23話
21話
僕たちはショッピングセンターを出て、街を歩いていく。
「ここが冴木さんの思い出の街なんですね。人通りが多くて賑やかです!車が通れないくらいの人がいますね。」
「この時間は違うけど、実際にこの道はお昼過ぎから車が通行禁止になるんだ。」
「こんなに広い道なのに、車が通れなくなるんですね。」
「歩行者天国って言うんだ。」
人の流れに沿って、道の左側を歩く。
「あそこのカラオケは、朝から安い料金で楽しめるからよく行ってたんだ。」
「カラオケ…?」
「歌を楽しむ場所だよ。機械で音楽を流して、それに合わせて歌うんだ。」
「私、歌はこなもんのオープニングとエンディングくらいしか歌えません。」
「たくさんの人で行けば他の人の歌を聞いて楽しめるんだけど、二人で行ったことはないな。気になる?」
「もっと歌について詳しくなってから挑戦したいです。」
そこまで気合いを入れて行く場所でもないんだけどな、と思う。
「あ、ガチャガチャ専門店だ。見てみる?」
「ガチャガチャはたまに見ますが、専門店があるんですね。…わあ、一面ガチャガチャだらけです!」
「何か一個引いて行こうか。」
そう言ってキャラクターコーナーを探すと、こなもんのコーナーを見つけた。キーホルダーにチャーム、ラバーマグネットなど、いろいろなグッズがある。
「どれにしようか悩みますね。」
マヤさんと僕は少し悩んで、キーホルダーを引くことにした。
「主人公のこなもんが当たりますように!」
そう言ってマヤさんが引くと、願いが届いたのかこなもんが当たった。
「マヤさんってくじ運いいよね。ハンバーガー屋でもこなもん引いてたし。」
「そうですか?冴木さんといるときだけだと思います。」
僕が次に引くと、サブキャラのたこ焼き太郎が当たった。カバンにつけておくことにした。
店を出て、再び街を歩く。
「この辺は遊べるところが多くてね。カラオケだけじゃなくてダーツやビリヤード、ゲームセンターとかもあるんだ。」
「ダーツとビリヤードはやったことないですけどなんとなく知っています。大人の遊びって感じがして憧れます!」
「僕もビリヤードはルールがわからないんだけど、ダーツは簡単だよ。二人でも遊べるし、対戦も協力も出来るから僕は好きだな。」
「私も大人っぽいおしゃれをして、かっこよくダーツしてみたいです!」
そんな話をしながら歩いていると、ゲームセンターの前を通りかかった。一瞬でこなもんのクレーンゲームを見つけたマヤさんが、
「すみません、見るだけ見てきます!」
と言ってゲームセンターの中に入っていく。
「このゲームセンターのメダルゲームでは結構遊んでたんだけど、しばらく遊んでいないから預けたメダルは有効期限が切れちゃってるだろうな。」
「この店も冴木さんの思い出の店なんですね。」
僕は
「少し2階のメダルバンクで残高を確認したいから、ちょっと行ってくるね。」
そう言って一人で2階に上がり、メダルバンクにパスワードを打ち込む。案の定残高は有効期限切れでゼロ枚になっていた。結構貯めてたんだけどな。
すぐに下の階に戻るとマヤさんの姿が見えなくなっていた。少し焦って探してみると、店の奥のアイスの自動販売機を見ていた。
「何か食べたいものはある?」
「チョコミントアイスが気になります。美味しいという意見とまずいという意見の両方を聞きます。冴木さんはどちらですか?」
「えーっと…。難しいな。美味しいチョコミントアイスもあれば、イマイチなものもあるから、好んで食べたりはしないんだ。」
「ちょうど真ん中くらいの意見なんですね。試しに食べてみます!」
そう言うと、マヤさんは財布から小銭を出して自販機に入れた。出てきたアイスの包装を剥がし横のゴミ箱に捨てると、ひとかじりして一言。
「…美味しくないです。冴木さん、食べていいですよ…。」
苦手だったらしい。渡されたアイスをじっと見て一人で考える。…間接キス、だよな。マヤさんは気にしないのかな。僕は少し葛藤したあとアイスを食べた。味は、集中できなくて正直覚えていない。
そんなこんなで、色々な場所を見ながら歩いているうちに、駅に着いた。
「大きい駅ですね。私たちの街の駅の倍以上の大きさがありそうです。」
「特急とか全部の電車が停まる駅だからね。時間もちょうど良さそうだし、そろそろ戻ろうか。」
そう言って駅に入る。券売機でICカードを買ってマヤさんに渡した。早速パスケースに入れてバッグにつけている。
改札を通ってマヤさんと一緒に帰りの電車に乗り込む。通勤ラッシュはすっかり落ち着いており、余裕を持って座れた。
「楽しい時間はあっという間ですね。」
時計をちらりと見る。11時半だった。マヤさんが帰る時間までもう少しだ。
「…本当にそうだね。」
「私、この街が好きになりました。また来たいです。」
楽しんでくれたようで良かった。僕の思い出の街が、二人の思い出の街になったのが嬉しかった。
電車は走り出す。
楽しい時間のおかげで忘れていた、マヤさんが宇宙に帰るという事実。その重みを、僕は改めて感じ始めていた。だが、最後の最後まで、もう少しだけ忘れていよう。これ以上ないくらい楽しんで、笑顔で送り出そう。そう決めた。




