第百十七話 スクラップ様の災難
ダレス様の命令で、逃亡を図った技術と創作の神様と恋を取り持つ神様は、衛兵に捕まってしまいました。
「ダレス様、ありがとうございます!」
「あとは、うちが取り調べをするので、連れて帰りますね?」
オリビアが二人を連れ去ろうとすると、ダレス様が慌てて止めました。
「いや、いや、オリビアよ!勘違いするな!」
「この二人には、まだ大事な用があるのだ!」
そう言ってオリビアを止めると、今度はお付きの天使に命じました。
「誰ぞ、オリビアにお茶とお菓子を持って参れ!」
「オリビアは此度のプラネットルームの復活に、多大な貢献をしてくれたのだからな!」
「ご褒美じゃ!」
オリビアとしては、少し当てが外れてしまいましたが、ご褒美を頂けるならと、二人への尋問は後回しにする事にしました。
「あっ!それやったら、前の会議の時に頂いたお菓子がええわ!」
「あれ、めちゃくちゃ美味しかったから!」
美味しくて口いっぱいに頬張ったため、のどに詰まらせて、あやうく窒息しそうになった事を思い出したのです。
そして、もう一人の窒息しそうになった御方も、お菓子の事を忘れていませんでした。
「では、では!わたくしにも、お菓子をお願いいたしますわ!」
「おっ!おぉ・・・」
「では、ルミナテス殿にも、用意を頼む!」
(この二人が揃うと、どうも緊張感がなくなるのぉ・・・)
「では、会議の続きであるが・・・」
「アナザームーンへ行く方法だが、それは勿論用意する必要がある!」
「だが、心配はいらぬ!過去に月にまで行った実績のある船が、ここにはあるからな!」
「えっ?」
ダレス様の言葉を聞いてビクッとしたのは、技術と創作の神様でした。
(まさか、あの船の事を言っておるのではなかろうな・・・)
技術と創作の神様の心配は、見事に的中しました。
ダレス様は技術と創作の神様を見て、ニタッと笑うと、声をあげて言いました。
「我らには、『アルテミス号』があるではないか!」
「のお!スクラップ殿!」
「え~~~っ!」
「いや、ちょっと待って下されダレス様!」
「あの船はもう、1000年も前の船ですぞ?」
「もう朽ち果てて、ボロボロになっておるはずじゃが?」
「ボロボロになっているのなら、すぐに直せば良いのだ!」
「あの船を作ったそなたなら、簡単な事であろう?」
「え~~~っ!」
「そんな、無茶な~!いっそのこと、新しく作った方が早いぐらいですぞ?!」
「スクラップ殿、新しく作るのに、いったいどれだけの時間がかかるのだ?」
「2年後には、世界が滅ぶやも知れぬのだぞ?」
「もぐ、もぐ・・・」
「たちか、あのぶねを作るのに、20年ぼどががりまちたわね?」
口いっぱいにお菓子をほおばりながら、ルミナテス様が答えました。
「そ、それで、一体いつまでに船を動かせと?」
「1年以内に、何とかせよ!」
「え~~~っ!そ、そんな無茶な~!」
「無茶でもやるしかないのだ!」
「月へ行ってセラディウムを持ち帰っても、それが使えるかどうかも分らんのだ!」
「とにかく、時間がないのだ!スクラップ殿!!」
「もぐ、もぐ・・・」
「ぞうでずよ、ズグラップ殿」
「実物のゼラディブムを調査じてみないど、ぼんとうに反重力のぎんぞくなのか、ばかりまぜんもの」
「そ、そうじゃぞ!そう言いう事なのだ!」
(いや、食べるかしゃべるか、どちらか一つにしてくれんかな?)
何を言っているのかよく分からないルミナテス様に、ちょっと困った顔をしているダレス様を、面白そうに見ていたオリビアですが、ふと、ある事を思い出しました。
「もぐ、もぐ・・・」
(あれ?セラディウム?)
(なんか、どこかで聞いたことがあるなぁ・・・)
(あっ、あれか!カレンさんの胸当て!)
ズズズ~~~・・・
ゴックン!
思い出したオリビアは、口の中のお菓子をお茶で流し込むと、大きな声で言いました。
「セラディウムなら、あるで~!」
「うち、持っている人、知ってるし~!!」
「「「「ええ~~~っ!!?」」」」
突然のオリビアの発言に、ダレス様をはじめ会場にいた者達は一斉に驚きの声を上げましたが、またしても一人だけ様子のおかしな神様がいます。
あまりの驚きに、お菓子を口いっぱいに頬張っていたルミナテス様が、喉を詰まらせてしまったのです。
「んぐ!?」
「ん、ん、ん、ん~~~~っ!」
「あわわ!ルミナテス様、お茶!お茶!」
顔を真っ赤にして苦しんでいるルミナテス様に気付いたオリビアは、慌ててお茶を差し出しました。
「ルミナテス様、お菓子をほおばり過ぎや!」
「ぷはぁ~!」
「ぜえ、ぜえ・・・」
「し、死ぬかと思いましたわ!」
(いや、この前も死にかけたやん!)
(ちょっとは学習してえな~)
「ごほっ、ごほっ・・・」
「オ、オリビアさん、セラディウムがあるって、どういう事ですか?!」
顔を真っ赤にしたルミナテス様が、オリビアの肩に手をかけて、せき込みながら尋ねました。
「カレンさんが、セラディウムで造られた胸当てを装備してはるねん!」
「ほら、前に話した、漆黒の騎士!」
「その騎士からもらったって、言うとったで~!」
「ほ、本当ですか?!」
「オリビアさん、その胸当てを調べさせていただけませんか?」
「これは、この世界の生死に関わる、大事な事なのです!」
あまりに力を込めてオリビアを揺さぶったので、オリビアの持っていたお茶が全部こぼれて、ルミナテス様の服がビショビショになってしまいました。
「わ、分かりました、分かりましたから~」
「では!行きましょう!!」
「わたくしが、その本人に会って確かめます!!」
「えっ?」
「い、今からですか?」
「そうです!一刻も早く、真実を確かめなければ!!」
「そう言う事ですのでダレス様!ちょっと下界へ行って来ますわ!」
「お、おう!よろしく頼むぞ、ルミナテス!」
「では、こちらは急いでアルテミス号の復旧に全力を尽くすとしよう!」
「衛兵!スクラップ殿を例の場所へ案内いたせ!」
命令された衛兵たちが、技術と創作の神様と、恋を取り持つ神様を連れて行くのを見たオリビアが、慌てて追いかけました。
「ちょっと!ちょっと!待ってえな~!」
「うちはその二人に、話があるねんから!!」
オリビアは衛兵の前に立ちはだかり、二人の神様を引き渡すように文句を言い始めました。
すると衛兵たちも、自分たちより身分の高い大天使のオリビアにビビッて、どうするか迷っている様子です。
「「ま、まずいの!!」」
それまで行くのを渋っていた二人の神様は、オリビアが衛兵に自分たちを引き渡すように言っているのを見ると、慌てて命令しました。
「こりゃ!はよう連れて行かんか!」
技術と創作の神様が、衛兵たちに急ぐよう命じると、恋を取り持つ神様も慌てて言いました。
「宇宙船の復旧が遅れたら、お前たちの責任になるのだぞい!」
「ダレス様に叱られてもよいのか?!」
「「「「はは~~っ!ただいま!!」」」」
衛兵たちはオリビアの行動を阻止し、急いでアルテミス号を格納している部屋へ、二人の神様を連れて行きました。
「あ~~~っ!こら~~~っ!!」
「なんで、逃げるねん!」
「戻ってこ~~~い!!」
ギイ~~~ッ・・・バタン!!
重厚な格納庫の扉の中に、二人の神様は逃げ込んでしまいました。
『関係者以外立ち入り禁止』と書かれた扉の前には、武装した衛兵4人が部外者の立ち入りを厳しく制限しています。
「もぉ~~~~っ!」
「また、逃げられてしもた~!」
オリビアは、じだんだを踏んで口惜しがりました。




