27話
マヤさんは店長に会いに行くと、即座に採用を言い渡されたらしい。また一緒の時間帯で働くことが決まった。
そして今、僕はマヤさんと一緒に働いている。廃棄になりそうな商品に値引きのシールを貼っているところだ。
僕は嬉しかった。また一緒に働けることが。一緒の時間が共有できることが。
「冴木さん、なんだか楽しそうですね。」
そう言われて我に帰る。顔に出ていたのか。
「マヤさんと一緒に働けて嬉しいんだ。しばらく一人だったからね。」
「冴木さんは一人でもなんとか仕事をこなせそうですが。」
「確かになんとかなる。けど、二人のほうが楽しいんだ。」
そう言うと、マヤさんは笑いながら答えた。
「私も宇宙船で一人で働く時間があったので、気持ちがわかります。一人だと、なんというか、安心感がないんです。」
マヤさんも同じ気持ちなのか。なんだか嬉しかった。
一通り働いて、休憩も終わった。朝のラッシュが始まるまではゆっくりしていて大丈夫だ。マヤさんはこう切り出した。
「冴木さん。私たち、恋人になるのには何が足りないんでしょう?」
「それが分かったら、多分僕たちは恋人になってるんだと思う。僕もマヤさんも初恋だから、二人とも勝手がわからないんだ。」
マヤさんは腕を組み考えながら話した。
「私も恋を知っている人に教えてもらえないかと上司や同僚に聞いてみたのですが、曖昧な回答しかもらえませんでした。」
まあ、そうだよな。恋を教えてください、と言われてもなんて答えたらいいのかわからないだろう。
「僕たちは友達としては十分過ぎるほど仲は良いと思う。僕はマヤさんが楽しそうにしていると嬉しいし、マヤさんもきっと、同じだよね?」
「はい!冴木さんが嬉しそうだと私も嬉しいです。」
「それはいいことだと思うし、僕はずっとそういう関係を続けていきたいと思う。でも、友達っていう関係を捨てずに、恋人にもなれるものなのかな?」
マヤさんも考え込んでいる。少ししてからマヤさんは口を開いた。
「冴木さんが心配しているのは、今の居心地のいい関係を失いたくない、と言うことですね。そのうえで、恋人という関係にもなれるのか、ということですね。」
そう。僕たちは約束した。マヤさんが宇宙人だと打ち明けた時、それでも友達でいてくれるかと聞かれた時に僕はこう言った。
『約束しよう、何があっても、いつまでも、友達でいようって。』
その約束を破らずに、恋人にもなれるものなのかどうか。
マヤさんが口を開く。
「確かに友情を捨てずに恋人になれるかどうかはわかりません。ですが、恋人の形も恋人の数だけあると思います。私たち二人が今の友情を大切に思っている限り、友情は失われないはずです。私たち二人だけの恋人の形を探しましょう。」
友情は捨てない。僕たちだけの恋人の形を見つける。そう言われて、僕の不安は少しずつ解消されていった。
「ありがとうマヤさん。僕たちはずっと友達。その上で、より幸せになれる関係を見つけよう。」
マヤさんは笑顔で頷いている。そうだ。何かを得るために必ず何かが犠牲になるわけではない。僕たちだけの形を見つけるというのは答えのないものを探すようなことだと思う。でも、今の僕にはそれが難しいだけの道ではないように思えた。




