21話
並木道を抜けると、目当ての芝生の広場に着いた。
「どこまでも芝生が続いています!綺麗です!」
「今日はきれいに晴れているし、いい気分だね。」
芝生の広場には、犬の散歩に来ている人、楽器の練習をしている人、木陰で本を読んでいる人、ただ横になっている人などがいる。みんな思い思いにのんびりとした時間を過ごしている。
マヤさんは…寝転がっている。
「冴木さん!試しに寝転がってみたら服が草まみれです。一緒に取ってください!」
テンション高いな。来て良かった。僕はマヤさんの背中を、マヤさんは自分の服の前側をパタパタとはたいた。
僕たちは木陰に荷物をまとめて、バドミントンを始めた。
「僕が打ったシャトルを、マヤさんが打ち返す。これを繰り返すんだ。」
「難しそうですが、頑張ってみます!」
僕が打つと、シャトルは山なりの軌道でマヤさんのもとに飛んでいった。
「ふんっ!」
マヤさんの全力のスイング。シャトルはラケットに当たったものの、ほぼ真下に落ちた。
「最初はそんなもんです。もう少し力を抜いて、斜め上を狙ってみて。」
「わかりました!」
今度はマヤさんから打ち始める。シャトルはちょうどいい軌道を描いて僕のもとへ。
「上手いです!」
そう言って僕も打ち返す。マヤさんは飛んでくるシャトルを見ながら打つのが苦手なのか、ラケットの端にカツンと当たって落ちた。
「3回続きました!次は4回を目指します!」
その後も僕たちは最高記録の更新を目指してバドミントンを続けた。最高記録は9回だった。マヤさんは夢中になっていて僕が切り上げるまでやめそうにない。
「少し休憩しよう。」
そう提案して、木陰に移動する。僕は先ほど買ったシャボン玉を取り出す。
「なんですか、それ?」
「シャボン玉っていうんだ。子供の頃に好きだったし安かったから、つい買っちゃった。」
僕は液の入った容器に吹き棒を差し込み、そっと息を吹き込む。たくさんのシャボン玉が飛び出してきた。
「わあ、綺麗です...。私もやりたいです!」
「そう言うと思って二つ買ってきた。はい。」
マヤさんも僕に習って同じ手順で遊び始めた。…最後の手順以外は。スーッ、と音がしたがシャボン玉は出てこない。
「苦くてまずいです…。」
…吹くのではなく吸い込んだらしい。僕も子供の頃に一度やったな。先に説明しなかった僕も悪かった。
近くの水道で吹き棒をよく洗った。マヤさんも口をゆすいでいる。
二回目は強く吹きすぎて失敗し、三回目で成功した。
「慣れちゃえば簡単でしょ。」
「はい、もう大丈夫です。綺麗で心が落ち着きますね。」
「シャボン玉は、儚いところも含めて好きなんだ。」
「はかない…?」
「長くは続かない、終わりがすぐ来てしまう。そんな感じ。でも、だからこそ綺麗だなって思うんだ。」
「私は、シャボン玉が消えずにずっと残っていたらいいのにって思っていました。でも、その考え方も素敵だと思います。」
ずっと残っていたら、か。僕はマヤさんがずっと残ってくれたらいいのに。そんなことを考えていた。




