第百二十二話 新しい魔法(二)
「えっ?ルミナテス様じゃないの?」
「フレディアあのな、その話はひとまず置いといて~」
「あんた、いま何してたん?」
「魔法の練習だよ」
「いや、魔法の練習って・・・」
「いま見てたけど、あの魔法って、ザキュエルの使うヤツとそっくりやん!」
「あっ、はっ、はっ、はっ!」
「フレディアの魔法を見て、驚いたかいオリビア?」
「あっ、カレンさん!実はカレンさんの・・・」
「あれはクラッシュの魔法!天地創造の杖と同じ魔法だよ!!」
「「え~~~~っ!!?」」
オリビアとルミナテス様は、カレンから衝撃の事実を告げられ、その場で完全に固まってしまいました。
二人が口を動かせるようになったのは、しばらく間を開けてからの事です。
「やっぱりそうなんや!」
「いったい、どうなってるんよ?!」
「あわわ・・・」
「もし今お菓子を食べていたら、きっと喉を詰まらせて死んでいましたわ!」
驚くオリビアとルミナテス様に、カレンは事の次第を説明してくれました。
「え~~っ!そうなんや?」
「漆黒の騎士がマグナ・グラビティの魔法書を?!」
「ルミちゃん、漆黒の騎士って何者やろな?」
オリビアが何気なくルミナテス様に尋ねると、一瞬ビクッとした後に、そわそわと落ち着きのない様子で答えました。
「う、うん!そ、そうねぇ・・・いったい何者でしょうね?」
(あれ?ルミナテス様の目が泳いでるわ!)
(こりゃ、絶対になんか知っている顔やでぇ!)
(よし、後で問い詰めたろ!)
そんな事を考えているオリビアに、一緒にいる幼いルミナテス様の事が気になるフレディアが、声を掛けました。
「ねえ、どうしてちっちゃいルミナテス様がここにいるの?」
「あっ、そや!」
「フレディアちょっと、こっちへ来て・・・」
オリビアはフレディアを連れ出して、ルミナテス様がここへ来た理由を説明しました。
「だから、ルミナテス様はうちの妹っていう設定な!」
「うん、わかった!」
「わかったけど、ルミナテス様があっちで何かもめているよ?」
「えっ?」
フレディアが指さす方を見ると、ルミナテス様がカレンと何か言い争っている様子です。
「え~~っ!なに?この子!」
「絶対にいやだよ!」
「ちょっと、やめてよ~!」
「なにを言っているのです!」
「はやく脱ぎなさい!」
「わたくしは、そのためにここへ来ているのですから!」
見るとルミナテス様が、カレンの胸当てを脱がそうとして、必死にしがみ付いていました。
「あわわ・・・」
「ちょっと、ルミちゃん、無茶したらあかんて!」
「ちゃんと、理由を説明せな!」
オリビアが慌ててカレンからルミナテス様を引き離しました。
「オリビア、この子がオレに裸になれって言うのよ?」
「もう、どうなっているのよ?!」
さすがのカレンも、幼い子供相手に力尽くと言う訳にも行かず、とにかく脱がされまいと必死に胸当てを守っていたのでした。
「ごめん、ごめん!」
「実は妹のルミちゃんが、大神ダレス様からセラディウムを調べるように命令されて・・・」
「それで、一緒にここへ来たって言う訳やねん!」
「そやからカレンさん、その胸当てを調べさせてくれへん?」
オリビアの話を聞いていたモルティナも、錬金術師として、以前からカレンのセラディウムには興味がありました。しかもルミナテス様から発する特別なオーラを感じた彼女は、ただ者ではない事を見抜いていましたので、オリビアの意見に賛成しました。
「カレン嬢、あたしもその胸当てには興味があるさね!」
そう言って、自分の羽織っていた薄い外套を差し出しました。
「え~~っ!魔女ママまで?」
「もう、しょうがないなぁ~」
「こら、コル助!」
「お前はオスだから、あっちに行ってろ!」
「カァ~~~ッ!」
「オスって、あっしはカラスでやんすよ?」
「だめ!あっちに行って!」
「カァ~~~ッ!」
「残念でやんす~!!」
コル助がいなくなるのを確認したカレンは、渋々胸当てを外しました。
「まぁ!すご~い!」
「素晴らしいお胸です事!」
「羨ましいですわ!!」
裸になったカレンの胸を、ルミナテス様が羨ましそうに見ています。
(おい!オレの胸当てじゃなくて、こっちの方に興味があるのかよ?)
「ちょっとオリビア!」
「あなたの妹、興味があるのは胸当ての方でしょ?」
カレンが顔を赤くして文句を言いますが、他の女性たちも羨ましそうな目で見ています。
「いや、カレンさんの立派なお胸!うちも羨ましいわ~!」
オリビアも、指をくわえて見ています。
「すごく綺麗ですよ、カレンさんのお胸!」
シルヴィーは、尊敬の眼差しで見ています。
「さすがはあたしの娘さね!大したものさね!」
モルティナは、何故か自慢げに見ています。
「わたしも大人になったら、カレンみたいになれるのかな?」
フレディアまでがジ~ッと見るので、とうとうカレンは外套を抱えると、走ってイレーネの影に隠れてしまいました。
「このセラディウムには、重力魔法の効果を軽減する力があると、あたしは見ているんだけどね!」
カレンの胸当てを手に取って、モルティナがルミナテス様に言いました。
「まぁ!本当ですか?」
「それだと、アトラー様の文献に書かれてある『魔法に干渉されない物質』と一致しますわ!」
「先ほど見ていましたよね?」
「カレン嬢は魔法に耐えていましたが、あたしとシルヴィー嬢は、一瞬で潰されてしまったのを!」
「ええ!もしこのセラディウムをいっぱい手に入れれば、ザキュエルに対抗する事が出来ますわね!」
「そうさね~」
「それにフレディア嬢が、クラッシュの逆のレイズの魔法を使えば、天地創造の杖に潰される可能性は、さらに低くなるさね!」
「逆の魔法?」
「魔女ママさん、フレディアって、クラッシュの魔法以外にも使えたりするん?」
オリビアが不思議そうな顔で尋ねるので、モルティナはフレディアが訓練している、複数の魔法を詳しく説明してくれました。
「「え~~~~っ!!?」」
「じゃあ、天地創造の杖でやれる事が、フレディアは出来てしまうって事なん?」
オリビアは飛び上がって驚きましたが、ルミナテス様は何故か、その事に思い当たる節がある様で、微妙な顔つきをしています。
(あれ?やっぱりルミナテス様は、何か知っているんやわ!)
(天界12神の筆頭やし、技術と創作の神様たちが知っている事を、この御方が知らんはず無いわな・・・)
「お~い!今日の訓練は、もう終わりにしようぜ!」
「オレ、こんな薄っぺらな外套だけじゃ、何も出来ないよ!」
カレンがイレーネの影から文句を言うので、フレディアたちも引き上げる事にしました。
ギリガンの家に戻った後、モルティナがセラディウムの胸当てから素材を少し削り取ろうとしましたが、恐ろしいほどの強度で、傷一つ付けることが出来ませんでした。
「これは、セラディウムを手に入れても、加工する技術がなければ、防具も作れないさね!」
「まあ!じゃあ持ち帰っても意味がないって事ですの?」
ルミナテス様が驚いて聞きました。
「いや、鉱石のままで持ち帰れば、何とかその精製方法を見つける事が出来るかもしれないけど、一度精製して加工された物には、手を加える事は出来ないという意味さね」
「つまり、出来るだけ早く月へ行って、セラディウムの鉱石を手に入れなあかんって事やな?」
「そう、オリビア嬢の言う通りさね!」
「鉱石を加工出来る方法を、編み出す時間が必要さね!」
「はぁ~!惑星直列まで後2年ですわ!」
「スクラップ殿には、頑張ってもらわなくては・・・」
ルミナテス様は、憂鬱そうな顔でため息をつきました。




