54話
思い出の街について、賑やかな街の風景を楽しみながら歩いていると、目的地に着いた。
「わあ、暗くていい雰囲気ですね…。」
「最初入るときはドキドキするよね。僕も緊張した。でも大丈夫だよ。安心して。」
僕はそう言って、受付を済ませてダーツ台の番号が書かれた札をもらう。マヤさんはレンタルのハウスダーツをどれにするか悩んでいる。…大した違いはないだろうに。
気に入った3本が見つかったようで、僕たちは台に移動した。テーブルの上に置かれたメニュー表をマヤは手に取る。
「やりました醒さん!メニューにウイスキーがありますよ!」
マヤが喜ぶと思って、あらかじめメニューを確認して、ウイスキーのロックを出してくれる店を選んでいる。
「後ろの受話器で注文するんだ。僕は、コークハイにしておく。マヤと同じペースでは飲まないよ。」
マヤは受話器に手を伸ばしながらこう言う。
「私も学びましたので、もうアルハラはしません。…注文お願いします。ウイスキーロックを5杯、コークハイを1杯お願いします。」
5杯か…。『歌舞伎町の帝王』を倒した『新時代の女帝』にとっては朝飯前なんだとは思う。だが、不安になる数だ。
僕はダーツ台の設定をする。最初はルールがわかりやすいカウントアップで練習しよう。僕はマヤに説明する。
「とにかく真ん中の50点を狙うといいらしい。最後に得点が多い方が勝ちだけど、最初だし勝ち負けには拘らず練習にしよう。」
「いえ、醒さん。最初から勝負にしましょう。そのほうが楽しいです。負けませんよ!」
熱くなっているので、僕は止めない。受けて立つ。
飲み物が届いて、小さなテーブルはマヤのウイスキーでいっぱいになった。落とさないか不安だ。
「とりあえず乾杯しましょう」
「「乾杯!」」
二人はグラスを軽く合わせ、マヤは一気に飲み干し、僕は軽く口に含んだ。
「まずはマヤの番だよ。」
「3回投げたら交代でしたね。…それ!」
やまなりの軌道を描いてダーツはほぼ真ん中に当たった。
「上手だよ、その調子!」
「醒さん、ほぼ真ん中に当たったのに得点が2点です。50点じゃないです。」
僕は細かいルールの説明をした。
「なるほどです。ちょっと当たりどころが悪かっただけなんですね。単純に真ん中に近い方が得点が高いわけじゃないことも、理解しました。」
マヤは続けて2本投げる。相当うまい。全部のダーツがほぼ真ん中に当たっている。少しコツを掴んだら勝てなくなるかもしれない。
「得点は19点ですか。もう少し真ん中なら50点一気に獲得できたのに…。ダーツを回収してきますね。」
ダーツを回収して戻ってきた。
「じゃあ僕の番だね。」
席から動いた時に服に忍ばせていた指輪の箱が少し音を鳴らしてしまった。…多分バレないとは思うが、あとでトイレにでも行ってカバンに移した方がいいかもしれない。そう思った。
紙飛行機を飛ばすイメージで、ダーツを投げる。マヤの時とは違い、真ん中から大きく外れていったが、20点のエリアにギリギリ入った。得点の表示を見てマヤは唖然としている。
「醒さん!なんかずるくないですか!?こんなに真ん中から外れているのに、もう私の点数を超えてますけど!」
「…たまたまだよ。説明した通り、単純に真ん中に近い方が得点が高いわけじゃないんだ。」
「だからって…。さっきは納得しましたが、今は何だか納得できません!このままじゃ負けちゃいます!」
勝負に熱くなっている。楽しいんだろう。僕も楽しい。
その後の僕の2本は狙った真ん中の場所を大きく外れた。だが運良く8のダブル、5のトリプルに当たった。大幅リードだ。
「確かに得点が2倍、3倍になるエリアの説明も受けました。勝負に大きな影響がありますね。私、20のトリプルで60点を狙った方がいいでしょうか…。」
初心者なりに考えている。
「今回はたまたま運が良かっただけだよ。やっぱり真ん中を狙うのをおすすめするよ。」
「うまい人はみんな、運が良かったって言いますよね…。醒さん、こっそり練習してませんか?」
「ちょっと遊んだだけだよ。」
今回は本当に運が良かっただけだが、マヤは疑っている。
そんな感じで1ラウンド目は終わった。
マヤは2ラウンド目の最初の一本でインナーブルに入れて、50点を獲得した。ダーツマシンに派手な演出が表示される。
「おお、爽快感があります。私、ハマっちゃいそうです!」
その後もマヤは実力で真ん中を狙い、低い点数と50点を交互に取っていった。初めてとは思えない上手さだった。
僕はとにかく運が良かった。狙った位置には飛ばないものの、トリプルやダブルのエリアに入って得点を稼いでいった。
最終ラウンド。マヤがリードしている。
「何だか私の方がうまいのに、なかなか大きな差がつきません。…それ!」
マヤの3本のダーツは、50点、50点、2点を獲得した。1ラウンドに100点以上取ったので、ロウトンの派手な演出が表示された。
「おお、なんかすごいことになりました。醒さんにやっと大幅リードできました!最終ラウンドです。もう60点を狙わないと私に勝てないんじゃないですか?」
その通り、全て50点に入れてもマヤには勝てない差がついた。60点を2回、50点を1回取らないと勝てない。
「…それ!」
1本目は60点、心臓がドキドキする。2本目は…外れて14点のエリアに入った。僕の負けが確定した。
「初めてなのに醒さんに勝っちゃいました!嬉しいですが、最後の一投が残っています。どこに入っても結果は同じですが、どうぞ。」
最後の一投は20のダブルに入った。結構いい成績だったが、マヤには負けてしまった。
「楽しいですね、もう一回やりましょう!」
マヤはダーツが気に入ったようだ。負けはしたが、楽しんでくれて嬉しい。
その後もう2回同じルールで戦った。本気でやったがマヤには1回も勝てなかった。
その後は協力して持ち点をゼロにするルールにしたり、休憩してお酒を楽しんだりと楽しい時間を過ごした。




