50話
「マヤ。宇宙に帰った日に行った街、覚えてるよね?そこにダーツをしに行かない?」
僕は仕事中、彼女に切り出した。
「いいですね、醒さん!いつ行きましょうか、というか、すぐ行きたいです!この後仕事が終わったらあの街へ行きましょう!」
僕は話の流れを変える。
「前行った時におしゃれな服装でやりたいって言ってたじゃん。仕事用の服じゃなくて、軽くおしゃれしていこうよ。僕も服を用意しておくから。」
「でも実は私、おしゃれな服なんて…。」
「そうだね、すぐじゃなくていい。…この日なんかどうかな。」
僕はカレンダーを開き、あらかじめ提案すると決めていた日付を指差す。
「あ、その日なら…。というかその日までには、服装を用意できそうです。」
「じゃあ、決まりだね。楽しみにしているよ。」
「はい!よろしくお願いします。」
全て予定通りに決まった。
数日前…
僕と水瀬さん、ヴェリティさんは前に一緒の時間を楽しんだカフェに来ている。だが今日違うのは、マヤはいないこと。今日は宇宙人の仕事らしい。
「冴木さん。マヤちゃんがいるのに、隠れて他の女の子と会うなんて、不誠実だと思いますよ。」
水瀬さんが怒ると、ヴェリティさんがなだめた。
「まあ落ち着いて、水瀬ちゃん。冴木くんの話を聞けば、納得できると思うよ。」
「ヴェリティさん、冴木さんに優しいですね。事前に何か聞いてるんですか?」
「まあ、ちょっとね。」
「とりあえず、来てくれてありがとう。水瀬さん。ヴェリティさん。今日は二人に頼みがあるんだ。マヤと一緒に買い物に行ってくれないか?」
「買い物?別にいいですけど、なんでわざわざ冴木さんが頼む必要があるんですか?」
水瀬さんは不思議そうな顔をした。
連絡先を交換していて、事前に話を通していたヴェリティさんが説明を始める。
「実はマヤちゃん、仕事熱心すぎて、仕事用の服しか持っていないんだ。今回買うのは、マヤちゃんのおしゃれ着。冴木くんが計画している本気デート、そのディナーに着ていくための服だよ。」
これは一部嘘だ。
マヤがおしゃれ着を持っていないのは本当だ。
ただし、その理由は仕事熱心だからと言うわけではない。宇宙人の会社が支給する服に、おしゃれ着が含まれていないからだ。
「まあ、そこまで高級な店じゃないけどね。でも、思い出の街が見渡せる店の窓際を予約するつもり。普段着でも問題ないと思うけど、できればマヤが気にいる綺麗な服を、マヤと水瀬さんとヴェリティさんの3人で選んで欲しいんだ。」
「それで今日私たちを呼んだってわけですね。それが理由なら、浮気ではないですね。むしろ、いいと思います。」
水瀬さんは少し驚いた様子だが、納得してくれたようだ。
「あと、今からいう二つも、できればお願いしたいんだけど…。一つ目はマヤに花瓶を買ってもらうこと。それと二つ目は、好みの花が知りたい。だから、買い物のついでに花屋にも寄って欲しいんだ。少しでも喜ばれる花束を、告白のタイミングで渡したいんだ。」
「マヤちゃん、花瓶を持ってないから、花束を渡されても、家に持って帰ったら置き場所に困ると思うんだ。自然な流れで花瓶を買うのは難しいと思うけど…。お姉さん、できる限り頑張るから。」
ヴェリティさんは言う。これについても事前に確認していた。
宇宙人には花を愛でる文化がないので、花瓶は会社から支給されない。よって、花を生けておくためには、自分で買う必要がある。
それに、定番のバラの花束を綺麗だと思うかは、宇宙人によって好みが大きく割れるらしい。せっかく贈るなら、少しでもマヤの好きな花を、少しでも長い時間楽しんでほしい。
「告白で花束を贈るんですか?相変わらず重いですが、いいですね。確かに定番のバラの花もいいですけど、ユリやガーベラとかもいいですもんね。少しでもマヤちゃんが気に入る花を贈りたいんですね。」
その後、水瀬さんはスマホにQRコードを表示してこう言った。
「私の連絡先です。冴木さんの本気度が伝わりました。3人のグループチャットを作りましょう。マヤちゃんへの告白が成功するまでの期間限定で!」
こうして、『マヤちゃんへの告白を成功させようの会』という名前のグループチャットが結成された。
…ネーミングはもう少しどうにかならなかったのかと思ったが、水瀬さん以外に提案者がいなかったので、その名前が採用された。




