19話
僕の休憩時間は終わり、次はマヤさんの休憩時間になった。
「じゃあ、レジと売り場は僕に任せて。今日も星を見に行くの?」
「今日は…。私も、冴木さんみたいにここで休憩とってもいいですか?」
「本当はダメなんだけど、僕が言える立場じゃないし、誰にもばれない。ばれても怒られないと思うし、いいんじゃないかな。」
「じゃあ、ここで休憩します。」
マヤさんはレジに寄りかかり、話し始めた。
「冴木さんにはここでいろいろなことを教えてもらいました。仕事について教えてもらったり、日本語について教えてもらったり。」
「マヤさんが聞いてきたことに答えただけだよ。それに、お互い様だと思う。」
「お互い様…?」
「僕もマヤさんからいろいろなことを教わった。前よりも自分から話すようになったし、表情も柔らかくなったって言われたんだ。マヤさんが居てくれたから、変われたんだと思う。」
「私も冴木さんも、一緒に居たから変われた。成長できた。それが、お互い様ってことですか?」
「そういうこと。」
マヤさんは、なるほどです、と頷いている。
「僕はマヤさんのこと、仕事仲間としても、友達としても感謝しているんだ。ありがとうね。」
「こちらこそありがとうございます。冴木さんと働けて、友達になれて、嬉しいです。」
僕たちは2人で笑った。
「…話は変わりますが、冴木さんが秘密にしていることってありますか?」
「秘密?マヤさんに隠してることは特にないと思うけど…。」
「宇宙人のことなど、私の秘密は全部冴木さんに話しました。なら、冴木さんが秘密にしていることがあれば、知りたいって思ったんです。」
秘密、か。言った通り、隠してることはない。でも、マヤさんに話していないことは…。
「マヤさんに限らず、僕にはあまり人に言わないようにしていることがあります。実は、僕には恋がよく分からないんです。」
「コイ…?コイって、恋愛の恋ですか?」
「そうです。マヤさんみたいに、人として好きな人はいます。こなもんみたいに好きな漫画やアニメもあります。でも、恋愛的に好きな人に、今まで会ったことはないんです。」
「それは、普通のことではないんですか?」
「どうやら珍しいみたいで、人に言うと驚かれます。なのであまり言わないようにしています。これが、僕の秘密です。」
マヤさんは考え込んでいる。
「実は私も生まれたばかりで、初めて宇宙船の外に出たのは冴木さんに最初に会ったあの日です。なので、私も恋した人はまだいないし、よく分からないです。」
「それじゃあ、僕たち一緒ですね。」
「はい。一緒なのは、なんだか嬉しいです!」
そんな事を話しながら過ごしていると、マヤさんの休憩終了の時間が迫ってきた。
「そろそろ忙しくなる時間ですね。頑張りましょうか。」
「はい!最後まで全力で頑張ります!」
僕たちは朝のピークに向けて、準備を始めた。




