26話
僕は宇宙人の集会が終わるのを10分くらい待ってから、マヤさんといつもの喫茶店へ向かった。
「懐かしい感じがします。1カ月以上地球を離れていましたからね。」
「店長がいる時間に店に顔を出そうよ。絶対に喜ぶよ。」
「はい、またあそこで働きたいです!」
そう話しながら、僕たちは喫茶店に入り、案内された席に座った。
メニューをマヤさんに差し出す。
「相変わらずどれも美味しそうです。…今日は、ツナとスクランブルエッグのサンドイッチにします。飲み物は紅茶で。」
「じゃあ僕も同じのにしようかな。飲み物はコーヒーで。」
店員を呼んで注文を伝える。店員はそれを聞くと店の奥に入っていった。
「とりあえず、恋しましょうってどういう事?」
「順番に説明しますね。私の脳をスキャンしたところ、機械にエラーが発生しました。恋の始まりが検出されたんです。」
「恋の始まり?それって、僕に?」
「はい。これは本来あり得ないことです。私は一度、19歳だと名乗りましたが、本当は私は地球年齢で言うと2歳以下の赤ちゃん同然です。そんな私から恋の始まりが検出されるのは普通ではありませんでした。」
「確か19歳っていうのは地球で過ごすための嘘の設定だったよね。」
「はい。そして、提出した冴木さんのデータを総合して考えると、冴木さんもまた、私に対する恋の初期症状が出ていると判断されました。」
そんな病気みたいに…。そうか。僕はマヤさんに恋し始めているのか。言われて初めて、人生で初めて恋を自覚した。まだよくわからないけど。
「そうなのか…。前も話した通りだけど、僕には恋がよく分からない。自分ではよく分からないんだ。」
「なので、二人で恋を知りましょう。今までは私は教えてもらう側でしたが、今度は教える側にもなります。私が冴木さんに恋を教えるので、冴木さんも私に恋を教えてください。」
なるほど。でも、一つ不安がある
「それで得られたデータをまた提出しに行くの?」
そう。マヤさんが一度帰った理由。データの収集が終わり、宇宙にデータを提出するために帰ってしまったのだ。
「冴木さんはお互いが恋を学び終わったら、また離ればなれになってしまうことを心配しているんですね。ですが今回はその心配はありません。」
マヤさんはスマホを取り出し、1枚の写真を見せてくれた。写真の真ん中に見たこともない機械が写っている。タコの足のような細い腕がたくさん付いていて不気味だと思った。
「冴木さんは宇宙人の重点監視対象になりました。細かく経過を報告するために、冴木さんを担当する私には、地球から宇宙へ脳の情報を送る装置を支給してもらいました。」
「…つまり、これがあるから情報を送るために宇宙に帰る必要はなくなったと。」
「まあこれ、そこそこ大きいので、愛着のある前のアパートから引っ越すことになりましたが…。」
「話をまとめると、とりあえず僕とマヤさんで一緒に行動して恋を知ればいいんだよね。」
「はい。まずは今までどおりの日常を過ごしましょう。一緒にいる時間を増やすために、またあのコンビニで働きたいです。」
「その点については大歓迎だよ。まだマヤさんの代わりの人は採用されてないんだ。店長もこの後出勤するし、直接店に行けば会えると思うよ。」
その時、店員がやってきた。
「お待たせしました、モーニングセット二つです。」
マヤさんと僕の前に美味しそうなサンドイッチと飲み物が置かれる。
「ごゆっくりどうぞ。」
店員は店の奥に戻っていった。
「じゃあ、食べちゃいましょうか。実はお腹が減ってて待ち遠しかったんです。」
二人で「いただきます」と言って食べ始めた。
また、2人の日常が始まった。今度は恋を知るために。




