第百八話 胎動(一)
ヘーベル歴251年12月中旬。
バルモスの監獄を襲撃してから2週間が経ちました。
捕らわれていた囚人たちも、全員アルガの町の保護施設で新たな暮らしを始めています。
カーナ達も、次の課題である『女神セレスフィア様の泉』の探索に向け、準備を始めたいのですが、肝心のフレディアの体調が、あれ以来優れず困っていました。
「魔女ママ!フレディアはどうなってしまったの?」
「魔女ママ!何か良い薬とかないの?」
「魔女ママ、何か良い知恵を出してよ!」
「魔女ママ!!」
カレンはフレディアの容態が心配でたまらず、毎日しつこく相談するため、モルティナも困り果てていました。
「まぁ、カレン嬢、ちょっと落ち着いて!」
「フレディア嬢は、バルモスの監獄を襲撃する前は、元気だったんだね?」
「うん、すごく元気!」
「で、バルモスの領域に入ってから、あのような状態になったと?」
「うん、そう!」
「う~~~む・・・」
「ルナ嬢の話では、属性検査でフレディア嬢に光属性と、闇の属性が検知されたと・・・」
「おそらく、それまで体内に眠っていた闇属性の力が、バルモスによって呼び覚まされたのだろうね!」
「呼び覚まされたらダメなの?」
「う~~~む・・・」
「そもそも光と闇とは、お互い相反する属性さね!」
「それがいきなり闇の属性が目覚めたことで、身体がうまくコントロール出来なくなったのかも知れないね~」
「魔女ママ、元の身体に戻す事は出来ないの?」
「闇の属性を身体から追い出すって事かね?」
「そりゃ、無理さね!」
「じゃあ、どうすればいいのよ!!」
「魔女ママ!」
「う~~~ん・・・」
「カレン嬢は、毎日ああやってモルティナ様を困らせているんだよ」
「何とかならねえのかな?」
ジャックがポンポンとリーファに相談しました。
「難しい話よのう!」
「わしのように、純粋の闇属性なら良かったのにのぉ!」
「なに言ってんだ!」
「ころっとバルモスに操られて、オレの頭を叩きまくったくせに!」
「フレディアが純粋の闇属性だったら、オレたちは全滅させられていたぞ!」
横で話を聞いていたロックが、ポンポンに文句を言いました。
「な、なんじゃと?」
「わしが操られたじゃと?」
「そんな訳が、あるはずなかろう!」
「じゃあ、なんで縄でグルグル巻きにされていたんだよ」
「うっ、それはじゃな!」
「バルモスがわしの力を恐れて・・・」
「はい、ポンポンの負け!」
「ロックにあやまって!」
「うっ!す、すまんかったのじゃ・・・」
リーファに言われたポンポンは、素直に謝りました。
「うふふっ・・・」
「ポンポンは、リーファちゃんには素直なのね」
ルナが横から声を掛けました。
「それはそうじゃ!」
「わしはリーファに頼り切っておるからの!」
「ポンポン、それは偉そうに言える事じゃねえぞ!」
ジャックがツッコミを入れましたが、ポンポンはまったくぶれません。
それどころか、ジャックの勧誘も始めました。
「なんでじゃ?」
「わしは自分では、なにも出来んのじゃからのぉ!」
「そうじゃ!ジャックもわしと契約せんか?」
「えっ!オイラはモルティナ様の使い魔だからなぁ~」
「契約を結んでおるのか?」
「いや、そんなんじゃねえけど・・・」
「だったら、よかろう?」
「わしと契約したら、カミラに頼んでイチゴ餅をいっぱい食べさせてやるぞ!」
「おぉ~!それはおいしいなぁ!」
ポンポンがジャックを誘っているのを見たモルティナが、声を掛けました。
「いいんじゃないか?」
「ポンポンと契約をしたら、お前も大手を振って妖精の里へ帰れるさね!」
「そうだろ?リーファちゃん!」
「リーファはポンポンと、世界の平和のために戦っているの!」
「契約したら、ジャックも正義の味方になる!」
「いい話じゃないか、ジャック!」
「う~~~ん、モルティナ様がそう言うなら・・・」
「やった~!」
「ジャックよ、待っておるのじゃ!」
「いまからカミラに頼んで、イチゴ餅を作ってもらうのじゃ!」
そう言うとポンポンは厨房に走って行きました。
「魔女ママさん、ジャックがおそばを離れても寂しくないのですか?」
ルナがモルティナに声を掛けました。
「あぁ、大丈夫さね!」
「いまのあたしには、カレン嬢がいるからね!」
「おい、おい!」
「魔女ママ!オレだけじゃないよ!」
「ルナもカーナも、オレの妹なんだから、魔女ママにとっても親子みたいなものさ!」
「ええ、そうですわ!魔女ママさん」
「うっ、うっ・・・」
「嬉しい事を言ってくれるね~」
「それで魔女ママさん、そのわたくしたちにとって、とっても大切なフレディアの事なのですが・・・」
「あぁ、カレン嬢からもフレディア嬢の事は、よく聞いているさね!」
「実は、少し気になる事があって・・・」
「えっ!ルナ、気になる事ってなに?」
「それは、以前ファレディアの属性を測定した時の事ですわ」
「その時に測定した数値なのですが・・・」
「光属性が100の値で、闇属性の数値が30と表示されましたの」
「わたくしは、フレディアの体調が悪くなった原因のひとつとして・・・」
「バルモスに干渉された事によって、この数値に変化が起こったのではないかと思っていますの」
「ルナ、それって・・・」
「ええ、恐らく闇の属性値が大きく変わったのではないかと!」
「そして、もしそうであるなら、わたくしはフレディアの体調を治す方法を知っていますわ!」
「本当かルナ!」
「ええ、カレン!もちろんですわ!」
「でも、それには、魔女ママさんの協力が必要なのですが・・・」
「ルナ嬢、あたしに出来る事なら、何だってやるさね!」
「だよな!」
「よし!フレディアを連れてくる!」
「もう一度測定してみようぜ!」
こうしてフレディアの属性検査をもう一度行うために、ギルドを訪れました。
「フレディア、前にやったように、もう一度測定してみてくれる?」
「うん・・・」
ルナに促され、フレディアはそっと測定器に手をかざしました。
すると属性を知らせる『火』『水』『風』『土』『光』『闇』の水晶玉の、『光』が強く輝き100の数字が表示されました。そして『闇』の水晶玉も強い光を放ち、70の数値が表示されています。
「すごいですわ!以前は30だったのに、倍以上に上がっていますわ!」
「そうか!ルナの言う通り、フレディアの体調不良はこれが原因だったのね!」
カレンは大喜びして、飛び跳ねました!




