45話
マヤさんの初めてのお酒の感想は、
「これ、普通のコーラですね。」
だった。あれ?そんなに薄く作ったかな?
そう思って飲んでみたが、ウイスキーの香りもアルコールも、確かに感じる味だった。
「ちょっと薄かったかな?でも、味わってみると、何か感じない?」
「あ〜。確かに少し独特な香りがする気がします。これがお酒なんですね。」
とりあえず、弱すぎて飲めないということはないようだ。マヤさんはあっという間に飲み干して、ピンピンしている。
「とりあえずもう一杯用意するよ。ちょっと待ってて。」
僕は二つのグラスを持ってキッチンへ行く。マヤさんもついてきた。先ほどと同量のウイスキーを二つのグラスに注ぐ。
「さっきのはこれぐらいのウイスキーを薄めたお酒だったんだ。もう少し強く作ってみるね。」
僕は追加でウイスキーを注ぎ、冷蔵庫の前へ行く。コーラを取って戻ろうとした、その時。
マヤさんはウイスキーを直接飲んでいた。
「ちょっとマヤさん!さすがにそれは…。」
ウイスキーの度数は約40%。同じ量で比べれば、アルコールの濃度はビールのおよそ8倍だ。そんなものを飲んだら…。
「これ、すっごく美味しいです!さっきよりお酒を強く感じます。香りも味も素敵です!」
意外な感想だった。
さりげなく僕のグラスに入っているウイスキーもぐいっと飲み干している…。
とりあえずマヤさんの体調が心配だ。
「時間差で酔いがくるかもしれない。とりあえずお水飲んで。映画を見終わるまでマヤさんは一旦お酒禁止!様子見しよう。」
「え〜。もっとこれ飲みたいです。」
酔っている様子はないが、念には念を入れておくに越したことはない。
「じゃあ、映画再生するよ。」
僕たちはグラスにノンアルコールの飲み物を注いでソファに座った。僕は塩とキャラメルのポップコーン、ミックスナッツの袋をパーティ開きにして、再生ボタンを押す。
こなもんの映画が始まった。
僕が映画に夢中になると、マヤさんはこっそり抜け出してキッチンにお酒をとりにいこうとするのでそれを止める。
そんなやりとりを何度もした。マヤさんは毎回悔しそうにしていた。そんなにお酒が気に入ったのか。
映画もクライマックス。こなもんが、死に際の窮地で自分の能力の核心を掴み、覚醒するシーン。マヤさんは目に涙を浮かべていた。確かにいいシーンだ。
映画が終わるとマヤさんは大興奮だった。
「すごくいい映画でしたね!原作の漫画、そしてアニメへのリスペクトを感じる素晴らしい映像化作品でした!」
「僕もそう思う。いい映画だよね。マヤさんと見れてよかったよ。」
「冴木さん、目に涙が浮かんでますよ。2回目なのに感動したんですか?」
自覚がなかった。恥ずかしい。
「…それでマヤさん。体調に変化はない?胸の辺りが苦しいとか、頭がフラフラするとか。」
「いえ全くないです。これで私のお酒の強さが証明されましたね。もっと飲みましょう!せっかくヴェリティさんに美味しそうなお酒をもらったんですし。」
確かにヴェリティさんがくれたお酒はいいものだ。
日本酒の方はわからないが高そうな見た目をしている。埼玉の地ビールは結構いい値段がするのを知っている。だから、僕は地元なのに飲んだことがないのだ。
「マヤさんがお酒に強いのかはまだわからないよ。お酒は限界まで飲まないと強さがわからないし、限界まで飲むものでもないんだ。楽しく飲むものなんだよ。」
「冴木さんは真面目で堅いですね。そういうところも嫌いじゃないですけど。」
まあ、あれだけのお酒を飲んでしばらくしてもピンピンしているということは、少なくとも僕と同程度か、それ以上にお酒に強いはずだとは思う。
けど、それは秘密にして僕たちは誕生日会、半ば宴会を始めた。
僕のここからの記憶は、おぼろげになっていった…。




