第百十一話 胎動(四)
「カア~~~~~ッ!!」
ボン!
シュルルル・・・
「オレ様の名はコルヴァス!」
「カラスの王様だぞ!カァ~~~ッ!!」
スルッ!
コルヴァスをサラリとかわしたその者は、イレーネの元へ向かいます。
「やあ、久しぶりだなイレーネ!」
「ずいぶんと大きくなって、驚いたよ!」
「お久しぶりですね、漆黒の騎士殿!」
「へっ?」
「ちょっと、ちょっと、イレーネ様!」
「こちらの方は知り合いなんでやんすか?」
「あぁ、この御方はママの師匠だよ!」
「ええ~~~~っ!!?」
「ア、アネゴの師匠~~?!!」
「コル助、この事をママに伝えてちょうだい」
「へ、へい!」
「合点承知の助~!!」
コルヴァスは大慌てて飛び去りました。
「た、た、た、大変でやんす~!アネゴ~!」
「あっ!コル助、お前、また大きくなって・・・」
「それどころじゃ無いでやんす!」
「ペガサスに乗った騎士が来てるでやんすよ!」
「なに?!」
「アネゴの師匠と言って・・・」
最後まで話す前に、カレンはコル助の胸ぐらを掴むと、激しく揺さぶり問い質します。
「漆黒の騎士だろ?!」
「どこ!?」
「どこにいるの?!コル助!!」
「ひぃ~~っ!」
「いま、イレーネ様と話しているでやんす~!」
「広場だな!!」
そう言うと、カレンは慌てて飛び出して行きました。
「なんか騒々しいね?」
「おや?何で倒れているんだい、カラス王?」
外が騒がしいので様子を見に来たモルティナは、すっ転んでいるコルヴァスを見て驚いています。
「カァ~~~ッ!」
「師匠が来たって言ったら、アネゴがすっ飛んで行ったでやんす~!」
「ありゃま!ナイスタイミングだね?」
「師匠~~~!!!」
「おっ!ひさし・・・」
ザイラを見つけたカレンは、猛然と駆けてくるなり、いきなり抱き付きました。
ガバッ!!
「うわっ!お前なにを・・・」
「師匠~!会いたかったぜ~!」
「わ、分かったから、とにかく離れろ!」
「あっ、ごめん!」
「つい、嬉しくて~!」
「あっ!だけど、変な意味じゃないぞ?」
「わ、わかっておるわ!」
「お前のお目当ては、これだろ?」
そう言うと、ザイラは美しい装飾の施された一冊の魔法書を差し出しました。
「えっ?師匠、この魔法書は?」
「マグナ・グラビティの魔法書だよ」
「これが欲しかったのだろ?」
「えっ!!」
「な、な、な、なんで知っているんだよ?」
「オレが、喉から手が出るほど欲しかった物を?!」
「あっ!」
「さては師匠!オレのことを、隠れてずっと見ていたのか?」
「ひょっとして、変態なのか?」
「バ、バカを言うな!!」
「そんな事を言うなら、もうやらんぞ!」
「あ~~っ!うそ!うそ!」
「冗談だってば~!!」
「私は言っただろう?」
「必ず、モルグデウスとザキュエルから世界を救えと!」
「そのために必要な物だから、こうして届けに来たのだ!」
「ありがとう!師匠~!!」
ギュッ!!
「うわっ!だから抱き付くな!」
「他人が見たら、誤解するぞ!」
羨ましそうに見ているコルヴァスに気付き、ザイラは気まずそうに言いました。
「う、うらやましいでやんす!」
「あっしにも、して欲しいでやんす!」
「あっ!」
「コル助か、ちょうど良かった!」
「コル助、フレディアが今どこにいるのか捜して来てよ!」
「捜して来たら、あっしにもギュッてしてくれるでやんすか?」
「しないけど?」
「ガ~~~ン!」
「行ってくるでやんす・・・」
「コル助!身体を小さくして行けよ!」
「カァ~~~ッ!」
「ところでカレン、ひとつ教えておいてやろう」
「このマグナ・グラビティを極めれば、ブラックホールを作る事が出来る」
「そして、光りの魔法を極めた者なら、それの応用でホワイトホールも作る事が出来るのだ」
「えっ!じゃあ?」
「ザキュエルが使った、魔法を奪って攻撃する事も?!」
「いや!」
「あれは、天地創造の杖だからこそ出来る、恐るべき技なのだ」
「なんだ、そうなのか・・・」
「だが、諦めるのは早いぞ!」
「えっ!杖が無くても出来るの?」
「できる!」
「ただし、同じことをやってのけるには、もう一つの魔法が必要になる」
「師匠!その魔法とは、いったいどんな魔法なの?」
「お前の良く知っている魔法だよ!」
「えっ?」
「すでに経験しているだろう?」
「え~~~~っ!」
「ではな、カレン!」
ザイラはカレンに魔法書を手渡すと、シルヴェインにまたがり、飛び立っていきました。
「あ~~っ!ちょっと!!」
「最後までちゃんと、説明してよ!!」
「師匠~~!!」
「大変だ!すごい事を聞いちゃった!」
「急いで魔女ママに報告しないと!」
「イレーネ、コル助が来たら、魔女ママの所に居るって言ってね!」
「わかったわ、ママ!」
カレンは魔法書を抱え、慌てて走って行きました。




