7話
朝の4時50分、僕は廃棄になりそうなおむすびをカゴに移して売り場から除外する。マヤさんはレジに入ってお客さんの対応をしている。
「…よし。5時の廃棄チェック完了っと。」
僕はカゴに入ったおむすびを、レジの廃棄モードでスキャンしていく。マヤさんが近づいてくる。
「冴木さん、一個渡してもらっていいですか?」
「…?どうぞ。」
僕は廃棄登録を済ませた三角のおむすびを一個マヤさんに渡す。マヤさんはそれをじっとみている。
「これはどうやって食べますか?何かで包まれています。」
まあ、もう廃棄した商品だし、開けて見せるくらいなら構わないだろう。僕はもう一つ三角のおむすびを手に取って、マヤさんに見せながら開けた。
「こうやって、真ん中からフィルムを縦に剥がして、一周させる。そうしたら、左右に分かれたフィルムを、こうやって取る。そうすれば、ほら。食べられます。」
「この黒い紙も食べるんですか?」
黒い紙?一瞬そう思ったが、海苔のことだと気がついた。確かにアメリカでは海苔を食べる機会はあまりないのかもしれない。
「はい。食べられますよ。」
マヤさんはおむすびを顔に近づけて匂いを嗅いでいる。
「独特な匂いがします。これは何でできていますか?…魚?」
「魚ではないですね。海苔は海に生えている海藻からできています。」
「カイソウ…?」
「海の、草です。」
そう言うと、マヤさんは納得したようで、
「なるほどです。」
と頷いている。
「とりあえず、廃棄した商品を捨ててきます。この袋の中に入れてください。」
「まだ食べられそうなのに、もったいないです。」
そうだよな。僕もそう思う。
「廃棄商品は捨てる決まりになってるんです。万が一、食中毒とかが起きたら大変だし、わざと廃棄商品を貰うために多めに発注する不正をする人が出たり、いろいろあるんです。」
「ハッチュウ?は分かりませんが、食中毒はなんとなくわかります。毒はたしか、悪いものです。」
全部は理解できなかったようだが、マヤさんは一応納得したようだ。マヤさんは開封したおむすびを僕が持っているゴミ袋に入れた。
「すぐ戻るから…。いや、マヤさん。ゴミを捨てる場所ってわかりますか?」
「分からないです。教えて欲しいです。」
「じゃあ一緒に行きましょう。今お客さんがいないし、ちょうどいいです。」
僕たちは二人で店の裏までゴミを捨てに行った。
「冴木さん。ゴミ捨て場の場所を教えてくれてありがとうございます。仕事のことに限らず、これからもいろいろなことを教えてください。」
「わかりました。こちらこそ、よろしくお願いします。」
なんとなくだけど、すぐにいい相方になれる。そんな気がした。




