34話
僕はシフト確認アプリを何気なく開いて見ていた。この前バイトを紹介した水瀬さんの名前がシフト表に入っているのを見て、採用されたんだと知った。勤務時間は僕たちの前なので、次の勤務の時にすれ違うだろう。
…次の勤務の出勤中、マヤさんが前を歩いているのが見えた。追いかけて声をかける。
「おーい、マヤさん。おはよう。」
「あ、冴木さん。おはようございます。」
もうすぐコンビニに着くが、二人で歩いて向かう。
「そういえば今日のこの時間、前に話した、僕が紹介した人がシフトに入ってるみたいなんだ。」
「ああ、そんなことありましたね。水瀬さん、でしたっけ。」
「そうそう。あ、今1番レジに入ってる。」
僕は店の中を覗いてそう言った。
「同僚に聞いてた通り、美人な人ですね。」
少しむすっとしている。やきもちを焼いてたことを思い出したのだろうか。
とりあえず、店の中に入る。
「いらっしゃいませー、あ、冴木さん。また会いましたね。」
「お疲れ様です。水瀬さん。」
マヤさんもレジに向かって「お疲れ様です。」と声をかけて、二人でバックヤードに入っていく。
タイムカードを切って制服に着替えていると、マヤさんが声をかけてくる。
「冴木さん、今日はレジに入っていいですか?」
「わかった。じゃあ僕は売り場だね。よろしく。」
担当を決めたところで、僕たちは一度レジに入る。僕は引き継ぎ事項がないか水瀬さんに確認する。
「何か変わったことはありませんでしたか?」
「特にありません。あとはよろしくお願いします。では、お先に失礼します。」
そう言って水瀬さんはバックヤードに入って行った。
「じゃあ、売り場行ってくる。レジよろしく。」
そう言って売り場に出る。
仕事をこなしていると、水瀬さんが買い物をしてマヤさんのレジに入る。
「お会計お願いします。…マヤさんっていうんですね。よろしくお願いします。」
「こちらこそよろしくお願いします。…全部で1146円です。」
「ポイントカードはこれです。…冴木さんと一緒に出勤してましたよね。とても仲が良さそうです。…もしかしてお二人はお付き合いされているんですか?」
「まだ付き合ってないです。」
「まだ…。あ、レシートください。ありがとうございました。」
「ありがとうございました。お疲れ様です。」
その後、水瀬さんはマヤさんにこっそり耳打ちして帰っていった。僕は仕事を中断して、マヤさんに声をかける。
「水瀬さん、最後なんて言ってたの?」
「応援してますよ、だそうです。少しだけ話した印象ですが、いい人みたいですね。」
いい人か。確かにそれには同意する。僕も少ししか話していないが、水瀬さんはいい人だ。マヤさんのことを応援している、か。今の僕にはその真意はわからなかった。
僕は仕事に戻り、しばらくしてひと段落した。マヤさんとレジに入る。
「そういえば冴木さん。私以外の宇宙人とはまだ会っていないですよね?」
「うん。猫の課長とか集会に来ている猫を見るだけ、とかならあるけど。人の姿をした宇宙人と会ったことはないよ。どうして?」
「いえ、会ってないなら良いんです。もしかしたらそろそろ接触してくるかな、と思ったんです。」
「僕にマヤさん以外の宇宙人が接触?なんのために?」
「単純に冴木さんが、催眠のかからない珍しい存在なので、物珍しさから見てみたいという人が出てきそうです。」
そんな観光地みたいな扱いされるのか。
「もし出会ったらどうすればいいの?」
「あまり関わらないようにしてください。また私、やきもち焼きそうです。」
やきもち、か。まあ、出会った時にまた考えよう。
「そういえば冴木さん。話は変わりますが、こなもんの映画がネット配信されることが決まったみたいですね。私は配信サイトの会員じゃないので見れませんが、冴木さんは見れますか?」
「ああ、僕は見れるよ。うちに見に来なよ。ノートパソコンで見ることになりそうだけど、それでも良ければ。」
「はい!ぜひ見に行かせてください!私原作の漫画は読んで映画の内容は知っていますが、どんなふうに映像化されているのか気になってて。」
そんなことを話しながら、その日の勤務を過ごした。




