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LOVE SONG (何気ない恋の歌)  作者: 池端竜之介
2/8

雪の降った夜に

「なんで、お前さあ、Gから曲作るの」

と佐々木が、ノートに書かれたコード進行表を見ながら呟いた。


 「なんとなく、歌詞からするとすんなりとな」


と田口は答えた。


 「オープニングには使えないぞ」


 「わかってるって、Eからの曲も作るって」


 佐々木の問いに、田口は答えた。


 実際は、Eからの曲は皆無に等しかった。


 歌詞は、佐々木が書くのだが、文学的な言い回しが多くメロディーラインは難しかった。

恋愛というよりも、メッセージ性が歌詞の端々に見えて聞かせてしまう曲になつてしまっていた。


 田口は、ギター弦のチューニングを音叉で5弦のDを合わせた。

ストロークの曲なら楽なのだが、そうもいかない。

どらかといえば、イントロはストロークで、歌いだしはアルペジオが多かった。

何分 シンガーソングライター Sの影響が偉大なためだ。

巷では、グループのOやTが活躍していた。

FMでもベストヒットの順位が繰り返されていた。

最近は、ウォークマンも、値段が手ごろになり手に入りだした。

それでもラジカセが幅を利かせていたし、カセットデッキにおいては、音質追及の極みだった。

レコード針の良しあしと、アンプの良しあしで驚くほど音質が変わった。

まだ、一部真空管のアンプもあり、渋井音を出していた。

テレビが破棄されると、裏を開けて真空管を漁ったものだ。


 「ササ」

と田口は、佐々木のあだ名を呼んだ


 「なんだ」

と佐々木は、エレキのオーバードライブのフットペダルを調整しながら返事した。


 「静香のこと聞いたか」


 ときく田口の問い佐々木はため息をついた。


 「まだ、ガッコに出で来ていないんだろう」


 とぽつりと佐々木がいった。


 「らしいな、友紀から聞いた」


 友紀は、佐々木の幼馴染で佐々木の家の近くだった。


 「あいつ、理系のトップクラスだろ」


 と佐々木がエレキを傍のギターアンプに立てかけてつぶやいた。


 田口はだまっていた。


 静香は、山崎 静香は佐々木と田口が組んでいたバンドのキイボート担当だった。

特に田口たちは、音楽で食っていこうと思っているわけではなく、今何かやらなければという気持ちから

バンドを組んて゛いた。

田口の中では、Sの曲調も好きだが、でたらめな歌詞とむき出しの感情を出す自分たちの同年代のOの曲も好きだった。

Oの曲はレコードが擦り切れるまで何度も聞いていた。

そうすると、気分が落ち着いてた。

何をしたいのか、わからない自分たちのいら立ちを代弁しているようにも思えた。


静香は、中学のクラスメイトで、なんとなく仲良くなりなんとなくバンドに入ってきたみたいな感じてさして、特徴のある子ではなかったが、田口や佐々木たちとウマがあった。


だが、高校に入学してからは、色々とあったらしくバンドの練習にも来なくなった。

もっとも、父親が個人経営の社長で、母親がピアノ先生とくれば、進学しかないのだ。

一応、公立高校なのだが、さほど偏差値が高いわけではない。

それでも、理系・文系の二クラスはトップクラスとして、特別の授業が実施されており、長期休みの間も補修が必須だった。

そうゆう事情から、静香が来れなくなったのもしかたないと田口は思っていた。


 「やっぱ、噂通りか」


と佐々木が吐いた


 田口は答えなかった。

なぜなら、田口はその噂の全容を知っていたからだった。


 「明日までに、ドラムのシーケンス作っておくから、さびのとこのライン考えてくれな」


 と田口はギターをソフトケースに直しながら佐々木に言った。


 「わかった」


 田口は、バンドの練習場所の農業用の倉庫のドアを開けて外に出た。


 1月の終わりの寒さが全身を襲ってきた。

 携帯カイロを出して手を少し温めて、歩き出した。


 天気予報では、夕方から雪になると言っていたが、本当に降ってきた。

 風もなく、乾いた雪が降ってきた。


 あっという間に、アスファルト黒い色が雪で白く染まり見えなくなった。

 幹線道路を外れた、農道は車も通らずにシーンとしていた。


 田口は、フード付きのジャンパーのフードの上に積もった雪を払いながら歩いた。


 幹線道路まで出ると、車の列がノロノロ運転をしていた。

 車で移動するよりも、歩いたほうが早いくらいだ゜。


 薄暗くなり、車がヘッドライトをつけだした。

 田代はヘッドフォンをはめて、ウォークマンのスイッチを入れた。


 ピアノのイントロから始まるバラードが流れた。


 G BM7 EM7 AM7 D7とコードが流れていく。


 田口が好きなコード進行だ。


 曲がサビにかかった時、目の前の外灯に照らされた、真っ赤なダッフルコートの人影が見えた。


 田口は、足を止めた。


 ダッフルコートのフードが上がった。


 雪のように白い肌が、外灯の裸電球に照らされていた。


 その顔を見た田口は、降り積もった雪の上にYAMAHAのアコースティックギターが入ったソフトケースを置いた。

そして、


 「どうして、いまさら」


 と声を押し殺しながら言った。

 

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