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LOVE SONG (何気ない恋の歌)  作者: 池端竜之介
3/8

別離

 「来ちゃった」

と裕子は声をだした。

田口は、ため息をついた。


 「大学はどうしたの」


と田口はギターケースを拾いあげてながら訪ねた。


 「卒論は終わったし、就職も決まったから、なんとなく、迷惑?」


はぁーと田口はため息を漏らした。


 「何か用なの」


と田口はそっけない声で裕子に尋ねた。


 「別に、ただの帰省だし、どうしてるかなと思っただけよ」

 

 「そう、だったら、それはそれで、よかったね。それはそうと、この前の彼氏はどうしてるの?」


 と田口は、嫌味をいった。

 去年の夏に、それはそれは、ラブラブの関係のイケメンの医大生の彼氏をつれて帰省していたし、有頂天になっている裕子もいた。

イラついている自分に嫌気がさしたが、裕子の性格上悪気があるわけではない。

ただ自分に正直に生きているだけだ。

だから、憎めない。


 「別れたわよ、あいつ、他にも女がいたし、私から振ってやったわよ」

 

 といった、裕子は腕組みをした。

あいかわらず、かわいいなと田口は思った。

たしかに、裕子はきれいではないが、愛くるしいスタイルが抜群で性格は、さばさばしていた。

惚れっぽいのがたま傷だが・・・・


 「それで、俺のこと待ってたの?」


 という田口の問いに、裕子は頷いた。


 やれやれと首をふった田口だったが、裕子を促すと目の前の家の玄関の鍵をあけて家の中に入った。

外と同じくらいに、家の中は冷えていた。

ストーブに火を入れるとじんわりと暖かくなってきた。

やかんをコンロにかけてお湯を沸かし、ホッとココアを入れた。

裕子は屈託のない顔で、カップを受け取ると口をつけた。


ほんのりとした赤みがさした唇はきれいだと田口は裕子の姿に見とれていた。


 「おばさんは?」

と聞く裕子に


 「親父んとこ」

と返事した。


 田口の父親は単身赴任しており、時折母親が単身赴任先にいって世話をしていた。


 「まだ、バンドしてるの」


 部屋が温まってきたので裕子はコートを脱いでいた。

白いタートルネックのセーターがぴったりとして、体のラインをきれいに見せていた。


 「ああ」


 「曲とか書いてるの」


 「ああ」


 「そっけないね」


 誰のせいだと言いたいのを田口は堪えて、自分用に入れたコーヒーをすすった。


 「怒ってるの」


 の裕子が聞いてきた。


 「わからないよ、もう4年も前の話だし、おれも中学生だったし、裕子も」


 といって、田口はコーヒーをぐっと飲みほした。


 「ごめんね、あの時は」


 「仕方ないさ、俺たち子供だったし。」


 「でも」


 田口は、カップをテーブルの上に音を立てておいた。


 「もしもの話はなしだよ。裕ちゃんと俺はあの時に別々の道を歩くと決めたんだ。」


 田口はうつむきながら、裕子の次の言葉を言わせなかった。


 裕子は深く息を吐くと


 「そだね、この話はさんざんしたしね。もう、答えは出ちゃってるしね」


 裕子は、カップのココアを飲み干すとコートを着て、そのまま玄関に歩いていこうとする後ろ姿に田口は声をかけた。


 「ばか、もうこっちには帰る家はないだろう。今日はここに泊っていけばいいよ。」


裕子の足が止まって振り返った。

田口は、あきらめた。

裕子は、田口の胸の中に飛び込んできた。

田口は、裕子の栗毛色の長い髪を撫ぜていた。




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