ゲートの魔法だけだね!」
モルティナが言うように、基本的な操作は身に着けていますが、ブラックホールとホワイトホールを同時に発動させる事が出来ても、それを瞬時に繋げる事が難しいようで、これからは、この魔法の訓練が中心になるようです。
「じゃあ、やってみるね!」
フレディアは右手を上げて、先ほど移動させた大きな岩の上にブラックホールを発生させると、次に左手を上げて自分たちのいる場所の上空にホワイトホールを発生させました。
大きな岩は、一瞬でブラックホールに飲み込まれて消えました。
その瞬間にフレディアは、エクリプス・ゲートを発動させます。
「虚空よ、繋がれ!エクリプス・ゲート!!」
「・・・・・・・」
「落ちてこないね?」
フレディアがホワイトホールを見ながら、残念そうに言いました。
「ほんまやな!あの岩、どこへ行ったんやろか?」
「まさか、変な場所に落ちたりせえへんやろな?」
オリビアも上空を見ながら心配そうに言いますが、それは大丈夫だと、モルティナが説明してくれました。
「変な場所に落ちたりはしないさね」
「ブラックホールに吸い込まれた大岩は、次元の狭間に行っているからね」
「これがうまくホワイトホールに繋がれば成功なんだけど・・・」
「おそらく、どちらかの質量が均等ではないのだろうね~」
「そっか!」
「ブラックホールと、ホワイトホールの質量が同じでなければ、繋がらないのね?」
「う~~ん、難しいなぁ・・・・」
フレディアが難しい顔をして唸っていると、ルミナテス様が助言をしてくれました。
「わたくしが見ましたところ、光りの魔法の方が強いようですわね!」
「フレディアちゃんは、光りの魔法が得意でしたので、この差を埋めるのは大変だと思いますわ」」
「フレディアちゃんはホワイトホールを発動する時、アークⅢのように全力を出しているのではないですか?」
「うん、そう!」
「でしたら、ブラックホールの魔法を全力で、そしてホワイトホールの魔法の方は・・・」
「そうですね、アークⅡの魔法を発動する感じでやってみてはどうでしょう?」
「わかった!」
「もう一度やってみるね!」
フレディアは右手を上げて、遠くに見える大木の上にブラックホールを発生させると、次に左手を上げて自分たちのいる場所の上空にホワイトホールを発生させました。
大きな木は、一瞬でブラックホールに飲み込まれて消えました。
その瞬間にフレディアは、エクリプス・ゲートを発動させます。
「虚空よ、繋がれ!エクリプス・ゲート!!」
「「「「あっ!!!」」」」
「「「「ひえ~~~っ!!!」」」」
フレディアが魔法を発動した瞬間、上空のホワイトホールから、巨大な木が落ちてきました。
遠くの場所にあった木なので、まさかこんなに巨大な木だとは思っていなかったのです。
フレディア達は悲鳴を上げながら、まるで蜘蛛の子を散らすように、慌てて逃げました。
ドドド~~~~ン!!!!
ものすごい地響きを立てて、驚くほど巨大な木が落ちて来ました。
カレンは咄嗟にモルティナを抱えて飛びのいたので、まさに危機一髪でした。
「びっくりした~!」
「死ぬかと思ったわ!」
「死ねないけど!」
シルヴィーは風の魔法で地面から飛び去り、難を逃れています。
フレディアはオリビアとルミナテス様と一緒に、アストラルゲートの魔法で50メートル先へ移動して無事でした。
「ひや~!びっくりしたわ~!」
「まさか、こんな大きな木が落ちてくるやなんて!!」
50メートル先に横たわっている巨木を見て、オリビアは胸を撫でおろしました。
そして心配して隣にいるルミナテス様を見ると・・・。
「もう!こんなにドキドキしたのは、久しぶりですわ~!」
何故かすごく楽しんでいるご様子です。
(え~~っ!ルミナテス様、すごい喜んでるやん!)
(あれかな?平穏な天界の生活に飽きて、刺激を求めているんやろか?)
(けど、ルミナテス様の身に何かあったら、うちが大目玉をくらうしな~)
「あの、ルミナテス様!」
「下界は危険やし、そろそろ天界へ戻られた方がええんと違いますか?」
もしルミナテス様に何かあれば大変な事になると思ったオリビアは、天界へ戻る事を進言したのですが、ルミナテス様にはその気が全く無いようです。
「まぁ!嫌ですわ!」
「せっかく下界に降りたのです!もっと楽しみたいですわ!」
「えっ!楽しむって・・・」
(あかん!これはとことん、下界の生活を楽しんだろうって顔をしてはるわ!)
「けど天界に戻って、セラディウムの事を報告せんでもええんですか?」
「大丈夫よ~!」
「だって、月へ行く宇宙船がまだまだ完成しませんもの!」
「わたくしの役目は、それまで下界の様子を探る事ですわ!」
「はぁ、そうですか・・・」
「じゃあ、ルミナテス様の仰せの通りに・・・」
「みんな大丈夫~?!」
難を逃れたシルヴィーが、地上へ降りてきました。
「みんな、ごめんね~!」
「まさか、こんなに大きな木だったなんて・・・」
フレディアが謝りますが、みんなはまったく気にしていませんでした。
それよりも、エクリプス・ゲートが成功した事の方が嬉しかったようです。
「フレディア様、気にする事はありませんよ!」
「それより、成功したじゃないですか!さすがはフレディア様です!」
シルヴィーは、みんなの気持ちを代弁して伝えました。
「やったな、フレディア!」
「だけど、せっかく新しい魔法が完成したんだから、名前も変えた方がいいんじゃないか?」
「オレは、もっとフレディアらしい名称がいいと思うよ!」
カレンがフレディアに提案しました。
「それも、そうさね!」
「ブラックホールとホワイトホールを同時に出現させる時にも、名称と詠唱を決めた方が効率が良くなるしね・・・」
魔法を授けてくれた二人の意見なので、フレディアは喜んで返事をしました。
「わかった!」
「じゃあ、カレンが決めてよ!」
「えっ!オレが?」
「うん!」
「だって、この魔法はカレンがわたしにくれたんだもん!」
「そ、そっか!」
「じゃあ・・・」
「う~~~ん・・・・・」
「じゃあ!ブラックホールとホワイトホールを発動する時の魔法名は・・・」
「スターライト・ゲート!」
「で、その二つを繋げる時の詠唱は・・・」
『闇と光よ、道を開け!スターライト・ゲート!!』
「って、どうかな?」
「てへへ、単純すぎるかな?」
カレンは照れながらフレディアに尋ねましたが、フレディアは大喜びでその名称を受け入れました。
「ありがとうカレン!」
「カレン、大好き!」
ギュッ!
「あわわわ・・・」
フレディアに抱き付かれたカレンは、いつも自分がフレディアにしている事の逆を突かれて、顔を真っ赤にして慌てています。
「いいね、バッチリさね!」
「次からは、もう少し小さなホールを作って練習するさね!」
モルティナも納得して、嬉しそうに二人を見つめていました。
こうしてフレディアの特訓は続き、さらにひと月が経ちました・・・。




