第一章3 『師匠の教え』
家庭教師がきた。
名前をクランス・ベルガト・アルファルトといって長耳族だった。純粋なエルフは初めてみるな。
彼はまず俺に開けていて魔法の練習ができる場所がないかと聞いてきた。
という事で、俺たちはいつもの練習場にやってきた。
よしまずは自己紹介だな。
「僕の名前はリアム・アルクトゥルスです。よろしくお願いします」
「先ほども名乗ったが、俺の名前はクランス・ベルガト・シリヌウス。
今日からお前に魔法と魔術を教えることになっている」
「はい、よろしくお願いします」
「さっそくだが、単刀直入に聞く。リアム、お前は何故魔法を習い、力を求める」
んー、そこまで深くは考えたことなかったな。
何故力を求めるか。何故と言われると困るな、魔法はただの暇つぶしから始めたことだし。
ここは当たり障りのない解答をしておこう。
「何故ですか。教養ですかね。一応僕の親は貴族のでなので嗜みというところでしょうか」
「…..教養に嗜みか」
何か気に障ってしまったか。
だが、戦火にあるわけでもないのに力がどうとか言われても困るな。
一応、理由としては適当なはずだ。
「力は生半可に求めるものではない。
お前は大切な人がこのような状況にあっても同じ事が言えるのか?」
「…..助けて、リア」
「ソフィア!!」
何故リアがここに。クランスさんはどうやって今ソフィアを連れて来たんだ。
いや違う、そんなことは今どうでもいい。まずはソフィアを助けるんだ。
「どういう事ですか、クランスさん。何故ソフィアを縛り上げるような真似をしてるんですか」
「聞いているのはこちらだ。何故お前は力を求める」
「そんな話は今どうでもいい!ソフィアから手を離せ!」
たぶん俺は彼には勝てない。だから背後から俺が打てる最大限の魔法を叩きつける。
「水の精霊よ激流の如き力を清流のような静けさを精霊の加護を今我に授けよ
『ウォータースプラッシュ』」
「『術式解体』」
は?魔法がかき消された?
いや、そもそも出てない。出る前に何かされたんだ。
「もういいだろう。ソフィア悪かったな、このような事を頼んで。ケガはないか?」
「うん、ボクは大丈夫だよ」
「いい演技だったぞ。助かった」
え?いや、ちょ、まってどういう事だ。もういい?何が、もういいんだ?演技、演技って何がだ?
「ちょ、ちょっと待ってください。これはどういう事ですか?」
「….そのことはソフィアから後で詳細を聞け。
リアム、もう一度同じ質問をしよう。
お前は何故力を求め、強くなろうとする?」
それはさっき答えたじゃないかそれは教養で嗜みなんだと。
「だからそれは教養で――」
「お前は先ほどソフィアが俺に捕えられていた時、どう思った。
助けようと思ったのではないのか。違うか?
だからこそお前は俺に勝てないと即座に判断し、少しでも時間を稼ぎ、ソフィアを逃すために背後から攻撃を入れようとしたのではないのか。
弱き者には弱き者なりの戦い方があるが、だがそれだけではダメだ。
世の中は皆が善人で常に平和というわけではない。
だからこそいざという時、弱き者でいては大事なものは守れん。
そこにお前の力を求める理由があるのではないのか?」
俺は何か勘違いをしていた。これは暇つぶしなのだと。退屈な日々を埋めるためだけのただの遊びなのだと。
これはそんなものじゃない。
俺の胸の中にはもうその答えがある。
「――大切な人を守るためです!」
「よし、それでいい。
明日から授業を始める。
それとソフィア、お前も一緒に来い今回の礼だ」
「え!いいの、ありがとうクランスおじいちゃん」
「….え?おじいちゃん?」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「…リア、怒ってる?」
「いや、別に怒ってないけどさ….」
「….ごめんね、リア。
ボクおじいちゃんからリアの修行の手伝いをしてほしいって言われて、これをできるのはボクだけだって。
だから嬉しくなっちゃって、でもよく考えたらリアをだますことになるからよくなかったよね」
ソフィアはそんなに俺のこと考えてくれてたのか。 なんかちょっと嬉しいな。
「ありがとう、ソフィア。おかげで大切なことに気づけたよ。これはソフィアのおかげだよ。
ソフィアがクランスさんに協力してくれなかったら僕は生半可な気持ちで魔法を習ってた」
「ほんとう?うふふ、ボクのおかげか~。感謝してよね、リア」
「うん、感謝してるよ、ソフィア」
俺はソフィアを大切な人を守るために魔法を習う。
その信念はブレちゃだめだ。
きっとこの思いはいつまでも俺が魔法を習おうとする限り大切になるんだ。
明日から頑張っていかなきゃな。
「それとクランスさんってソフィアのおじいちゃんなのか?」
「うん!とっても優しくて強くて、ボクの大好きなおじいちゃんなんだ」
そうなのか。あんまり年はいってなさそうに見えたけどあれで意外と100歳とか200歳超えてたりするのかな。
長寿の種族は良くわかんないな。
今度若さの秘訣でも聞いてみるか。俺も長く生きたいし。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
クランスさんの授業が始まった。
初日はまず座学からだ。
いつのまにかいつもの練習場に椅子と机が二個置いてあったので。昨日のうちに用意したんだろうな。
しかも紙とペンまで勉強に必要だろうといって俺とソフィアにくれた。高かったろうに。
クランスさん、いやこれからは敬意を込めて師匠と呼ばせてもらうが、師匠が説明してくれた内容はざっくりとこうだ。
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•魔法属性
火属性 水属性 風属性 土属性
(初級、中級、上級、王級、神級、星級)
闇魔法、光魔法
(この二つは主に魔族と天界人?が使うらしい。未だな謎な部分が多い)
治癒魔術 解毒魔術 アンデッド魔術
•武術
剣星流 龍神流 帝王流
魔法:術式が刻まれておらず基本的に誰でも使用可能
魔術:術式が刻まれていて鍛錬次第では無詠唱で使用可
能だが習得が困難な事が多い
魔力総量:基本的に生まれた時には最終的な魔力総量は 決まっている
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基本的な事を教えてくれたあとはさっそく練習開始と言いたいところだが、最初は属性診断だ。
魔術師として強くなるには苦手な属性も伸ばさないといけないらしいのだが、初めの頃は適性のある属性魔法から伸ばしていくらしい。
「あの、師匠」
「….その呼び方は何だ」
「いえ、僕に大切な事を気づかせてくれたので敬意を込めて師匠と呼ぼうかと」
「….いいだろう、悪い気分はしないからな。それと何だリアム」
悪い気分はしないか。意外と師匠もこういう師弟関係的なのは好きなのかもしれない。
師匠も男だしな。
「先ほど得意属性を調べると言いましたが、どのように調べるのでしょうか」
「ああ、その話はしていなかったな。これを使う」
そう言って師匠が取り出したのは二つの水晶玉だった。
「それは、水晶でしょうか?」
「ああ、これは水晶だが、ただの水晶ではない。魔水晶だ。
これは、ダンジョンの奥深くで取れる貴重な物で、触れると己の魔力に反応して色が変わる」
「では、その色によって得意属性を見分けると」
「ああ、そうだ」
そんな貴重な物を二つも用意していたということは、元々ソフィアにも魔法を教えるつもりだったのかもしれない。
そのソフィアというと、先ほどから黙りこくって、熱心に俺と師匠の会話に耳を傾けている。
可愛いな、耳をはむって噛んでみたい感じだ。
いかんいかん、そんな事をしたらソフィアに嫌われてしまう。
「ソフィア、まずお前からだ。触れてみろ」
「あ!はい、師匠」
「む…師匠か」
あれ、なんか俺の時と違ってソフィアに師匠と呼ばれるのはあんまり嬉しがってないような。
やっぱりおじいちゃんって孫には言ってほしいのかな。
「うあ、すごいよ、リア!色が変わっていってる」
ソフィアは本当にいつも無邪気だな。
それよりソフィアの得意属性は何なのだろうか。
やはりソフィアは水属性なのだろうか?いつも俺が水を出してあげると喜ぶし。
いや、そういうの関係あるのだろうか。
でも、土は似合わないかもな。ソフィアはどちらかというともっと華やかな魔法を使いそうだ。
「リア!見て見て」
「…ん?これは…」
これは、んーなんと表現すればいいのだろうか。
なんというか、青と緑が混じったような感じの色でその上なんかこの水晶初めの頃より光ってないか?
「師匠、そもそもどのようになればそれぞれの属性に適性があると分かるのでしょうか?」
「ああ、すまん。説明して無かったな。
火属性が赤に、水属性が青に、風属性が緑に、土属性が黄色になる。
そして闇魔法と光魔法に適性がある場合は魔水晶が闇に染まるか輝き出す」
へー、そうなのか。あれ、てことはソフィアは風属性に水属性の上に光魔法にも適性があるってことなんか?
「師匠、ソフィアの適性は、水と風そして光魔法にも適性があるということなのでしょうか?」
「ああ、そういうことになるな」
「でも、先ほど光魔法は天界人という方々が使うといってなかったですか?」
「ああ、天界人が独自に創り出し得意として使っていたものだが、別に誰でも使えはする。
ただ、先の大戦で天界人はほとんど滅んだ上に、光魔法の文献も多くが消失してしまった。
だから、多くが解析されてないだけで、使える魔法が全くないわけではない。
その上、そもそも天界人以外で適性がある者がそもそも少ないのだ」
「なるほど」
なんか、それってすごいことなんじゃ。物語の主人公みたいでカッコいいな。
「ソフィア、すごいな、光魔法に適性があるなんて」
「えへへ、すごいでしょ。んふふ~」
「おい、次はお前の番だぞ、リアム」
よし、俺もなんかすごくなってほしい。
あれ、でもこれで俺が一つの属性しか適性がなかったりしたら恥ずかしくないか。
ソフィアは三つも適性があるのに俺は一つとか面目なさすぎる。せめて四は来てくれ。
「…..よん、よん、よん、よん」
「何をぶつぶつ言っているんだ。早く触れ」
神様、お天道様お願いどうか頼みます。どうか四つはください。お願いします。と、俺が目をつぶりお願いしていると。
「リア!見て見て。綺麗だよ、いろんな色がでてきてる!…..あれ?」
「…..ん?」
目を開けたら真っ黒な魔水晶が手のひらの上にあった。
「….師匠これは..」
「….リアム、お前は全属性に適性があるようだ」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
ということで練習が始まった。
まず師匠は火、水、風、土の四種類の初級魔法を教えてくれた。基本的な魔法を習得した後に得意属性を伸ばしていくそうだ。
ソフィアは水と風、俺は話し合いの結果、当分の間は火と水を鍛えることになった。
一週間経って俺とソフィアはあっという間に初級魔法を習得した。
ソフィアは着々と成長していった。特に風魔法の成長っぶりはすごく中級魔法、上級魔法と次々に習得していった。
師匠が言うにはエルフの血が入っているから風魔法が得意なのだろうと。
そんな順調なソフィアと裏腹に俺はというと、さっそく行き詰まっていた。
初級魔法は使えるのだが、中級魔法や上級を使おうとすると魔法が出ない。
いや、詰まったような感じがしてそのまま魔力が消失してしまっているような感じだ。
最初は自分でどうにかしようとしたが、結局師匠を頼ることにした。
師匠はあまりアドバイスをくれる方ではないがいざと言うときは助けてくれる。ということで、俺を見てくれるそうだ。
「リアム、なんでもいい魔法を打ってみろ」
「水の精霊よ激流の如き力を清流のような静けさを精霊の加護を今我に授けよ」
『ウォータースプラッシュ』
ポスッ
やっぱり出なかった。使い始めた頃はこんなこと無かったのに俺って才能ないのかな。
「…..なるほど。リアムお前には今から一つ魔術を教える」
「…え?師匠僕の魔法が出ない原因はわかったんですか?」
「ああ、お前は魔力量が多すぎる。だからコントロールができず、必要以上に魔力を送ってしまい魔法が不発になってしまっている」
魔力が多すぎて魔法が不発になっている。どういうことなんだろうか。しかも俺ってそんなに魔力が多いのか?
「師匠ではどうやれば、できるようになるのですか。まさかお前には魔法の才能がないからやめてしまえとか….言わないですよね」
「俺はそんなことは言わん。やると決めたことは突き通す。
それより、人の話は最後まで聞け。お前にはこれから『操魔の糸』という魔術を使い南京錠を開けてもらう」
「それで、魔力操作を覚えると」
「ああ、そうだ」
俺はどうやら魔力量が多すぎて、魔力操作が感覚的にやりずらいようだ。
だから緻密な魔力操作で魔力操作のやり方を覚えると。なんとも愚直なやり方だ。
「とりあえず、百個の鍵を開けろ」
「…え?今なんと?」
なんか百個開けろとか聞こえたんだけど、気のせいだよな。きっと10個とかと言い間違えたんだ。
「聞こえなかったのか、お前には『操魔の糸』で百個の鍵を開けてもらう」
「え、え〜!」
というわけで始まった俺の地獄の鍵開け月間はそもそもの魔術の習得の難しさもあり一ヶ月ほどかかったのだが、少々地味で面白みがないため今回は割愛させてもらおう。




