第百十話 胎動(三)
ゴ~~~~~~ッ・・・・・・・・
ザッパ~~~~~~ン!!!
ザ・ザ・ザ・ザ・ザ~~~~~・・・・・・・
ザイラは、荒れ狂う冬の海の上空にいました。
眼下には、海からの冷たい風が吹き荒れる極寒の地で、休む事も許されずに働く人たちの姿が見えます。
「何という事だ、入り江の封鎖がほぼ完成しているではないか?!」
「海底の魔城マドロが復活するのは、もはや時間の問題だな・・・」
「こうしてはおれぬ!」
「行くぞシルヴェイン!光の如き速さで駆け抜けよ!」
ザイラはペガサスに命じると、あっと言う間に西の空に消えて行きました。
ヘーベル歴251年12月下旬。
今年も残りわずかとなった、アルガの町では・・・。
「ねえ、魔女ママ!オレの記憶を呼び戻す魔法ってないの?」
「それか、強制的に知りたい記憶を呼び出す方法とかさぁ~!」
「ねえ~!魔女ママ~!」
今日もカレンが、モルティナに無理難題をお願いしていました。
「いや、そんな都合の良い魔法は知らんがな~」
「それより、仲間のみんなが会議を開いているさね!」
「カレン嬢は行かなくてもいいのかい?」
「いいの!」
「オレは今、フレディアの事しか考えられないんだから!」
「はぁ~~っ・・・」
「困ったねぇ・・・」
大魔女モルティナも、カレンの相手でほとほと疲れている様子です。
頼りにされるのは嬉しいのですが、その期待に応えられないのが辛いようですね。
食堂には、すでに主だった仲間が集まって、会議が開かれていました。
そして食堂のテーブルの上には、赤々と燃え盛る小さな物体が宙に浮いています。
「これがヘリオスの涙なのですか?」
シルヴィーが、不思議なその物体を見てカーナに尋ねました。
「そう!バルモスの監獄から救出した、ブランシェ村の長老が持って来てくれたの!」
「それで、これをオリビアに天界に持って帰ってもらうんだけど~」
「ちょうどいい機会なので、次の目的の『セレスフィア様の泉』の探索について、話し合おうと思って・・・」
「それで、行くメンバーなんだけどね」
「フレディアとカレンは、ちょっと無理みたいなの・・・」
カーナの言葉を引き継ぎ、オリビアが困った顔で言いました。
「そうやねん、フレディアの調子が良くなくて・・・」
「カレンさんが、何とかしようと必死にやってくれてるから、ここは任すしかないわ!」
「でも主力の二人と、オリビア様まで抜けるとなると、戦力的に結構きつくない?」
スージーの言葉に、ポンポンがペッタンコの胸をググッと張って答えました。
「それなら、心配ないぞ!」
「わしがついておるからのお!」
「あっ、ポンポンは新しい妖精と契約したんだったね!」
「そうじゃぞ、スージー!」
「だから、安心して良いぞ!」
「はい、はい!頼りにしてるね!」
(いや、頼りになるのは妖精で、ポンポンじゃないだろ!)
ロックがボソッと心の中でつぶやきました。
とは言え、やはり主力の3名が抜けるとなると、みんな少なからず不安を感じているようです。
その様子を察して、ルナが口を開きました。
「それでしたら、わたくしもフレディアの代わりが務まる様に、頑張らなくてはなりませんね」
「カーナ、わたくしに、セレイヤ様の加護を授けていただけるかしら?」
「あっ!やっとその気になってくれたの?」
「ずいぶん渋っていたから、もうダメかと心配していたのに・・・」
「じゃあ、あとで教会へ行きましょう!」
「ええ、お願いするわね」
ルナが決心してくれたおかげで、カーナの声も少し明るくなったようです。
「それじゃぁ、メンバーを決めるね!」
探索チームのリーダーには、ルナが選ばれました。
そしてサブリーダーはカーナです。
同行するメンバーは・・・。
土の女神テレシア様の加護を持つスージー。
炎の神イグナート様の加護を授かったシラ。
ゴーレムマスターのロック。
二人の精霊と契約を結んだ、召喚士ポンポン。
以上の4名が選ばれました。
「シルヴィーには悪いけど、残ってフレディアを支えてあげて欲しいの」
「いま、すごく落ち込んでいるから・・・」
カーナのお願いに、シルヴィーは快く返事をしました。
「ええ、分かりました!」
「みなさんが帰って来る頃までには、きっと元気にしてみせますわ!」
シルヴィーの言葉を聞いたオリビアは、切実な思いで言いました。
「ほんまに、頼むでシルヴィー!」
「あの子に元気が無かったら、うちらも力がでえへんから!」
「それと、うちは天界に帰って、フレディアのことを神様から聞き出すわ!」
「技術と創作の神様と、恋を取り持つ神様なら、きっと何か秘密を知っているはずやわ!」
「うん、頑張ってね、オリビア!」
「カナちゃん、まかしとき~!」
「じゃあ!うちは一足先に行くわな!」
そう言うとオリビアは、ヘリオスの涙を持って天界へ帰って行きました。
「じゃあ、今から計画を立てようか!」
「セレスフィア様の神殿のある場所は、とても危険な場所らしいので、今度はしっかり情報を集めないとね!」
セレスフィア様の神殿があると思われる場所は、リヴァーヘイムとカルカラッサの町の中間にある、オルフェオン王墓群の中にあると言われています。
周りにあるフォルカノス火山帯は、いまでも炎と有毒な煙を噴き上げる、まさに地獄のような所なのでした。
カーナは大きな地図を広げて、入念な計画を立てて行きました。
その頃町の広場では、イレーネとコルヴァスがくつろいでいました。
「カァ~~~ッ!!」
「退屈でやんすね、イレーネさま~っ!」
「お前はフクロウを、グリーンホロウの森まで送って来たばかりでしょ?」
「疲れていないのかい?」
「あっしは、体力だけが自慢なんでさぁ~!」
「あっ、そうでやんす!」
「グリーンホロウの町へ行く先々の森で、仲間のカラスに、何かあればあっしに連絡するよう、頼んでおいたでやんす!」
「それとグリーンホロウの森のカラスにも、アネゴの仲間たちの動向に何かあれば、あっしに連絡するように言っておいたでやんすよ!」
「ほぉ!それは素晴らしい!」
「よくやったね!ママが聞くと、きっと喜ぶよ!」
「カァ~~~ッ!!」
「本当でやんすか?」
「じゃあ、ちょっと行ってくるでやんす!」
「!!!」
「コル助待ちなさい!」
「えっ?」
「上を御覧なさい、コル助!」
「ゲゲッ!!」
「あ、あれはヤバイっすね~!!」
「何者でやんすか?」
「ふふふっ・・・」
「お前でも、あの者のヤバさがわかるのですね?」
「も、もちろんでやんす!」
「アネゴの時は、まったく殺気を感じなかったから、ヘマをしてしまいやしたが・・・」
「あれは、マジでヤバイでやんす!」
「こちらに来るよ、コル助!」
「あっしもカラス王でやんす!」
「イレーネ様、もしもの時はよろしくお願いするでやんす!」
そう言うとコルヴァスは、勇敢に向かって行きました。




