第百七話 バルモスの戦い(七)
バルモスに命令された監守40~50人が押し寄せると、瞬く間にカレン達を取り囲みました。
そしてその中の一人、監守長と思われる男が、躊躇なく命令を下します。
「殺ってしまえ!」
命令を受けた5人が、一斉に弓矢を構えた瞬間・・・。
ズキューン!ズキューン!ズキューン!・・・
ルナの発射したクリスタルアクア・バレットで、身体を射抜かれた5人の弓使いは、断末魔をあげる間もなくその場に倒れました。
「なにっ!魔法が使えるだと?!」
「そんなバカな!ここはバルモス様の神域だぞ!?」
「安心しろ!」
「オレは魔法が使えなくなっているよ!」
そう言うなり、カレンは一閃のきらめきと共に、4人の監守を斬り伏せました。
「うわっ!こいつらは化け物だ!」
「先に、あそこで怪しい動きをしている女を始末しろ!」
モルティナを標的にした監守が、剣を振りかざして斬りかかろうとした時、怒ったジャックが魔法を放ちました。
「みんな雪だるまになっちゃえ!フロスト・キス!」
ビュ~~~~ッ!!
ジャックが放った、マイナス50度の息を吹きかけられた監守たちは、一瞬で凍り付いてその場で固まってしまいました。
その横では、コルヴァスの鋭いカギ爪と口ばしで攻撃された、3人の監守が倒れています。
残りの監守も、カレンとルナによってことごとく倒され、最後は監守長一人だけとなりました。
「ひぃ~~っ!」
「何なんだ、お前らは!」
「こんな事をして、ただで済むと思うなよ!」
「ここはバルモス様の支配する神域なのだぞ!」
「どうせお前らは、ここから一生出る事は出来ぬのだ!」
「わっ、はっ、はっ、はっ・・・」
ズバッ!!
「うるせえんだよ!お前!!」
ロックの一撃で、監守長の笑い声は消えました。
「カレンさん、オレの分を残してくれてありがとな!」
「あぁ、さっきロックの分を横取りしちゃったからな!」
「さて、残るはバルモス一匹だな!」
「魔女ママ、計画は進んでいるかい?」
「あぁ、いまアリたちは地下2階まで進んでいるよ!」
「あたしたちも、移動するさね!」
「了解!」
「ロック、オレたちはバルモスを見つけに行くから、牢獄のみんなを頼むよ!」
「いつでも脱出できる準備をしておいてくれ!」
「ジャック!お前も手伝っておあげ!」
「あたしにはカレン嬢とルナ嬢が付いているから、大丈夫さね」
「わかった!」
地下2階へ降りたカレン達を待ち受けていたのは、醜悪な人の顔を持つ大きなコウモリの魔物でした。
群れで襲って来た魔物に、ルナのクリスタルアクア・バレットの連射が炸裂します。
まるで激しい雨が降り注ぐような連射で、一瞬で壊滅させてしまいました。
「すごいなルナ!」
「そんな技、いつ覚えたの?」
「うふふっ!」
「カレン、わたくしもやる時はやりますのよ!」
「いや、それは前から知っていたけど・・・」
カレンとルナが話をしている間に、モルティナの作業が終わりました。
「よし、これで全部の超巨大バクダンオオアリを放ったさね!」
「後は追い詰められたバルモスが、足掻くのを待つだけさ!」
「よし、じゃあ3階まで降りようか」
カレンがそう言った時でした。
「!!!」
「アネゴ!この下の階から、爆発音が聞こえたって言っているでやんす!」
「そうか!」
「バルモスのヤツ、ついに尻尾を出したな!」
急いで地下3階まで駆け下りたカレン達は、攻撃態勢でその瞬間を待ちます。
長い沈黙の時間が続き、そして、ようやくその時が訪れました。
ホッ、ホ~!
「アネゴ、あそこでやんす!」
コルヴァスの翼が指した場所に向かって、ルナがクリスタルアクア・バレットを連射します。
ガ・ガ・ガ・ガ・ガ~~~ン・・・・・・・
壁の岩がどんどん砕かれてゆき、そしてついにバルモスが姿をさらけ出しました。
「グオ~~~~ッ!!」
三本の角を生やした野獣のガイコツに、身体中から無数の根を生やした異形の姿の悪魔は、ルナの攻撃で全身血まみれになっていました。
「バルモス!」
「二度と復活出来ないように、オレのノクターナルソードでとどめを刺してやるぜ!」
カレンの剣が、バルモスの身体を貫くと、見る見るうちに魂を奪い取って行きました。
「ウオ~~~~ッ・・・・」
黒い煙となった身体は、断末魔を残してノクターナルソードの中に消えてゆきました。
「やったさね!」
「さぁ、急いでここから脱出しないと、このダンジョンは崩壊するよ!!」
ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・・・・・・・・
モルティナの言葉が終わると同時に、崩壊が始まりました。
急いで牢獄のある場所へ戻ったカレン達は、神殿まで囚人たちを移動させると、ロックに命じます。
「ロック!壁の岩をぶち抜いて!」
「了解!」
ガ・ガ・ガ・ガ~~~~~ン!!!
ロックは岩に思念を送り、大きな穴を空けました。
外の明るい光が神殿に差し込むと、今度はルナが堀の水を舞い上げてスージーの作った巨大な穴へ注ぎ込んでいきます。
堀の外からその様子見ていたスージーは、ロックウオールの呪文で巨大な土の橋を作りました。
「よし!みんな走れ!」
足が弱って走れない者は、シルヴィーが次々に『おくびょう風』で脱出させていきました。
こうして全員を救出した直後に、バルモスの要塞は、跡形もなく崩れ落ちたのでした。
救助された囚人たちは、護送チームの手によって、アルガの町へと旅立って行きました。
「よし!これで作戦は終了だな!」
一段落ついたカレンは、フレディアの姿を捜しました。
そしてしょんぼりと座っているフレディアを見つけると、急いで駆け寄ります。
「フレディア!大丈夫?」
「怪我はしていない?」
「カレン!」
「わたし・・・」
フレディアはカレンの顔を見ると、大声で泣き出しました。
「うわ~~~ん!」
「ごめんなさい!わたし、なんの役にもたてなかった~!」
「うわ~~~ん!」
「フレディア!」
カレンは大泣きするフレディアを抱きしめると、同じように泣き出してしまいました。
「うわ~~~ん!ごめんよフレディア!」
「オレがもっと早く来ていたら!」
「うわ~~~ん!」
カレンとフレディアの姿を見た仲間たちは、まさに身につまされる思いでした。
そしてこの度のバルモスとの戦いを振り返り、今の自分を見つめ直すきっかけとなったのです。
そしてこれまで、密かに女神の加護を拒んでいたルナの心にも、変化が訪れます。




