44話
「ゆっくり休みたいところですが、届いた荷物に私の仕事関連のものが入っていたら、早急に対応しなくてはいけないかもしれません。分担しましょう。冴木さん。テレビのリモコンはあそこです。」
マヤさんが指差した先にはリモコンがある。見慣れた地球製、それも日本製だ。
「使い方はわかると思います。それで配信サイトのログインをして、こなもんの映画をいつでも見れるように準備をお願いします。その間、私は届いた荷物を開けます。仕事関連のものだと見られるとまずいので、あまり覗かないようにお願いします。」
そう言われて僕はテレビをつけて操作した。表示されたQRコードを読み取り、ログインを済ませる。
「一つ目の箱は…。やっぱり勤め先からでしたね。中身は…。誕生日プレゼントです!新しいスマホと、欲しかったイヤホンが入ってます!これなら冴木さんも見て大丈夫ですよ。」
そう言われてみると、地球製のものではない、見たこともないスマホとイヤホンが入っていた。
「とりあえずログインは終わったよ。あとは検索すれば…。はい。こなもんの映画、ボタンひとつで見れる状態だよ。」
「ありがとうございます。では次に、食べ物と飲み物の準備をお願いします。グラスは、あそこの棚です。好きなものを洗って使ってください。」
僕は持ってきた袋からポップコーンを二袋取り出す。おつまみ用だったミックスナッツも一緒に出す。映画を見ながら食べよう。
次に、ウイスキーの瓶を持ってキッチンに行き、言われた棚からグラスを出して洗う。氷とほんの少しだけのウイスキーを入れて、コーラを注いでコークハイを作った。これなら市販のものより度数の低いお酒が作れる。
人生初のお酒だ。まずは低めの度数で様子見したい。
「はい。食べ物と飲み物の準備もできたよ。」
「ありがとうございます。二つ目の箱は、宇宙人の同僚の女の子たちからの誕生日プレゼントでした!宇宙のお菓子ですね。ほらここ、ヴェリティさんの名前もありますよ!」
そう言われてメッセージカードを見たが、宇宙の言語は全く読めなかった。
「とりあえず映画の準備はできたので、最後の箱を開けたら映画を見ましょうか。…あれ?これ、差出人がヴェリティさんになってるし、地球の配達会社からですね。冴木さんが見ても大丈夫です。一緒に開けましょう。」
中を開けると、まず目に入ったのは日本酒の飲み比べセットだった。渋いな。
それと僕の地元埼玉の地ビール詰め合わせ。…まさか僕の地元を知ってて送ったわけじゃない、よな…。
そして、イカ軟骨の塩辛の真空パック、アサリの旨煮、ミックスナッツ、オイルサーディンにビーフジャーキー。おつまみばかりだ。僕が買ってきたおつまみはミックスナッツだけだったので、ありがたいかもしれない。マヤさんの口に合うかはわからないけれど。
そして最後は、体温計?パッケージには宇宙の言語が書かれているが、僕には体温計にしか見えなかった。
「メッセージカードも入ってますね。」
カードには日本語でこう書かれていた。
『マヤちゃん、誕生日おめでとう!お酒を楽しんでもらいたくて、私個人でも誕生日プレゼントを贈らせてもらったよ!お酒は、節度を守って楽しんでね!』
そう書いてある。体温計の説明はなかった。
「これはなんだかわかる?」
マヤさんに聞くと、マヤさんは知っていた。
「ええ、それはヴェリティさんが働いている部署の宇宙的ヒット商品です。脇や口の中などの皮膚の薄いところに当てると、お酒の強さがわかる便利グッズなんです。」
本当に体温計みたいな使い方だった。確かに飲む前にお酒の強さがわかるのはありがたい。マヤさんは開封して説明書を開く。
「私も使うのは初めてです。冴木さん。ボタンを押した後、脇に差し込んでみてください。」
言われた通りにする。15秒ほど沈黙したあと、ピピピ、と音が鳴った。取り出してみると、85という数字が表示されている。昔ながらの7本の棒で数字を表現する7セグメント方式だった。宇宙のデバイスなのにそういうところはローテクなんだな、と思った。
「50が普通程度の強さで、数字が大きいほどお酒に強いそうです。100を超えると酒豪と名乗れるレベルだそうです。」
確かに僕の認識と一致していた。僕は普通の人よりかは少しお酒が飲める方だが、酒豪と呼ぶほどのものではないレベルだ。
「マヤさんも測ってみてよ。僕は85だったよ。」
僕は手元にあったアルコールティッシュで先端を拭いて、マヤさんに渡す。マヤさんも脇の下に挟んで測定を開始した。15秒ほどで先ほどと同じ音が鳴る。
「私の数値は888です。単純計算で、冴木さんが10人がかりでも勝てないレベルの酒豪、ということですね。」
そんなわけあるか。
見せてもらうと、ランプがすべて点灯している。エラーだろう。
「これ、正しく測れてないよ。もう一度お願い。」
もう一度測ってもらったが、結果は同じで888と表示されている。故障だろうか。
「…マヤさんのお酒の強さはわからなかったね。用心して飲んでいこう。」
「そうですね。早く冴木さんが作ってくれたお酒、飲みたいです!」
二人はグラスを手に取り、軽く合わせた。
「「乾杯!」」




