第百十六話 解明されたアトラーの予言書(二)
「ダレス様、残り2つの予言書ですが・・・」
そう言うと、ルミナテス様はアトラーの予言、第二節を読み上げました。
『邪悪な影がデプロスの地に落ち、再び光と闇を取り戻しとき、封印されし魔城の扉は開かれ、破滅の時が動き出すであろう』
「これは前にお話しした通り、ザキュエルが天地創造の杖を奪って完成させ、封印された魔城マドロを復活させれば、破滅の時が訪れるという意味です」
「うむ、そうであったな!」
「では、アトラーの予言、第三節ですが・・・」
『だが至らぬ者が手にした時は、救いはわが友にあり、光と闇に守られし隠された友を尋ねよ。さすれば道は開かれん』
「実は、初めは月におわす、あの御二方の力を借りる事だと考えていたのですが・・・」
「うむ、わしもそう思っていたが、違うのか?」
「はい、まだ確かではありませんが、光りと闇というのは、あの御二方で間違いないでしょう」
「ですが『隠された友』というのが、よく分からなかったのです」
「ところが、アナザームーンの存在が明らかになった事で、解釈が変わりました」
「つまり、隠された友とはアナザームーンの事であったと?」
「はい、光りと闇の御方のおられる月に隠された、アナザームーンを尋ねよと言う事ではないのでしょうか?」
「うむ、それならつじつまが合うな!」
「ええ、きっとアナザームーンに、何か別の意味が隠されていると、わたくしは思うのです」
「うむ、カオスの存在以外に、何かあると申すのだな?!」
「はい!」
「幸いプラネットルームの星々は、本物の星と同じ成分で造られています」
「ですので、それを調べれば、何か手掛かりが得られるかも知れません」
「早急に調べてみますわ!」
「うむ、分かった!」
「引き続き天界の者達を総動員して、惑星直列の完成する正確な日と、アナザームーンに隠された謎を解明するのだ!」
「頼んだぞ!ルミナテス!!」
こうして、天界の総力を挙げた調査が開始しました。
その頃オリビアは、もぬけの殻となった、技術と創作の神様の家に来ていました。
「あ~~~っ?!」
「誰もおらへんやんか~~!!」
「もぉ~~っ!逃げられたぁ~~!」
「もぉ~~っ!!」
神様たちが逃走を図った事に気付いたオリビアは、じだんだを踏んで口惜しがりました。
ヘーベル歴252年1月下旬。
プラネットルームが完成してから一月ほど経った頃、天界に大きな動きがありました。
天使たちが、あちらこちらでバタバタと走り回っています。
「あ~っ!技術と創作の神様みっけ!!」
炎の神イグナート様の家で、恋を取り持つ神様と一緒に酒盛りをしていたスクラップ様の元に、1人の天使が飛び込んで来ました。
「おっ、何じゃ?ルミナテス殿お付きの天使ではないか?」
「もぉ~!技術と創作の神様!」
「この大変な時に、昼間からなにお酒を飲んでいるのですか!」
「いや、わしはちょっと、家に帰れぬ理由があって・・・」
「もう!ダレス様が、あなた様を捜すように、全天使に命令を出されているのですよ!」
「な、何じゃと?わしを指名手配しておるじゃと?」
横でこの話を聞いていたイグナート様が、心配して声をかけました。
「おぬし、いったい何をしでかしたのだ?」
「わしは、何にもしておらんぞ?」
「というか、ここでずっと酒を飲んでおったがな!」
「おぉ、そうだった!」
「まさか!オリビアのやつが、ダレス様に頼んで指名手配を?」
恋を取り持つ神様が、慌ててお付きの天使に尋ねました。
「はぁ?何を訳の分からない事を言っているのですか?!」
「酔っ払ってないで、シャキッとして下さいませ!」
そう言うとお付きの天使は仲間を呼んで、技術と創作の神様をダレス様の元へ連行して行きました。
「何か知らんが、酒を飲んでおる場合ではないな?」
恋を取り持つ神様とイグナート様も、赤い顔でフラフラしながら後を追いかけて行きました。
「おっ、やっと見つかったか!ご苦労であった!」
技術と創作の神様がダレス様の神殿に着くと、すぐに会議が始まりました。
会議室には既に主だった神々が集まっています。
「この度のプラネットルームの復活により、重大な事が判明したのだ!」
「では、ルミナテスよ、よろしく頼む」
「はい!」
「みなさん、アトラー様の予言書が解明され、ザキュエルの企てが明らかになった事は、既にご存じですね?」
「再びこの地にカオスを呼び戻すことじゃな!?」
「本当に、そんな事が出来るのか?」
神々はダレス様からザキュエルの陰謀を聞き、戦々恐々としていました。
「そうです!惑星直列の日に、天地創造の杖の力で、アナザームーンからカオスを呼び戻す計画です」
「そこで惑星直列が始まる日時を計算しました」
「おぉ!それが分かったのか?!」
「いつじゃ、いつ、その現象が起こるのじゃ?!」
「まさか4~5日先とかでは、あるまいな?」
みんなヒヤヒヤしながら、聞き耳を立てています。
「惑星が一直線に並ぶまで、あと2年です!」
「正確には、人間の暦でヘーベル歴254年2月5日に起こります!」
「なんと、そんなに早く!?」
「たった2年しか余裕がないのか!」
「どうすれば良いのじゃ?」
「対策はあるのか?」
予言の日が確定したことで、動揺した神々は、口々に今後の事を尋ねました。
「落ち着いてください!」
「対策は見つかりました!」
「「「「おぉ~~~っ!さすがはルミナテス殿!!」」」」
「して、その対策とはいかに?」
「対策は、アナザームーンに行く事です!」
「「「「えぇ~~~~~っ!!?」」」」
「そ、それは、どういう事ですかな?」
「アトラーの予言書に、『隠された友を尋ねよ。さすれば道は開かれん』と書かれています」
「そこでわたくしは、アナザームーンにある物質について調べてみました」
「そして見つけたのです、アナザームーンだけにしか無い、ある特定の物質の存在を!」
「そ、それは一体?」
「その物質は『セラディウム』という金属です」
「「「「「おぉ~~~っ!」」」」
「それで、それはどの様な金属なのですか?」
「それが対策と、どのような関係があるのじゃ?」
「アトラー様が残された文献の中に、月には魔法に干渉されない物質が存在すると記されていました」
「わたくしは、このセラディウムが、重力に干渉されない物質であると考えます」
「つまり、天地創造の杖の重力操作を跳ね返す、反重力の物質なのではないかと・・・」
「実際にそうであるなら、それはすごい事だ!」
「天地創造の杖にあがなう事が出来るとは!」
「これでザキュエルの野望を打ち砕く事が出来ようぞ!」
「だが、本当にそのような金属なのか、確証はないのだろ?」
「もし、違っておれば、どうするのじゃ?」
会議場から安心する声が次々に上がりましたが、それと同時に疑問を抱く声もたくさん上がりました。
ですが実物のセラディウムが無ければ、議論になりません。そこで、とにかく今できる事をするしか無いと言う事で、一旦話は落ち着いたのですが・・・。
「で、アナザームーンまで、誰が行くのだ?」
「というか、どうやって行くのだ?」
「あれじゃろ?アナザームーンに行けたとしても、そこにはカオスが蔓延しておるのではないのか?」
「まさに、命がけの旅になるではないか!」
とうとう会議室は大騒ぎになりました。
そして、このややこしい時に、今度はオリビアが飛び込んで来たのです。
「あ~~~っ!!」
「恋を取り持つ神様と、技術と創作の神様み~つけた!!」
「「ひえ~~~~っ!!」」
二人の神様は、慌てて逃げ出そうとしますが・・・。
「衛兵!!二人を逃がしてはならん!!」
「取り押さえよ!!」
「「「はは~~っ!!」」」
ダレス様が大声で命令しました。




