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第百十九話 地上に降りた女神様(二)

「あわわわ・・・な、何事じゃ?!」


「あっ、はっ、はっ、はっ!」

「セレノス様、おひさ~!」


オリビアは大笑いしながら、セレノス様に挨拶しました。


「どひゃ~!モモちゃん?」


「あひゃ?」

「な、何じゃ、オリビアちゃんではないか?」

「脅かすでないわ!もう少しで腰が抜けるところだったぞい!」


「相変わらず熱心やなぁ、セレノス様!」

「もう、いっそのこと、この店のペットになったら?」


ドキッ!!


「な、なにを言っておる!」

「わしはこの町の治安維持のためにだな・・・」



「ぎょっ?!」



言い訳をしようとしていたセレノス様は、オリビアの後ろにいる女性を見て、固まってしまいました。


「わしは落ちた拍子に、頭を打ったのかのぉ?」

「なぜか、ルミナテス殿に似た御方が見えるのじゃが?」


セレノス様は不思議そうな顔で、目をこすりながらルミナテス様を見ています。


ルミナテス様は目の前でひっくり返っているネコを指さして、オリビアに尋ねました。


「オリビアちゃん」

「このネコが、セレノス殿なのですか?」


「あっ、はっ、はっ、はっ!」

「そやで~!」



「どひゃ~~!!」

「まさか、本物のルミナテス殿なのか?!」


目の前にいるのが本物のルミナテス様と分かったセレノス様は、慌てて飛び起きて神様の姿に戻りました。



ボン!

シュルル・・・・・



「ちょ、ちょっと、これはどういう事なのじゃ?」

「なんで、ルミナテス殿がここにおるのじゃ?」


「あっ!本当にセレノス殿だったのですね?」

「実は、セレノス殿にお願いがあって来ましたの!」


「はぁ?お願いですと?」


「えぇ、実は・・・」


ルミナテス様は、オリビアからセラディウムが地上にある事を聞き、その調査に来たことをセレノス様に伝えました。


「それで、わたくしの姿を変えて欲しいのですよ」

「神が下界の人間に干渉する事は、禁じられているでしょ?」


「な、なるほど・・・」

「で、いかなる姿をご所望ですかな?」


「う~~~ん、そうねぇ~・・・」

「最初はネコでもいいかなぁ~って、思っていたのですけど・・・」


「やっぱり、やめましたわ!」


「あっ、はっ、はっ、はっ!」

「セレノス様のズッコケた姿を見たからや!」


「な、なんじゃと~!」


オリビアがセレノス様をからかいますが、実は理由は別の所にありました。


「いえ、そうではありませんわ!」

「ただ・・・」


「はぁ、だだ?」


セレノス様の問いに、ルミナテス様が答えた理由とは・・・。


「だって、ネコって服を着ていないでしょ?」


「えっ?」


「はぁ?そりゃ、ネコは服を着とりませんが?」


「裸じゃ、恥ずかしいですわ!」

「キャッ!」



「「えぇ~~~~っ!!?」」



「「そこ?」」



さすがにセレノス様とオリビアも、ルミナテス様の答えにちょっと引いています。



「それに、せっかく綺麗なお洋服を選んで来たんですもの・・・」

「ねぇ、オリビアちゃん!オリビアちゃんもそう思うでしょ?」


「そ、そうですね、そのお洋服とてもよく似合っていますよ~」

「あは、あは、あは・・・」


(で、一体どうしたいの?)


セレノス様も、ルミナテス様の事が何となく分かってきたようで、少しめんどうになって来たようです。


(これは、さわらぬ神に祟りなしじゃな・・・)


「では、そのままの姿で良いのですな?」

「それでは、わしはこれで!」


急いで立ち去ろうとするセレノス様を、ルミナテス様は慌てて止めました。


「ちょっと!それは困りますわ!」

「だって~!わたくしが神だとばれると、まずいですわ!」


「目立たない姿で、極秘に行動しなくちゃダメなのでしょ?」


「は、はぁ、そうですな・・・」


(あ~っ、めんどくさいのう?!)

(わしに、どうせよというのじゃ?)



「う~~~ん、どうしょっかなぁ~」


「う~~~ん・・・」


「う~~~ん・・・」



しばらく考え込んでいたルミナテス様ですが、良い考えが浮かばなかったようで、結局オリビアに丸投げしてしまいました。


「もう、分かんないわ!」

「オリビアちゃん、どうすればいいと思う?」


「オリビアちゃんが、決めてちょうだい!」


「えっ!うちに振られても・・・」


(あ~~っ、もう、めんどくさ~!)

(ほんまにもう!子供みたいな神様やな~!)


(えっ、子供?!)


(そうや!!)


「ルミナテス様、それやったら・・・」

「そのカッコのまま、子供の姿にならはったら?」


「まっ!それはいい考えですわね!」

「いくつぐらいの子供がいいかしら?」


「そやな!9歳ぐらいがええんと違いますか?」

「まさか、そんな子供が神様やなんて、誰も疑わへんし!」


「そうですね!」

「セレノス殿、わたくしを9歳の子供に変身させてくださいな!」


「分かりました!では!」


また考えが変わると面倒なので、セレノス様は急いで力の杖を振るいました。


「それっ!」



シュルルルル・・・・ポン!



力の杖の能力で、ルミナテス様は9歳の子供の姿に変身しました。

大人のルミナテス様を、そのまま小さくした感じで、紫色のロングボブに、紫色の水晶の様な瞳を持つ、とても美しい女の子です。


服装は、深い紺とくすんだ紫を基調にした上品なワンピースに、薄手で小さな星屑の模様が入った薄い外套を重ね、足には編み上げの短靴といったいでたちで、耳には小さな三日月の耳飾りがキラキラと輝いています。


「うっわ~!めっちゃ可愛いやん!」


「うむ、そのままの姿を、小さくした感じじゃの!」


「まぁ!そうなの?」


ルミナテス様は急いでお店のショーウインドーの前に行くと、ポーズを変えながら、ガラスに映る自分の姿を確認しています。


その間オリビアは、セレノス様に天界の現状を説明したり、フレディアの調子が悪くなった事とかを話していました。


ところが一向にルミナテス様が戻って来ないので不思議に思って見てみると、何と!お店のメニューが飾ってあるショーウインドーに、ヤモリのようにへばり付いているではありませんか?


「あっ!何してんの、ルミナテス様!?」


オリビアが急いで行くと、ルミナテス様は初めて見る料理のサンプルを、食い入るように眺めていました。


「あわわ・・・」

「ルミナテス様、ヨダレ、ヨダレ!」


オリビアは慌ててルミナテス様の口を拭ってあげました。


「オリビアちゃん!わたくし、お腹が空きましたわ!」


「そ、そうですね!」

「もうすぐ夕食の時間やし・・・」

「じゃあ、お店で何か食べましょうか?」



「わ~~~~い!」

「やった~~~!」



「オリビアちゃん、わたくしこのハンバーグ定食ね!」


「はい、はい!」


「あと、このプリンも食べていい?」


「う、うん・・・」


「あっ、でも、こっちのケーキもおいしそう~!」

「どっちにしようかなぁ~」

「う~~~ん・・・」


(あかん!ルミナテス様、身も心も、ほんまに9歳になってしもたんかも!)


心配になったオリビアが、大丈夫かセレノス様に聞こうとしましたが、もうどこにもいませんでした。


(え~~っ!もうおらへんやん!)

(逃げ足、はや~~っ!)



「ねえ、オリビアちゃん!どっちがいいと思う?」


(うっわ~!めんどくせ~!)


「あは、は、は、は・・・」

「もう、二つとも食べちゃえば?」


「えっ、いいの?」


「やった~~~!!」


「オリビアちゃん、早く!早く!」


「あっ、はい、はい!」


オリビアは、ルミナテス様と手をつないでお店に入って行きました。



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