第一章2 『友達』
家庭教師が来るらしい。とても楽しみだ。だからといって魔法の練習をしないわけにはいかない。
今は村の小高い山になっている場所で魔法の練習をしている。家を間違えても壊すわけにはいかないし、ここなら誰かに間違えて当たる心配もない。
ここ最近わかった事だが、魔法の威力を制御するには魔法に込める魔力量を調整すればいいらしい。そんな単純なことに気づかないなんて俺もまだまだだ。
魔法の練習は三時間くらいしかできない。魔力が切れるからだ。前よりも多くなっている気がするが、それでもこの程度しかできない。
なのでそのあとは森の近くにいって植生観察をしている。これがまた楽しい。
最近歌を歌いながら咲いている『歌百合』という植物を見つけた。なんと愉快な植物だろう。でもこのまま成長すると食人植物になるというのでおっかない。今のうちに抜いておかなければ。
森の深いところに入ればまだまだ知らない事が沢山あるだろうが、父様と入らないと約束してるのでそれは我慢だ。
「いや、いや来ないで、いや誰か助けて!!」
なんだなんだ森の奥の方から叫び声が聞こえるな。ちょっと様子を見に行こう。けど森の中は入るなと言われてるし、いやけどこれは人助けだ。父様も許してくれるだろう。
入るのは2回目だけど中々嫌な雰囲気だな。早く助けて森を出よう。ていうかどこにいるんだ声の主は?もう少し奥まで行くか。
「グアアおおおおん!!」
いた、女の子が追われてるな。
『刺突猪』か一度父様の狩について行った時に狩り方を教えてもらっておいてよかったな。
「こっちだ。こっちにこい!!」
よしこっちにきたな。落ち着け、そんな難しくないはずだ。父様に教えてもらった通りにやろう。腹に攻撃を入れるんだ。
「水の精霊よ激流の如き力を清流のような静かさを精霊の加護を今我に授けよ」
『ウォータースプラッシュ』
よし上手くいった。女の子は大丈夫か。
「大丈夫ですか?」
「…..うん。…..なんで助けてくれたの?」
「なんで?困っている人は助けるそれが父様から教えてもらったことですから」
「…..ありがとう」
「とりあえず森を出ましょうか」
「….うん」
ずいぶんと怯えているな。見た感じ俺と同じ歳くらいだけど、そもそもなんでこんな森の中にいたんだ?んー森の危なさを知らないのかな。
「とりあえず森を出れたので安全です。
僕が今から水を出しますんで、それで顔の土を落としてください」
「….水をだす?でもここら辺に川なんてないよ?」
「いえ魔法で出すのですよ」
「…..ま、まほう?」
「はい、では
水の精霊よ汝の加護を今我に授けよ」
『ジェネレイティブウォーター』
よし、かっこよく決まった。これは多分友達ができるチャンスかもしれない。これは気を抜いてられないな。
「うぁ〜、すごいね。まほうってなんでもできるの?」
「なんでもというわけでもないんですが学んでいけば色々できると思いますよ」
ん?どうしたんだ、もじもじして何か言いたいんだろうか。
「…..なんで、そんなお父さんみたいなしゃべり方なの?」
ああ、そういうことか。父様と母様に初めての人に会う時はこうしなさいと言われたんだが、何かおかしかったかな。
「ああ、これは初めて会った人にはこうしてるんですよ」
「…..でも、多分ボクたち同じ歳だよね?じゃあもっと仲良く話してよ」
うっ、可愛い上目遣いで頼み事をしてくる。無自覚でやってるのかな、これ。ん〜、これは断れないな。
「わかったよ。それと名前は?」
「ソフィア。……君の名前は?」
「リアム・アルクトゥルス。よろしく」
「うん、よろしく。リアムかぁ、リアム、リア。
んふふ、よろしくね、リア」
可愛い。可愛すぎる。これを無自覚でやってると思うと将来は小悪魔になってそうだ。
「それじゃあソフィア、なんであんな森の奥にいたんだ?」
やばい、ソフィアが泣きそうな顔をして黙りこんでしまった。何かまずい事を言ったか。わからない、友達なんていた事ないからなんていっていいか。
「…..お父さんのお弁当を、届けてて….そしたら、ハリルがお父さんのお弁当を取って、…そしたらお弁当を森の中に投げて…..うわぁぁん」
やばい本気で泣き出してしまった。どうすればいいんだ。どうしよう。いや、いつも母様がやってくれてるようにやればいいんだ。
「大丈夫だよ、ソフィア。大丈夫。僕がついてるから、大丈夫、落ち着いて」
「……リア、リア…..うわぁぁん」
やばいもっと泣き出してしまった。もうわけがわからない。俺はただただソフィアを抱きしめた。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「あのね、ボクね、あんまり友達ができなかったんだ。友達になっても、みんなボクの周りから離れて行っちゃうんだ。……ボクがハーフエルフだから」
そんな事ないよと言いたかったが、多分そんなことあるだろうな。
父様から聞いたことがある。この世界には魔族というものがいるらしい。魔族を見たら全速力で逃げろと言っていた。
長耳族は魔族ではないだろうが村の俺を避けてるクソガキどもにはそんな事関係ないだろう。多分魔族退治とか言って調子乗ってることだろう。
「そんな事ないよ。多分エルフだからとかではなく単に面白がってるだけだよ。…..てかそんな奴らだし」
「……じゃあ、何でボクいじめられてるの?」
「なんで、何でか。んー、多分理由はないと思うよ」
「…..じゃあ、どうやったらやめてくれるの….ぐすっ」
これはまずいな多分またソフィアが泣いてしまう。
「泣くなよ。あいつらに深い理由なんてものはないよ。だから、よし行こう」
「…..行くってどこに?」
「悪者退治だよ」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「ねー、ほんとうに行くの?」
「大丈夫だって。僕強いし」
「…..でも、向こうは何人もいるだよ。….ケガしたら危ないよ」
本当にソフィアは怖がりだな。でも今更辞めるわけにはいかないし、そもそもここでやめてしまったらソフィアへのいじめは止まらない。だからここらで一発喝を入れておくべきだ。
遠くの方にいつも俺を避けてくるクソガキどもがいるじゃないか。よくもソフィアをいじめてくれたな。
「ソフィア、いじめてくるのはあいつらか?」
「…..うん」
よし、とっちめてやろう。そしたらいじめもやめるはずだ。こんな可愛い女の子をいじめるなんて人の心がないのかあいつらは。
「君たちがソフィアをいじめてるのか?」
「お前…あぁ、あの騎士のところのチビか。ていうかソフィアって誰だよ」
「…..お前ら名前も知らない奴をいじめてるのか」
つくづく腹が立つ。名前も知らないやつをいじめていたのか。
何故?いや、自分でいったじゃないか。こいつらはただの遊びでやってるだけなんだ。
「水の精霊よ激流の如き力を清流のような静かさを精霊の加護を今我に授けよ」
『ウォータースプラッシュ』
「うゎあ、バケモノだ手から水ぶっ放しやがったぞ。…に、逃げろー」
クソ何が化け物だ。立ち向かう勇気も無いのか。無性に腹が立つな。
「….リア、大丈夫?ケガしてない?」
「ケガはしてませんよ。
それより何でそんな泣きそうな顔なんですか?」
「……だって、だって…..ぐすっ、リアがあんなことしたら、リアもいじめられちゃう」
「大丈夫だよ。そもそもあいつら避けられてたし。友達のためにはこれくらいするさ」
「…….」
やばいソフィアが黙ってこんでしまった。何かまずいことを言ったか。考えろせっかく友達ができるチャンスなんだ。
「…..リア、今友達って、ボクと友達になってくれるの?」
「もちろんだよ。ソフィアは僕の初めての友達だよ」
「….うぁぁん…….リア、ありがとうリア。ボクを…助けてくれて…..ぐすっ….大好き、ありがとうリア」
本当にソフィアは泣き虫だな。今日だけで3回も泣いてる。
「泣かないでソフィア。僕は君の友達だ。いつだって君を守ってあげるよ。だから泣かないで」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
家に帰ると父様にこっぴどく怒られた。いや、父様が怒ってたのは、俺が見境なく魔法をぶっ放したからだろう。
あのクソガキどもの親が家に乗り込んできてどなり散らかしたらしい。
けれど父様は優しく俺を諭してくれていた。
「リア、お前は強い。父さんも昔は力を振りかざして師匠によく怒られたものだ。
今回は少々やりすぎてしまったが、お前がしたこと自体は悪いことじゃ無いと思ってる。
いじめを止める。それは良いことだ。だから今度からは力の加減を考えてやるようにな。
そうしないとリアも加害者になってしまう。父さんが言ってること分かったか?」
強いからこそ誰かを傷つけてはならない。力の加減を考えなきゃいけない。やりすぎてしまうと、俺もあいつらと一緒になってしまうのだ。肝に銘じておこう。
明日からソフィアと何して遊ぼうか。一人じゃできない事が沢山できるだろうな。初めての友達だ。きっと楽しい事がたくさんあるだろう。明日が楽しみだ。
――ソフィア・クライアルムの視点――
毎日が楽しくない。外に出たらいじめられるし、家にいてもお母さんとお父さんは仕事に行ってるからいつも一人だ。楽しくない。毎日がそんな感じだ。
「あ、お父さんお弁当忘れてる」
お父さんがお仕事してるのはこの近くだったはず。前に一回連れて行ってもらった。お父さん困るだろし、僕が届けなきゃ。
帽子を深く被っていけば、バレないでいけるかな。ハリル達に会う前にこっそり行ってこっそり帰ってこよう。そうすればいじめられないよね。
「よぉ、エルフ。魔族がこんなとこで何してんだよ」
「いたいっ、….やめてよ」
ハリルにあってしまった。ボクが家から出てくるのを待ちぶせしてたように現れた。
怖い。何ですぐけってくるの?たたいてくるの?どうしてボク何もしてないのに。
「魔族のくせに何持ち歩いてるんだ、かせよ!」
「…いゃぁ、やめて….返してよ。お父さんのお弁当返してよ」
「こいつ魔族のくせに人間の飯食ってんのかよ。こんなんいらねぇだろ。捨てちまおうぜ」
「っあ、いやっ、やめてよ」
何でどうしてそんなことするの。ボク何もしてないよ。どうしてなの?どうして
「あいつまじかよ。森の中に入ってくぜ。そんな貧乏なのかよ」
「魔族なんか森に帰っちまえよ」
「かーえれ、かーえれ、かーえれ」
どうして、何で、どうして、そんな酷いことするの。ボク何もしてないのに、あれ僕何しにきたんだっけ。何で森に、あれもう何もわかんないよ。
「……助けてお父さん」
もう帰り道もわかんないよ。どうすればいいの。助けてよ、お父さん。
「グアアおおおおおん!!」
いやだ、いやだ、魔物だ。どうしよう、食べられちゃう。逃げなきゃ。あれ、足が動かない、いや何でどうして。誰か助けて。
「いや、いや来ないで、いや誰か助けて!!」
あ、ボクここで死んじゃうのかな。死にたくないよ。怖いよ。お父さん何できてくれないの?
「こっちだ。こっちにこい!!」
そんな声と共におっきな音がした。誰か来てくれたんだ。目を開けたら自分と同じくらいの男の子が立っていた。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
男の子の名前はリアムっていうみたい。リアはボクにとにかく優しくしてくれた。
魔物から助けてくれて、いじめっ子たちからボクを守ってくれたし、泣いてるボクを抱きしめてくれた。すごく心地よかった。何よりハーフエルフのボクと友達になろうって言ってくれた。
そんなこと言われたの初めてだった、しかも男の子から。ボク嬉しすぎてリアに大好きって言っちゃった。どうしよう、明日も遊ぶ約束したのにまともに顔見れないかも。
よし家に帰ったらお母さんとお父さんに今日のこと話そう。そしたらきっと二人も笑顔になってくれるよね。ボクの初めての友達だし。
「ソフィ、遊んで来てたのか?」
「あっ、お父さん!あのね、あのねボク今日お友達ができたの」
明日からはリアと遊ぶんだ。きっと明日からは今までと違って楽しい日になるよね。よし今日は早く寝て明日に備えないと。
「お父さん、早く早く。家に帰って話したいことたくさんあるの」




