第百十二話 水光のアルフェリナ(一)
急いでギリガンの家に戻ったカレンは、魔女ママにマグナ・グラビティの魔法書を見せました。
そして漆黒の騎士が言っていた、もう一つの魔法について尋ねます。
「なるほど・・・」
「ブラックホールとホワイトホールを作れても、天地創造の杖と同じ事は出来ないと?」
「うん!」
「あと、もう一つの魔法がいるんだって!」
「ふむ、ふむ、なるほど!」
「その魔法は、カレン嬢もよく知っている魔法だというのじゃな?」
「そう、そう!」
「しかも、経験した事があると・・・」
「そうなのよ!」
「すごいねぇ!何でもお見通しなのじゃな?」
「うん、そうなのよ!」
「あっ!でも師匠は、オレを付け回している変態じゃないよ!」
「そう言ったら、すごく怒っていたから!」
「そりゃ、怒るさね!」
(そんな事が出来るのは、恐らく神様だけさね!でも、いったどの神様が・・・)
「カレン嬢、答えはもう分かったよ」
「えっ、本当に?」
「それは、あたしの使うアストラルゲートさね!」
「えっ、そうなの?!」
「カレン嬢、ブラックホールとは、すべての物質を引き寄せて、飲み込む力を持っているさね」
「それは光でさえ、引き寄せられて逃げる事が出来ないほどの力でね!」
「逆にホワイトホールは、すべての物質を吐き出す現象さね」
「ブラックホールで吸い込んだ物質を、ホワイトホールで吐き出すには、時空の狭間で繋げる必要があるのさ」
「じゃあ!フレディアがブラックホールと、ホワイトホールを作れるようになったら!」
「勿論、あたしのアストラルゲートを、授けてあげるさね!」
「やった~~!!」
「魔女ママ大好き!!」
カレンは嬉しさのあまり、モルティナをギュッと抱きしめました。
(ムギュッ!ぐ、ぐるぢい・・・)
(い、息が・・・・)
(あぁ、でもこのままこの娘に抱かれて死ねれば、本望かも・・・)
「カァ~~~ッ!!」
「アネゴひどいでやんす!」
「今度は樹海の魔女様にもギュッてするなんて!!」
「あっしにもして欲しいでやんす!!」
「あっ、コル助!」
「ぷは~~~っ!死ぬかと思ったわ!死ねないけど・・・」
「コル助、フレディアの居場所は分かったの?」
「分かったでやんす!」
「フレディア嬢は、ルナ嬢とカーナ譲と一緒に、教会へ行っているでやんす」
「教会へ?」
「あっ、やっとルナが、セレイヤ様の加護を授かる気になったんだわ!」
「でも、どうして今まで避けていたんだろ?」
「加護を授かれば、強くなれるのに・・・」
「アネゴ!あっしにも、ギュ~ッって・・・」
「しないけど?」
「ガ~~~ン!」
フレディア達は教会に祭られている、セレイヤ様の石像の前にいました。
そこでカーナに言われた通り、ルナは悲劇のハープの演奏を始めました。
美しいハープの音色が、聖堂に響き渡ります。
「いつ聴いても、ルナの演奏は素晴らしいね!」
カーナは目を閉じて、聴き入っています。
するとしばらくすると、セレイヤ様の石像が黄金色に輝き始めました。
「あっ!降臨なされたわ!」
輝きが消えると、そこにはセレイヤ様の姿がありました。
「素晴らしい演奏でした」
「まさにそのハープの奏者にふさわしい、心揺さぶられる旋律・・・」
「あなたがカーナの申していたルナですね?」
「はい、セレイヤ様」
「セレイヤ様の加護をいただきたく、参りました」
ルナの挨拶が終わると、カーナも口添えしました。
「セレイヤ様、どうかよろしくお願いします」
「わかりました、約束通りわたくしの加護を授けましょう」
セレイヤ様はそう言うと、かしずいているルナの額に手を当て、眩い光を放ち始めました。
ところが、セレイヤ様は突然儀式を中断し、少し驚いた様子でルナに話しかけました。
「あなたは、すでに水の精霊の力を持っているのですね?」
「はい、水の精霊セーラムから加護をいただいております」
「しかも、それだけではありませんね」
「あなた自身が精霊だったとは・・・」
「「えっ!?」」
セレイヤ様の言葉を聞いたフレディアとカーナは、驚きの声を上げました。
そしてフレディアが尋ねます。
「セレイヤ様、それは何かの間違いではありませんか?」
「ルナは、元は金色の白鳥だったのを、バズエルが力の杖で人間の姿に変えたのでは?」
フレディアの発言に、セレイヤ様は笑みを浮かべて答えました。
「ええ、そしてどこぞの神が、本当の人間に変えたようですわね」
「フレディア、違いますか?!」
「えっと・・・それは・・・」
フレディアは、自分がセレノス様を脅して、ルナを人間にしてもらったとは言えず、黙ってしまいました。
しかし、その言葉にビックリしたのはカーナです。
「え~~~っ!もしかしてフレディア!」
「その事を知っていたの?」
(あ~~っ!もうダメだ!バレちゃった・・・)
「ごめんカナちゃん!」
「わたしがセレノス様にお願いして、ルナを人間にしてもらったの・・・」
「え~~~っ!」
真実を知ったカーナは、驚き過ぎて、言葉を失ってしまいました。
「ごめんなさい、セレイヤ様!」
「わたしが無理やりお願いして、ルナを人間に・・・」
「だからセレノス様は悪くないのです!」
必死に謝るフレディアを見たセレイヤ様は、声を出して笑い出しました。
「安心しなさい、フレディア」
「わたくしは、誰も咎めたりはしませんよ」
「なるべくして、そうなったのでしょう?」
「ルナよ、あなたの口から説明してくださいますね?」
「その決心が付いたから、わたくしの加護を受けに参ったのでしょ?」
「はい、セレイヤ様!」
「わたくしは天界におわす四季を司る女神、ヴァレスティア様に仕える『歌声の精霊』でした」
「四季を告げる歌声を、風に乗せて運ぶのが、わたくしの役目なのです」
「そして天界の花園で、いつものように、四季を愛でる歌を歌っていた時でした」
「たまたま近くを通りかかった大神ダレス様の目に留まり、好意を抱かれるようになったのです」
「それから幾度かダレス様が訪れ、お話をするようになりました」
「ですが、その事を知ったダレス様の奥方であるレトナ様に疎まれ、白鳥の姿に変えられたわたくしは、天界から追放されたのです」
「女神レトナ!!?」
その名前を聞いた瞬間、フレディアの顔色が変わりました。
それは今まで誰にも見せたことの無い、怒りに満ちた顔でした。
「またしても、あの女神の仕業なの!?」
「ちょっと、フレディア!セレイヤ様の前で!」
カーナが慌てて止めようとしますが、フレディアの怒りは止まりませんでした。
「許せないわ!あの女神だけは許せない!!」




