第百二十一話 新しい魔法(一)
朝食をモモちゃんのお店で済ませたルミナテス様とオリビアは、アルガの町の教会へ降臨しました。
「ルミナテス様、どの教会へもすぐに移動できるのは、すごく便利やね!」
「そうですわね!」
「神は自分が祭られている場所になら、瞬時に行けますもの」
「あっ、やっぱり祭られている場所でないと、行かれへんのん?」
「ええ、基本的にはそうですわ」
「地上では占星術が盛んに行われているので、わたくしの場合、ほとんどの町や村に行く事が出来ますわね」
「大神ダレス様とわたくし、それに水の女神、土の女神、火の神は、どの町の教会や神殿にも祭られていますから、とても便利ですわ」
「まぁ、わたくしは下界に降りるのは、今回が初めてですけどね~」
「こんなに楽しい所なら、もっと早くに来ればよかったですわ!」
「あはは・・・。ルミナテス様、結構下界の生活を満喫してますもんね!」
「じゃあ、カレンさんの所へ行きましょうか!」
「ええ!でも教会から出たら、わたくしの事はルミちゃんって呼んでね!」
「はい、はい!」
「じゃあ、行きますよルミちゃん!」
オリビアはルミナテス様と手をつないで、ギリガンの家へ向かいました。
「カミラさん、ただいま~!!」
「は~~~い!」
「おかえりなさい、オリビア様~」
家の中からいそいそと出て来たカミラさんは、オリビアの隣にいるルミナテス様を見て、驚きの声を上げました。
「まぁ!」
「まぁ、まぁ、まぁ、まぁ~~~っ!!」
「なんて美しいお嬢様なの?!」
「オリビア様、この美しいお嬢様は?」
「あっ、うちの妹のルミナテスです!」
「こちらお世話になっている、カミラさん」
「こんにちは!わたくしの事は、ルミちゃんって呼んでね!」
「まぁ!オリビア様の妹さん?!」
「なんてかわいらしいお嬢様なの!!」
「ささ、どうぞ中へ!」
「すぐにお茶を用意しますね!」
カミラさんからお茶とお菓子をいただいた二人は、カレンがフレディアの魔法の特訓のために、近くの広場にいると教えてもらい、さっそく様子を見に出掛けました。
「フレディアが魔法の特訓って?」
「いったい、何の魔法の特訓なんやろ?」
「フレディアちゃんは、体調が悪いって聞いていましたが、大丈夫ですの?」
「そうやねん!うちが天界に戻る前はすごく元気が無くて、心配してたんよ」
「あっ、あそこにいた!」
「ほら、イレーネの近くで、カレンさんと一緒に、なんかやってるわ!」
「まぁ!あれがマラードの忘れ形見の?」
「ずいぶん立派なダークドラゴンになったのね!」
「ルミちゃん、もうちょっと近くに行って、隠れて見てみよか?」
「まぁ!それって、偵察っていうやつね?」
「なんか、ワクワクしますわ!」
二人は近くの木の陰に隠れて、様子を見る事にしました。
広場では、フレディアが樹海の魔女モルティナの指導を受けながら、新しく覚えた複数の魔法の練習をしていました。
その1つ目は、マグナ・グラビティの魔導書で覚えた重力操作で、押しつぶす魔法の『クラッシュ』と、その逆に浮かび上がらせる魔法の『レイズ』です。
2つ目は、重力の魔法を応用した『ブラックホール』の魔法と、光の魔法を応用した『ホワイトホール』の魔法。
3つ目はモルティナ直伝の『アストラルゲート』の魔法で、それを使ってブラックホールとホワイトホールを、次元の狭間で繋げる魔法『エクリプス・ゲート』です。
カレンは丁度いま、フレディアが練習中の、クラッシュの魔法の実験台になっている所でした。
「いいぞ、フレディア!」
「力いっぱいやってくれ!」
「じゃあ、いくよ!」
『抗う事を許さぬ重き理よ、その身を地へ伏せさせよ!クラッシュ!!』
ズズ~~~~~~ン!!!!
「ぐっ!!」
カレンの身体がググッと前のめりになり、両手で膝を押さえて重力に耐えています。
「カレン、大丈夫?」
離れて見ていたシルヴィーが、心配して声を掛けました。
「これぐらい、ぜんぜん大丈夫だよ!」
「フレディア、これが全力なのか?」
「もう少し強く出来ると思うけど・・・」
フレディアがもう少しパワーを上げようとした時、モルティナが止めました。
「ちょっと、待つさね!」
「この魔法の波動は尋常じゃないよ?」
「普通なら耐えられるものじゃないさね!」
「これってカレン嬢の体力が、でたらめ過ぎるからじゃないのかい?」
「はぁ?また魔女ママは、オレの事をまるで怪物みたいに言って!」
「そんな事を言うなら、魔女ママとシルヴィーも、こっちへおいでよ!」
「魔女ママさん、行ってみます?」
「そうさね~?ちょっと行ってみるかね?」
カレンに言われた二人は、トコトコとマグナ・グラビティの効果ゾーンへ行きますが、一歩足を踏み入れた瞬間に、二人とも地面に叩きつけられ、潰されたカエルのようになってしまいました。
ベチャ!!
「キャッ!!」
「グヘッ!!」
「!!?」
「カァ~~~ッ!!」
「フレディア様、止めるでやんす~!!」
二人が潰れるのを見たコルヴァスが、慌てて叫びました。
ヴン・・・・・・
「あわわわ・・・」
「え~~~っ!!」
フレディアはビックリして顔面蒼白になり、カレンは目玉が飛び出るほど驚いています。
「つ、潰されるかと思いました~」
地面に大の字に寝そべったまま、シルヴィーが震える声でつぶやき、その隣ではモルティナが、口をパクパクさせています。
「し、死ぬかと思った・・・」
「死ねないけど・・・」
「おい、おい、マジかよ?」
「二人とも大丈夫?」
カレンとフレディアが、慌てて駆けつけました。
「やっぱり、あたしが言った通りさね!」
「カレン嬢がおかしいんだよ!」
「カレンさん、なんで平気なのですか?」
「え~~っ!」
「ごめん!ごめん!やっぱりオレが変なのか?」
「ひょっとして、オレは変態なのか?」
二人から責められて、カレンも平謝りしています。
「ちょっと、フレディア!」
「これは、どういう事なん?!」
隠れて見ていたオリビアが、事の異常さに驚いて、慌ててやって来ました。
「あっ!オリビア!」
「と?」
オリビアの横にいる少女を見て、フレディアが固まってしまいました。
「じ~~~~っ・・・・」
「えっ?ルミナテス様?」
「違います!」
ルミナテス様は、即座に否定しました。




