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魔女の末裔と偽りの恋~忘れ薬と嘘~  作者: 橋本彩里
第一章 裏切り

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3.恋した人


 そういった日々がまた続きしばらくすると、ウィルフレッドは店の暇な時を狙って長居するようになった。

 予約客以外はぽつぽつと来客があるだけで、流行っている店ではないので薬品を作る以外はとても暇だ。

 すでに私の活動リズムや忙しい時間帯を把握し、それらを避けて訪れるウィルフレッドの訪問を私は歓迎した。


「シャノン。これ、王都で流行っている野菜を挟んだパンなのだけど、食事がまだなら一緒にしてくれないかな?」

「いいですけど、いつも買ってきてもらってすみません」


 すでに二人分購入した物を見せられ、私は苦笑した。

 これで四回目だ。さすがに申し訳ない気もするが、うきうきとすでに勝手知ったると奥にしまってある椅子を出すウィルフレッドを見ていると、ここで私が否定的なことを言うのは(はばか)られた。


「いいよ。いつも世話になっているし。こうして静かな場所と美味しいお茶でもてなしてもらって、今ではシャノンとのこの時間は俺にとって欠かせないものだ」

「――そうですか。今から、お茶を入れますね。待っていてください」


 なんとなくウィルフレッドのペースに流されながら、でもそれも心地よくて、私は彼との時間を楽しんだ。

 そんなある日。


「大事な話がある」


 いつもなら他愛のない話をするのだが、挨拶をしたウィルフレッドは周囲に人がいないのを確認すると私の前に立った。


「なんでしょうか?」


 笑顔も少なくやけに緊張した面持ちで切り出され、私は背筋を正した。


「好きだ。俺と付き合ってください」

「えっと、気持ちは嬉しいです。ですが、ごめんなさい」


 告白され、気づけばするりと断っていた。

 居心地がいいのと、また男女のそれは違う。

 人から見れば味気ないかもしれないが、やっと確立したこの生活のリズムを壊してまで人とお付き合いしたいと考えたことはなかった。


 ――可愛くない、よね。


 自分でもあっさりと出た言葉と態度にそう思う。

 もちろん好意を持ってもらえたことは嬉しいし、告白も驚いたけれど、やはり誰かと一緒にというのが今の自分には見えなかった。


 断ったことに後悔はないが、これで今までの関係が終わってしまうことを考えると残念だ。

 ウィルフレッドと会えなくなるのは寂しくなるなと眉尻を下げると、ウィルフレッドはわずかに息を詰め、それからいつもより少しだけ早口に言葉を続けた。


「ほかに好きな人がいる?」

「いいえ」

「俺を男として見られない?」

「ウィルフレッドさんだけではなく、男性を付き合うかどうかの対象として意識したことはありません。ウィルフレッドさんに魅力がないわけではなく、私のこれまでの生活にそういったことの必要性を感じたことはなかったので」


 彼はずいっと距離を詰めて、怒っても悲しそうでもなく、意思のこもった瞳で私を見つめながら積極的に話しかけてきた。

 そのことにほっとする。

 気まずい雰囲気にはならずに済みそうだと私は問われるままに答えると、ウィルフレッドはにこっと笑顔を浮かべた。


「そうか。なら、俺は諦められないな。これからは俺を男として意識して」

「えっ。断りましたよね?」

「ああ。断られたことは理解している。だが、ほかに好きな相手がいないなら、ただこれまで意識をしたことがないだけなら、シャノンを諦めたくない。シャノンの生活の邪魔はしないし、これまでもここに来る。少しずつでいいから俺に慣れていって」


 そこから熱心にウィルフレッドは私にアピールしてきた。

 宣言通り、私の生活リズムを崩そうとすることはなく、少しずつ少しずつ侵食してきた。


 そして、三度目の告白を受け、私は頷いていた。

 一過性のものではなく本当に私と一緒にいたいと考えてくれているのだと、ウィルフレッドに気持ちがぐっと寄ってきたタイミングで再度告白され、私はそこで初めて了承した。


 眩しい憧れの存在ではなくて、等身大の彼を知りたいと思い付き合うことになった。

 その時の、「もう、ダメかと思った」とその場に崩れるように嬉しさと安堵で泣きそうにも見える笑顔を、今でも鮮明に覚えている。


 ウィルフレッドが私のことを積極的に知ろうと、寄り添おうとしてくれる姿勢に、私ももっと彼のことを知りたくなった。

 彼のことが好きになるまで、そう時間はかからなかった。

 私の生活の中にウィルフレッドは当然のように存在するようになり、気づけばたくさんの好きが募っていて彼に恋をしていた。



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