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トラギエーディヤと恋  作者: 鍋谷葵
出会いの夏
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14/41

13

 眠りはびっくりするほど深かった。目の前が真っ暗になったと思ったら、すぐに目が覚めた。そしたら、外は明るい。熟睡ってものはすごい。時間間隔をバグらせるんだから。まあ、この部屋の時計は元からバグってるから、一様に熟睡のバグっていう訳でも無いんだけどさ。普段から、時間は、おかしいんだからさ。


「良く……寝た?」


 頭は結構はっきり回るのに、呂律はあんまり回らない。いつもだったら逆だけど、今日は頭が冴える。熟睡が良いっていうのは、こういうところかもしれない。頭が回れば、朝余計に慌てることも無いし、何か忘れ物をすることも無いのだから。呂律は、別に回らなくても良い。家に人いないし。家族が居れば、もちろん別の話だと思う。

 僕はふと、そんな朝のことを思いながら、むくりと起き上がった。喉がイガイガする。やっぱり、冷房を点けっぱなしで寝たのが悪いんだな。けど、冷房を点けてないとまともに寝れないんだから仕方が無い。コラテラレルダメージっでやつだ。必要不可欠なダメージだ。でも、このアホみたいに暑い夏に風邪を引くとロクでも無いことになるから、気を付けないと。ついつい、電気代を親父が払ってるから気にせず使っちゃうんだからさ。

 今度、扇風機でも買ってこよ。ついでに、ドライヤーもだ。今月の振り込み分に余裕があったらだけど。何だか、今月は食費だけで飛んでいく気がするから来月買おう。本当に、定額を振り込んでほしい……。その代わり、電気代を制限されても良いからさ。

 まあ、せっかく爽やかな朝からネガティブなことを考えていたら今日というただでさえ面倒臭い一日が、より面倒臭くなってしまう。

 うん、朝から変なことを考えるのは止めよう。短針は六ってことは、実際は五時か。まだ、珍しく時間はあるし、早めの朝支度を済ませてゆったりとした朝を過ごそう。そしたら、そこはかとなく嫌なことも考えなくて済むだろ。多分だけどさ。


「……布団、上げよ」


 節が固まった体をグッと伸ばして、背骨と腕とをポキポキ鳴らした僕の体から出た言葉は、ビックリするくらい単純な言葉だ。もう少しくらい、ロマンチックな言葉が漏れても良いんじゃないかしら?

 自分のことを自分で言っても、これもまた虚しくなるだけだ。やることをやろう。もれなく合理的な言葉の通りにさ……。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 久々にまともな朝食を作って食べて、夕飯の残り物を詰めた弁当を作って、歯磨きをして、本やらノートパソコンやら適当に選んだDVDやらを学生鞄の中に入れたり、お天道様に母さんを拝んだりしたりした僕は、甚平姿のままごろりと、畳の上に寝転がって、今日明日の天気を意気揚々と伝える女子アナを写すテレビを見る。

 いつも思うけど、どうしてテレビに出てる人はこんな朝っぱらから元気に言葉を発せられるんだろう? とても、僕には理解できないし、実際こんな仕事をやってみろって言われてもどんな訓練を受けても出来る気がしない。いや、やってみれば意外と上手くいくのかもしれないけどさ。


「それにしても、本当に朝? 暑くない?」


 丁度、テレビの中の可愛らしい女子アナが今日の最高気温を告げた。どうやら、今日のお昼は三十五度まで気温が上がるらしい。最低気温は、深夜の十八度らしい。なら、朝のこの暑さは何度なんだろう? 多分、その数字を目にしたら気が滅入る度数に違いない。

 大体、体感としてこんな暑いんだからさ。

 カーテン、開けなきゃよかった。こんな暑い、日光が差し込むくらいならねえ。蝉の鳴き声もうるさいし。蝉の鳴き声は、日光と関係ないか。

 それでも、起きたての身体、完全に覚醒はしているけど活動までは若干のゆるみがあるこの身体に刺すような日光と、耳にうるさい蝉の鳴き声は悪影響だ。安らぎ朝のためには、しっとりとした沈黙が必要なんだから。でも、夏は命が活き活きと動く季節だから仕方ないと言えば、仕方が無い。短い命の最盛期を邪魔するなんていうのは、残酷極まりないことだし。

 ただ、それを考慮してもうるさいことは変わりないんだけど。どんなところに居ようとも、夏の虫の生命は黙ってくれないんだからさ。

 ちょっと、決まったか? いい感じのセリフ回しになったかしら?

 一人で何言ってんだろ。これが、朝のテンション? もしかしたら、昨日の疲れが僕の思考回路をぶっ壊したのかも……。


「いや、壊れてたらもっと変になるんだろうけどさ……。自分が狂ったらどうなるのかは、分からないけど。本気で、怒ったことも無いしさ。親父の時も、半分呆れてたし……」


 そう言えば、僕が本気で怒ったらどうなるんだろう? いいや、昨日僕は怒ったな。あの憑き物に向かって怒ったか……。怒ったというよりも。自分の感情を爆発させただけだな。それが、怒るってことか。意外に僕は、感情に疎いのかもしれない。多分、怒りの感情だけが欠落しているんだろうけどさ。他は、十分備わってる僕は思うよ。そう信じたい。少なくとも、喜んだり、哀れんだり、楽しんだりできる。

 出来るよな……?

 まっ、良いや。僕が、そう思ってるんだから間違いなくあるさ。昨日の夜自分を信じられて、どうして今信じられないことがあるんだろう。無いだろ。僕は、僕の感情を信じるさ。


「あ、そろっと行く時間か……。色々と、やってたら時間が過ぎるのもあっという間だ」


 ぼうっと色々と考えていたら、学校に行く時間が来た。テレビ画面の右上には、オレンジ色でファンシーなフォントが七時五十五分を示している。女子アナは、先輩と同じ苗字の国会議員が、なんだかこうだかのニュースを取り上げている。内容に、興味なんか無い。ただ、先輩を感じただけ。

 重い腰を上げる時だ。学校に行くのは、滅茶苦茶億劫だけど、行かなきゃ何も始まらない。恋も、面倒事も、解決策も、友情も、何もかも。行かなくても得られるものは、あるけど行って得られるものもあるから、例え億劫でも足をテキパキ動かしてアホみたいに暑い道を歩こう。

 登校は、ホームルームが始まる十分前には着くっていうが僕の流儀だ。そうしたら、わざわざ慌てなくて良いからね。せっかく、ゆとりを持った朝を迎えられたんだから学校に行って慌てたら台無しになること間違いなしだしさ。


「行こ」


 億劫な気持ちにけりをつけた僕は、暑苦しさを感じさせる夏用の黒い学生ズボンを履いて、長袖の白いワイシャツを腕まくりして、長くて黒い髪を頭の後ろで結って、丁度八時だ。ずっと元気の良い声で、ニュースやら天気やらを読み上げている女子アナも八時を告げてくれた。

 これにて僕は、学校に行く。

 冷房を消して、ガスの元栓を占めたことを確認して、窓の鍵が閉まってるかをチェックして、いつもより重い学生鞄を持って、タオルを首に掛けて、僕は外に出る。それから、家内安全を願って玄関に鍵を掛ける。


「暑ッツ……。本当に、朝? 二回目だな。くどい」


 燦々とした日差しが、僕を照りつける。

 暑い。

 屋根が作ってくれる影があっても、この暑さなんだから外に出たらもっと暑いに違いない。けれど、僕は燦々と陽光が照りつける道を歩かなければならない。汗がたらたらと今にも垂れて来そうだけど、実際歩いてみれば顔中に垂れてくるんだから、どうだって良い。


「それじゃあ、行ってきます。母さん」


 誰も居ない二○三号室に別れを告げて、天国の母さんに別れを告げて、僕はこの暑い道を歩いて学校に行く。先輩を救うため、憑き物を楽しませるために。ヒントは鞄に、知能は辞書に、あとは運任せで何とかことが運んでくれることを祈ろう。それと、先輩が憑かれていることが誰にも知られないことを祈って。

 数重もの祈りが叶うことを僕は、願う。


「願ってばかりじゃいられないんだけどな……」


 けれど自然の摂理に祈りながら、僕は片道三十分の暑い暑い道を歩いて行く。


「あっ、時計直すの忘れてた……。まあ、いいや今日の夜やろ。あと、今度、婆ちゃん家に行って線香あげに行こう。小一時間で着くし」


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 暑い舗装された道路は、あまりにも長く感じられた。陽炎のゆらゆらが、僕の足取りを重鈍にさせる。基本的にわき道に逸れたりすることも無く、真っ直ぐと歩くだけだけれど、なんだか迷宮に放り込まれたみたいだった。

 けれども、錯覚に曲がりくねった道は終わりを告げる。実際は、真っ直ぐでしかないんだから、歩いていれば着くのは、当たり前だ。でも、そんな当たり前の学校への到着は僕を喜ばせた。友人との再会、憧れとの再会、面倒事との再会、怠さとの再会、その全ては僕を喜ばせる。続々と校舎に入って行く、先輩、後輩、同級生たちも、こんなキザッたらしいことを思ってるけど、実際、本当なんだから仕方が無い。

 それに、学生生活が怠いだけじゃないっていうことは良いことだろう。ただ、手に持つ学生鞄がいつもの数倍重いっていうのが、傷だ。しかも、その要因を生み出している多分、今この世界で一番面倒臭い存在と僕は放課後に会わなきゃならない。それだけは、本当に嫌だ。心が沈む。

 夏の爽やかな朝なのに、それを汚されるっていうのは心外極まりない。憤まんです。


「お! おはよう、あんこ。どうしたの? 何時もは空っぽのカバンの癖に、今日は随分と重そうじゃん」


 学校の正面玄関で、ぼうっと鉄筋コンクリートの校舎を見ていると、後ろから背中を摘ままれた。それから、いつもの通りの言葉をあいつは掛けてきた。この暑いに、良くも他人にかまけてられると思う。僕だったら、ぐったりとして、覇気もへったくれも無いだるっとした挨拶だけで終わるのに。

 いや、その元気の無さが僕の男気が無い理由かもしれない。まあ、無理をして男気なんて見栄を張るくらいだったらそんなものは無くて良いや。

 ともかく、せっかく挨拶をしてくれたのに、それを無下にすることは許されない。もし、無視していい人がいるとするのなら、陽太くらいだ。もっとも、陽太が挨拶を無視するなんてことは無いけど。だから、僕はだるっとした重い口を開いて、夏バテした声で、背後の榊に言う。


「色々と僕にもあるんだよ、榊。それと、何度も言うけど僕は杏子だ。まあ、どっちでもいいや」


「まっ、私にとってそんなことはどうだって良いけどね。あと、本当に嫌だったら確実に拒絶しなさいよ。私は、人の心の痛みを読めるほど器用な人間じゃないからさ。それと、相談したいことがあったら、腹に溜めとかない方が良いわよ。溜めたところでそれが、解決する訳でも無いからね」


「その言葉、ありがたく受け取っておくよ。とりあえず、学校に入ろ。暑い、溶ける、死ぬ」


 怠そうな言葉は、僕に言葉の雰囲気通りの怠さをもたらした。何だか、一気に肩が重くなった気がする。背中も丸くなる。雑踏の音を織り成す人たちが、酷く邪魔に見える。出来れば、落ち着いていて欲しい。金を払ってるわけじゃないから、僕がどうこう思っても意味は無いんだけれどさ。

 胸の内で愚痴を零す僕と違って、榊は相変わらずさっぱりとしている。夏の爽やかさが、全部榊に向かってるみたいだ。けれど、僕の後ろ髪を弄るのは止めて欲しい。癖が付いたら、色々と大変なんだからさ。


「だったら、髪切りなさいよ」


 くるくると人差し指で、僕の髪を弄ぶ榊は、暑さに対するごもっともな言葉を僕に掛けてきた。確かに、榊の言う通り、この髪をばっさり切り落としたのなら、そこそこ涼しいのかもしれない。けれど、やっぱり僕はこの髪が気に入っている。

 なら、榊に言う言葉は、たった一つだ。いつも通りの言葉を掛ければ良いだけだ。


「嫌だね。これは、僕のアイデンティティーだからさ!」


「あっそ」


 怠さの中、渾身の覇気を込めてはなった言葉は、大して榊に影響を与えられなかった。うん、そんな予感はしていたんだ。こいつは、こんな奴なんだからちょっとでも期待した僕が、馬鹿だった。けど、素っ気ない態度を取られるっていうのは、なんだか癪に障る。

 いや、まあ、癪に触ったところで、榊に興味の無いことに興味を持たせることは、史上最も難しいことだからしないけどさ。


「あんこ。こんな暑い所に居たら、あんたの言う通り溶けちゃうから、早いこと校舎に入りましょ。それと、その髪、もうちょっと手入れした方が良いわよ。若干、パサついている。あんたの髪、綺麗なんだから大切にしなさいな」


「分かったよ……」


 でも、なんだかんだ最後に榊は優しい言葉を掛けてくれる。

 少しだけ、素直じゃない僕の友達は、僕の横を通り去って先に生徒玄関へと歩き出した。なら、僕もそれに後れを取らない様に歩こう。前から吹いてきた風は、僕の鼻腔に榊の香りをもたらす。夏の匂いだ。夏の良い匂い。


 重い足を動かして、生徒玄関の数段しかない階段を上っていると、突然後ろから騒ぎが起こった。それは、例えるなら珍しい動物とか有名人が現れた時と同じ騒ぎだ。つまり、何か稀有なものが現れたのであろう。ただ、そんな人とか動物とかが、この学校に現れるとは、到底思えない。動物だったら精々狸、有名人だったら、僕はパッと思い浮かばない。

 けれど、狭義の有名人だったら思い浮かぶ。僕が思う人。絶世の美人は、この学校に在籍しているのだから。多分、その人が現れたんだろう。


「うん? 杏子。あんたの好きな先輩が、白銀の姫様がいらっしゃったみたいよ」


 隣の榊が僕の耳にボソッと呟いてきた。僕の予見は、見事的中した。そして、僕も勢いよく首を後ろに回した。なんたって、あの先輩の登校姿が見えるんだから。普段は、もっと早くに来てるから、滅多に見ることの出来ない先輩の登校姿は珍しい。グキっと首が鳴ったけど、この際そんなことはどうでも良い。ともかく、僕は初恋の人を見る。胸の高鳴り、胸の痛さを感じたいから。

 いいや、そんなのは詭弁なんだ。僕はただ、先輩を見たいだけなんだ。それに、昨日のことも聞きたい。だから、珍しい人を見たいとかいう野次馬の心持ちじゃない。少なくとも、僕はそう思ってる。けれど、多分、僕の心持ちの根底には、綺麗な先輩を見て騒ぐ他の人たちとは違うっていう、選民的な思考があるんだろうと思う。気持ち悪い独善的な思考が、横たわっているんだと思う。所詮、僕も他の人と何も変わらないのに。自意識だけは、変に高いのが酷く醜い。


「うん、そうだね」


 僕は、不自然な沈黙を間に挟んで榊の告げ口に適当な反応を返すと、双眸に歩く先輩の姿を入れた。白銀の髪、透き通るような色白の肌、赤くて綺麗な宝石のような瞳、半袖のワイシャツとスカートからすらりと伸びる四肢、胸部、全てがやっぱり美しい。けれど、僕はそんな先輩を美しい人としては、見れなかった。あの中には、梟が居るんだから。それに、先輩が通るであろう道が、黄色い声と憧れの声と羨望の眼差しと共に、がらりと開いて、本物の姫様が闊歩するように自然と生まれたことも。従者、民衆と貴人の関係の様だ。白いシャツは、どよめいて夏の日差しは眩しく映る。夏だけど、冬の日本海の白波がそこに現れているみたいだ。

 でも、そんな、特別を先輩は望んでいない。先輩は、太平の内海を望んでるはずだ。注目を浴びることすら嫌悪しているあの人が、明らかな特別待遇を好意良く受け取るはずがない。辟易、嫌悪を感じるに違いない。

 気持ち悪いな。どうして、僕が先輩の気分を決め付けるんだろう。今、先輩は顔色一つ変えずに、冷静な面持ちで、凛とした姿勢と表情で歩いているだけじゃないか。真っ直ぐと前を向いて、自分の脇の人たちを見向きもせずにそんな光景を僕は、どうして自分の偏見で片づけるんだ。心底、僕が気持ち悪い。

 心の内に広がるどす黒くて、粘っこくて、腐臭のする後ろめたさは僕の視線を足元へと向けた。榊の告げ口で、高揚し、宝石のように輝いていたと思う先輩に対するあこがれの眼差しも、腐ってしまった。今は、ただ路傍に転がるアスファルト片程度の輝きしかない。つまりは、無。灰色だ。


「あっ、副生徒会長も来たわね」


 ただ、僕の腐りかけた心持ちは、ポッと榊が呟いた言葉で救われた。独善的な酔いの気持ち悪さが、治ることは無いし、瞳の輝きが元に戻ることも無い。もちろん、後ろめたさも消えることは無い。

 けれど……、いや、これもどうせ僕の願望が叶っただけだ。つまり、救われたって言ってもそれも独善に過ぎないんだ。椿さんが居れば、大多数に囲まれる先輩の孤独が和らぐだろうっていう独善に過ぎにないんだ。


「笑った。ホント、あの冷たさと美しさの白銀の姫様はあんたと副会長の前だと笑うわね。あんたは後輩だし、副会長はお転婆で何を考えてるか分からないし、そう思えば当然かもね。あんた達の前だと、白銀は黄金に、どっちも綺麗だけど温かい美しさになるのかも。まっ、あの調子でいけば先輩は笑顔でしょうから安心しなさいな」


 僕の願望は、僕の独善は現実に起こったらしい。完璧に起こったかどうかは、人の感情を読めない僕に判断をつけることは出来ない。けれど、榊の言葉を聞く限り、先輩は笑顔になったらしい。それなら、良い。先輩に一番似合う表情は、沈黙の冷たさじゃなくて、榊が言うような明るい表情なんだから。

 本当に、そこは良かったけど、どうして榊は僕の不安を見抜けたんだろう?


「僕は、お前に不安を感じさせていたかい?」


 僕は、先輩と椿さんの様子を見ないで、視線を榊に向けた。けれど、榊は僕の視線に気付かないのか、真っ直ぐと先輩たちを見ている。それから、随分と素っ気ない声で僕の問いに答える。


「直感よ。とりあえず、行きましょう」


 ぐうの音も出ない返答だ。榊は、踵を翻して、なけなしの日陰よりよっぽど涼しい校舎へと入って行く。それにつられて僕も。枯草は、風にさらわれる。


 




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