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52話

今日の髪のセットには、前田くんがおすすめしてくれたワックスを使ってみた。使いやすくて自然なボリューム感が出る。いろいろ試してみるもんだな、そう思った。マヤとのデート当日にはこれをつけていこう。

着替えと髪のセットが終わってチャットを見ると、通知が結構溜まっている。今日はマヤが水瀬さんとヴェリティさんと一緒に買い物に行く日だ。偶然街でバッタリ会うリスクが低い今日のうちに、できる限り準備を済ませておきたい。

時系列順に通知を開く。最初に、ヴェリティさんから個人チャットで連絡が来ていた。

『水瀬さんにチャットでマヤとの関係を聞かれて、宇宙人と答えるわけにもいかなかった。だから、彼女はうちの会社に無償インターンにきた事があり、そこで仲良くなったという嘘をついた。私は一度ついた嘘に責任を持つし、催眠で後から誤魔化さないと決めている。冴木くんにも口裏合わせに協力してほしいんだ。多分聞かれることはないと思うけど!』

スタンプが添えられた文には、なんというか、彼女の強いこだわりを感じた。なるほど。対面と違ってチャットでは宇宙人の催眠を使うことが出来ないのか。そう気づいて、僕はマヤの言葉を思い出す。

『宇宙人は便利な催眠に依存しすぎです。いつか彼女の能力が役に立つ、そんな時代が来る気がするんです。』

チャットは、宇宙人の催眠が使えず、彼女自身の能力が役に立つ場所だ。

もうすでに、ヴェリティ・スターリングの時代は来ていたのかもしれない。

そう思い、僕は了解のスタンプを送った。

次の通知を開く。『マヤちゃんへの告白を成功させようの会』のグループチャットだ。まずは水瀬さんから連絡が来ている。

『服を見るより先に花屋に寄って、花瓶を買えたよ!マヤちゃん、ユリの花を気に入って、3本買っていったんだ!』

次にヴェリティさん。

『気に入っている白いユリの花言葉は色々あるらしいね。純粋、無垢。なんだかマヤちゃんに少し似ている気がする。縁起のいい花だし、プレゼントにも問題ないでしょ!』

僕は二人に感謝の連絡をする。

『白いユリをプレゼントにするよ。ありがとうね。』

スタンプを添えて送信する。

次に、店長だ。

『俺たちの指輪、コレらしい。』

それだけの文章と一緒に、写真が添付されていた。昔撮ったものだろう。2つの指輪の横に、ブランドのカードが置かれている。

気になって調べてみると、相当いい値段のものだった。

今の僕には手が届くものではないが、いつか買うかもしれないものだ。詳しくなっておくに越したことはないだろう。

『すぐには買えないでしょうが、将来の参考にします。お仕事中にありがとうございます。』

僕は全ての連絡を確認した。店長の言葉が頭をよぎる。

『いつだって頼れるのは自分だが、応援してくれる人はたくさんいるもんだ。』

今の僕には応援してくれる人がたくさんいる。水瀬さんにヴェリティさん。店長。

事情は知らないはずだが、ワックスをオススメしてくれた前田くんも、何かを察してくれているのだろう。

それに、マヤ本人だって、僕のことを応援してくれている気がする。

なんとなくそう思った。

僕は家を出て、一番近所の指輪ショップに向かった。

最初の店で分かったのは、店によって価格帯と取り扱っている商品が大きく違うこと。そして、その違いはネットの情報でもある程度は予想できるということだった。

僕は最初の店で買うのはやめ、探す範囲を広げて狙いを定めた。

僕たちの思い出の街にちょうど良さそうな指輪ショップがあることを知った僕は、電車に乗り、今日は一人で思い出の街に行った。

駅の中の花屋でユリの花束をマヤとのデートの前日に受け取れないか確認した。問題ないとのことだったので、予約して代金を支払った。

次にネットで予約したディナーの店に行く。

まだ夜にはなっていなかったが、僕たちが座る予定の席からの眺めを確認させてもらえた。

綺麗だった。それにきっと当日は夜景でもっと綺麗になるだろう。この店にしてよかった。

僕は前日に花束を預けに来ることを伝え、店を後にした。

指輪ショップでは、僕の予算にちょうど合う指輪が見つかった。店員にネックレスがないか確認すると、今は在庫がないものの、デートの前日までには用意してもらえるとのことだった。そこで、この店に決めた。

僕は予約した花の受取日にまた来るので、指輪とネックレスを用意してほしいことを伝えた。

最後に、ダーツ屋。いくつかあるダーツの店を回って、一番雰囲気がいい店を選び、当日受付で時間を取られないように会員登録をした。

せっかくなので少し遊んでルールを復習した。

一人なのに、二人いる設定にしてプレイしてみたりもした。

混み具合からして予約しなくても良さそうな気はしたが、念のため予約をしておいた。

これで今日できる準備は全部終わった。

あとは前日に花を受け取って店に預かってもらう。それと準備してもらった指輪とネックレスを買うだけだ。

帰る前にチャットを確認すると、『マヤちゃんへの告白を成功させようの会』に新しい連絡が来ている。

まずは水瀬さんからだ。

『マヤちゃんの服、いいのを何着か選べたよ!当日どれを着てくるかは私たちにもわからないけどね。』

続いて、個人チャットでヴェリティさんからも連絡が来ている。

『宇宙人の支給品にはない、お手入れ道具、洗剤も一緒に買っているよ。その辺も抜かりはないよ!』

二人に感謝の連絡をする。

全ての準備が整った。

僕は電車に乗って、思い出の街を後にした。


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