25話
第二部
「冴木さん。私たち、恋をしましょう!」
どうしてこうなった…?
数時間前
バイトの休憩中、スマホを開いて『ことばパズル』を起動する。フレンド欄を開くと、マヤさんの最終ログインが『30日以上前』になっている。最近の僕は、これを確認するのが習慣になっていた。
僕はフレンド欄を閉じ、デイリーミッションをこなしてアプリを閉じ、アラームをセットして、仮眠をとった。
仮眠が終わり、レジに戻ると店長がいた。最近は僕の休憩中の対応の為に深夜帯に来てくれるようになったのだ。
「じゃあ、後は頼めるか?」
「任せてください。」
「すまないな、ハードだろ。」
「それは店長も一緒ですよね。」
そんな会話をして、僕は仕事に戻り、店長は帰る準備のためにバックヤードに入る。
マヤさんの代わりのバイトは入っていない。
いや、一度外国人のバイトが入ったのだが、数日でバックレた。店長も変なやつを採用して悪かった、と言っていた。僕の負担が増えないよう、早く新しい人を採用しなくては、という焦りもあったらしい。
「マヤさんは良かったよな。また日本に来てウチで働いてくれたらいいのに。」
それは、店長の最近の口癖だった。
「きっと来ますよ。」
根拠はないが、そう答えた。
「そうだといいな。じゃあ、任せた。」
そう言って店長は帰っていった。
マヤさんがいなくなった後のワンオペは、静かだった。何かしらの作業は常にあるが、朝のラッシュまでは客もほとんどこない。店内に流れる広告の音量がやけに大きく感じられる。
そんな時、ふと思った。ああ、マヤさんがいた時の僕って、幸せだったんだなって。
その後、早朝のラッシュを1人でなんとかさばき切り、僕は帰ろうとした。
なんとなく空を見上げると、その空は巨大な宇宙船で覆われていた。
もしかして、と思いチャットアプリを確認する。
『ありがとう』
それだけ送って今まで既読がついていなかったメッセージに、既読がついている。
マヤさんは、通信の繋がる場所にいる。つまり、地球に来ている。そう思うと居ても立ってもいられなくなった。僕は帰り道を走り出した。
初めて会った場所には、いない。じゃあ、あの駐車場はどうだ。
駐車場に彼女はいた。長い金髪、吸い込まれるような碧眼。間違いない。マヤさんだった。手には例のビニール傘を持っている。
「マヤさん、戻ってこられたんだね。」
僕は嬉しくて、涙が出そうになった。ただ、その直後に彼女が発した言葉に、僕は困惑した。
「冴木さん。私たち、恋をしましょう!」
…どうしてこうなった?




