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第02話: 【Fhu-氏視点の物語 ~あるいは、『白バラ』の神話~】(前編)

「そういえば、○インドウズのピンボール、無くなって久しい。」


 生まれついての○インドウズユーザーの男、Fhu-氏に御座います。

 ところがどっこい、大学の論文作成の際においては、

別のOSを使うことを求められて、さあ大変!

 泳ぎ方も知らずに海に入った愚か者の心持ち、アップアップと溺れてダウン、

沈むこともできずに酸欠と飢餓と睡眠不足に苛まれながら、

死んだ目をした猜疑心溢れる素敵な大人に成長できたと感謝しております。


「忙しい合間を縫って、ピンボールに興じたことはあるのか?」


 いや。

 アレ、結構面白かったけどさ、若かりし日の彼には難易度が高く、

“少佐”にまでしか昇進できなかった記憶がある。

 ……“少佐”とは??


「それはともかく。」


 この度、シオマネキの真似をしながら道を横向きに歩いておりますと。

 人生とは……、物語とは……、“ピンボール”ではないかと、そう思いました。

 知らねえけど。


「まあ、よく人生などはゲームなどに例えられて、

 或いは、ゲームは人生に例えられていたりしますなあ。」


 行ったり来たり。

 ボールの転がるその勢いのまま、或いは、跳ね返されてまた飛ぶ。

 目的は? 偶然遂げた功績が得点なのか?


「深い意味はありません。」


 ただ、面白いかなと思いました。 その結果がコレです。

 お楽しみ頂けますと幸いです。




2026/05/21

溺れて何を掴むか気になる道化こと、Fhu-氏

【新神代世界のFhu-氏】シリーズ


第02話:

【Fhu-氏視点の物語 ~あるいは、『白バラ』の神話~】




【目次】



序章:

【Fhu-氏は、不思議な男だった】


第01章:

【今一度、信じたい。】


幕間01:

【ティルト ―― マダムより、ご忠言】


第02章:

【まずは、ここまでが前提】


幕間02:

【ビデオモード ―― 天上の『○リンポス』】


第03章:

【つまりは、それが始まりだったのです】


幕間03:

【ビッグゲーム ―― 7人の愛娘達】


第04章:

【脳ミソ一丁】


幕間04:

【ミステリー ―― 触れたモノ、それは?】


第05章:

【平和な日常】


幕間05:

【ミニゲーム ―― 天国と地獄】


第06章:

【グレーカラーの世界から】


幕間06:

【ソーサー、スクープ、ホール ―― 様々な】


第07章:

【それが、Fhu-氏という男なのです。】


幕間07:

【マルチボール ―― 執着の1つ】


第08章:

【白の少女視点の物語】


幕間08:

【キャプティヴボール ―― 影芝居と姫神の舞い】


第09章:

【Fhu-氏の七不思議】


第10章:

【伝えられたモノ】


エピローグ:

【それが彼、Fhu-氏という男なのです】




******************************




序章:

【Fhu-氏は、不思議な男だった】



――Fhu-氏は、不思議な男だった。


 幼い内から、変わっているという評価の絶えない性格であったが、

青年なる頃を迎えれば尚も拍車の掛かること、止まらぬ勢いともなったと聞く。


(人の解せぬ言動、不可解な行動、読めぬ心の有り様。)


(理解されずとも、何と評されようとも、くんずほぐれつ、我が道を往く様。)


 これは、そんな彼から見た世界の話。






第01章:

【今一度、信じたい。】



――幼い頃より、不思議なモノを見た。


 見たと言ってはみたが、本当は見たかどうかなんてよく分かってはいない。

 多分、幼心が見違えたのが真実だろう。

 それでも、彼は見たと信じたこともあった。


(幽霊に河童、あるいは、UFOなどか。)


(人に嘘だと言われようが、見たと思った自身を信じて何が悪い!)


(ただ、信じた道を進んだ。)


 悪く言えば、聞かん坊の頑固者。

 面倒臭い質の少年が成長しても、結果としてはそれらしく、

近く親しき友などそうもいない人物にしかなれなかった。

 それでも尚、彼は進み続けた。



***



――1人、我が道を往く彼も、信じてみたいモノがあった。


 かつて、見たと思って見たと信じていたが、

大人になって結局勘違いだと気付いた、幼き日の幻想の累々でもなく。

 自分でない、誰とも知れない誰かが信じた迷信や常識とやら、

思い込みでもなく。

 大人になるに従って必要だと感じ、必死になって集めた学術的知識……、

同時に、社会に出ることで実は必要ではなかったとうちひしがれたソレでもなく。


(恒久的で、不変な価値とは何だろう?)


(ソレが、『神』という存在だと言うのなら……、見てみたいものだ。)


(今一度、信じたい。)






幕間01:

【ティルト ―― マダムより、ご忠言】



「あらあら、Fhu-、

 自分語りが長く過ぎると、退屈になってしまうわ?」


 おっと、いけない。

 ここで、素敵で素晴らしくそして面白いお方からのストップが入った。


「アナタが、一般的に云う、いわゆる、変わり者であったというのは、

 よく聞く話だわ。

 では、その不思議な変わり種が、果たして一体、『私達』に、

 何をもたらすのか?

 その一角でも、少しでも、感じさせてくれるのかしら?」


 これは……。 マダムからの挑戦だ。

 Fhu-氏なる彼の、良き理解者でもあるパトロンに、

語り聞かせて後悔させてならぬ。


(だから語ろう、今こそ紐解こう。)


 何を、Fhu-氏は語るのか。

 Fhu-氏が、何をし、何成し、何するゥ(!)としているのか。




第02章:

【まずは、ここまでが前提】



(巻いて行こう!)


 何せ、日頃、望んで求めていたし?

 結論から言えば、ラッキーなことに、彼は見ることができた。

 何をって? 『神』って方です。


「詳しくは語れませんが、

 “お会いしました”、というのが正しい。」


 『神を見た男』の称号が付いた!

 同時に、それは、街中で口にするなら、痛々しい人に思われる恐れがある!

 だが、それを痛いほど、覚えのあった彼は、

決して秘密と背負い込んだのであったァ!


「まずは、こんなんで、どぅっすか?」



***



「フィクションだと、断っておこう。」


 ちょっと前まで、デタラメ並べやがってなるクレーム電話が数件来ますたので。

 10件も行かない内に、嫌になりやんして、電話に出んわ。

 ……お後がよろしい様で。


「でも、続けます。

 ちょっと頭がアレなメンズが、おかしな夢物語を語り始めたんだと、

 そう思って聞いてください。

 馬鹿馬鹿しくとも、連なる全ての物語の重要な要で礎で序章なのです。

 レパートリーは複数御座いますが。」


 男が、『神』なる方にお会いしたの話です。

 まずは、誤解の無い様に、断ります。 宗教勧誘はしません。

 独り占めしたい男、それがFhu-氏なのです、何せ……。


 ボイン、バイン!


 キュッ♪


 そして、ほど良くポンでキュッ?


「……詳しくは語れませんが、こんな感じでした。

 独り占めしたい気持ちだけ、分かってくだされば結構です。」


 7色の光彩輝くパツ金の、ギリシャ神話にでも出てきそうな、

セクシーボディとは裏腹ながらの可愛い感じの方でした。

 ニョロンとやけに長い特徴的な前髪……、は、うまく巻いてまとめてますが、

それを見たなら、知る人はご存知でしょうか。

 尚、巷で噂される様な『後ろはツルピカ』ではありませんでした。

 整ったショートカットでしたよ?


「正直、『大人キレイチョロ可愛い』ていう印象でした。

 小一時間、褒め称えたい神々しさ! ……おっと、ゲフンゲフン。」


 まずは、ここまでが前提。






幕間02:

【ビデオモード ―― 天上の『○リンポス』】



「わあい、Fhu-ちゃんが、私について語ってくださいましたー!」


(可愛い……。)


 大人キレイチョロ可愛い系のセクシーお姉さんに、喜んで貰えました。

 万歳!


(金髪、碧眼、白い肌の……。)


(そよ風に波立つ、ふくよかで柔らかなお召し物に、ギリシャなサンダル。)


 思わず、ここが、天上の『○リンポス』ではないかと信じてしまいそうだ。

 確かに、見た目、ここは、ギリシャの神殿みたいな場所だけど。

 また、天より柔らかな光が注いでいるし。


 つん……。


「わたくしについても、もっと語ってよ。」


 目を少し伏せながら、Fhu-氏の横腹を人差し指でちょっと突く。

 こちらは、純和風と言いますか、前髪ぱっつん黒髪ロングの、

青紫色の袴スタイルとくれば清らかなる巫女さんの様な……。

 頭に銀色に輝く輪っか、冠らしいものを冠している。


「あぁんっ!

 何か、美味しい展開が待ち受けているのでしょうか?

 このままこの暴走調子で、突っ走って、語ってくださいねえ?」


 またこちらは、どう見ても、メイドさん。

 食欲を刺激する香りのする小麦色の長い髪の上質なお姉さんタイプ。

 されど、傅くべきなのは、Fhu-氏の方です。

 傅いて欲しい男のドリームはあれど、立場の違いが分からんのは、NG。


 ハァァァーーー……!!


(Fhu-氏は、力を溜めている。)


「敬う……。」


「あらあら、仲良しね。」


 マダムからも、お褒めの言葉を賜りました。 何と、慈悲深い!


「……。」


 おっと……。

 押し黙ったままの、また、別のお方から催促がかかりました。

 とっとと、次を語らねばならない。


(全ては、『王』のために。)






第03章:

【つまりは、それが始まりだったのです】



 勘の良い、学識あるお兄さん、お姉さんでしたら、

もう、お気付きかと思いますが。

 かのお方の権能は、『機会チャンス』……。


(えっ、アナタは、いろんな神様に会ってみたいの?

 私も仲良くできたら、……良いなあ♪)


「そう、このFhu-氏が授かったのは、たった1つの『チャンス』。

 そのために、古今東西、様々な神々にお会いすること、叶いました。」


(わたくしに名前付けたということは、……責任取ってくださいね。)


『天命と天啓』。


(美味しい生活を希望します♪)


『美食と快楽』。


 さらに、この2柱様からのご寵愛受けることも叶い。

 ご飯に困ることなくなりまして、ありがたやありがたや。

 調子こきたくなりにけり♪


(……調子こいてんじゃねえ。)


『王』。


 その方こそ、現在に至るまで、そして、終わらぬ永遠が終わるとも、

このFhu-氏が讃え語り続けなくてはならぬお方。

 そして、全ては、このお方のために動き出したのです。

 巨大な、物言わぬ『運命の歯車』が、カチリと噛み合った、もう止まらない。


「つまりは、それが始まりだったのです。」



***



「……という経緯で、4柱様からのご寵愛賜りまして。

 されど、この中で、1番に優先し、平伏さねばならぬお方こそ、

 このお方、『王』。 女王ではなく、『王』。

 『王』と記述して、“メレク”と読む。」


 この方の神話は、いつか語りましょう。

 その故に、Fhu-氏は、語るという重要な任が与えられ、

同時に、逃げられなくなりましたというのが真実。


(語れ!)


 男に神は命ずる。

 言葉は無くとも、奈落の底の底より深く押し黙ったまま、『王』は命ずる。

 孤独を知ろうとも、神のまにまに、語らねばならなくなりました。


(さあ、どこから語ろう?)


(話していない全てから??)


 そう。

 まず、『王』は、とても複雑で、あまりに超越天文学的に大きく、

二千や三千年やそこらの研鑽によるちっぽけな人智の範疇で解せるお方ではない、

というのが、前提です。

 故に、幾通りもの世界観、解釈が存在するため、

たったの一言どころか溜め息や瞬きの1つですら、難解なパズルを解くが如く、

翻訳する必要があるのです。 しかし……?


「ああ、やっと出番ですか、Fhu-。」


「お願いします、マダム。」


 恭しく頭を下げながら、そっと差し伸べた手に触れる、

 高級な肌触りの漆黒のシルク、グローブ越しの滑らかで艶やかな婦人の手。

 黒い半透明のベールで素顔を隠された高貴なこのお方こそ、素敵で素晴らしく、

そして、面白いお方。


(一説には、『王』の妹君であらされる。)


(されど、真実は、もっと複雑怪奇か。)


 かの、マダム・クローネ卿をエスコートできるなど、

世界中の誰の羨望と嫉妬を買うことか、予想も付かない。

 この幸福は、どこの誰でも満たされる権利はあれど、

遭遇する幸運に恵まれるなど、類稀と知らしめるべき。


「この上品極まることない、素晴らしいマダムは、

 中世ヨーロッパ社会で例えるなら、かの『王』なる方の『宮廷道化』。

 つまりは、下市民に、間接的に王の言葉を伝えると云う。」


 そう。

 難解な、『王』の一挙手一投足の意味を解読(?)して、

地上に住まう人の子に分かりやすく面白く教えて下さる、

素敵で素晴らしいお方に出会ったのです。


「今に伝わる『宮廷道化』は、人の王に仕える気の触れた愉快な下民、

 つまり、誰より低級ながら賢なる人物であったと、資料に覚え聞きますが……。

 かの『王』のソレは、天空に座してもおかしくない、

 それはそれは高貴でやんごとなき爵位ある、称賛止まない世界レベルをも

 見下ろし、知識こそ三千大賢者をも凌ぐマダム。

 ただ、その事実を鑑みるだけでも、かのお方、

 愛しき我らが『王』の凄まじさが伝わるかと思います。」


 かつて、Fhu-氏は、その道化なる高貴なマダムに、

うっかり漏らしてしまいました。

 彼女に翻訳して頂いた大いなる『王』の望みこそ、『語れ!』の一言について、

何をFhu-氏は語れば良いのか?

 アドバイスを求めてしまったのです。


「じゃあ、こうしましょう♪」






幕間03:

【ビッグゲーム ―― 7人の愛娘達】



「……ヒギィ! ミニゲームすら、まだだったのにィ!?」


「何を言ってンだ、お前!?」


 ペチンっ!


 頭の表面を走った高い振動数に、目覚めた。

 寝惚け眼で、己がマナーを省みても、

叩かれた理由には1つしか心当たりが無い。


「痛いっ、Fhu-氏じゃないっ! Zzz……。」


「まぁた、Fhu-さんが寝惚けとる。」


「疲れたんざろ、楽にしやれ。」


「ほら、そこ、その言い方ですと、違う意味に聞こえますわ!」


 無意識に目が開きそうになったけど。

 あ、やっぱり、眠くて霞む目をまた閉じる。 暗くなる。


「……まあ、眠い者を足蹴にする不届きは1人しかいないが、

 ボケに突っ込むはここにいる全員か。」


「ふふふ、何て愛らしい寝顔ですこと。」


「メガネは黙って帰れなのね!

 あと、お前ら皆雁首揃えて、とっとと、帰れなのね!

 ここは、私のウチだから、Fhu-だけ置いてとっとと、帰れなのね!」


「こんにゃろwww

 マセたチビビヂ○ソガキが、コイツと2人きりになったら、腰をフリフリ、

 跨ってナニすんぢゃ、こンのっ、○○(ピー)がァ!?」


 ブチっ!!


 空気から察するに、また睨み合っているな。

 口の良くない娘と、怒りっぽい娘が。

 このFhu-氏が、いなかったり寝てたりすると、すぐコレだもの。


(気付いていないと思ったか、愛娘達よ?)


「……ハイハイ、ケンカはお外で、仲良くやってね?」


「埃立つから、ここでやるな?」


「血が出たら、試合は終わりですわよ?」


「お腹空く前に止めろよ? 飯作っとくから、早めにな?」


「ふふふ、仲良しですね?」


(みんな、慣れてるなぁ……。)


 浅い微睡みの中、Fhu-氏は何を寝言も口にすることも無く。

 規則的な呼吸を刻み、また、深い眠りへと、永く続く螺旋階段を踏む様に、

ゆっくりと降りて行く……。






第04章:

【脳ミソ一丁】



 パッと、外された梯子。 突然抜けた、足元の床。

 その場にいながら、奈落に突き落とされた感覚、激しい焦燥感、

喪失感を伴う困惑と、それと、絶望感、孤独感、闇。


(まるで、脳ミソ一丁で、宇宙の果てに放り出された心持ち。)


(さるアニメの人造人間は、こんな気持ちで果てたのだろうか?)


(どれくらいの時間を、こうやって過ごしているか、わからない。)


 どんな刺激も感触も、音も、光も、匂いも、味も、感じない、何も無い。

 この如何ともし難い不快感を、誰かに伝える手段すらない。

 ただ、いつまでも続くとも知れない永久の孤独に漬かりながら漂っている。


(寂しい。)


(恐ろしい。)


(このまま、何も無い。)


(死はなくとも、生も無い。)


(永遠にこのまま……。)


 不快でありながら、安らかなここで、

優しく恐ろしくも浮かび漂っているらしい。

 諦観と侘しさなる、言葉を思い出す。

 このまま、どことも知れない、哲学的な闇宇宙に溶けてしまおうと、

ふと、思った。


(その瞬間、何かが誕生した。)



***



「おはよう、気分は如何、Fhu-?」


「あっ……、あっ……。」


 パクパク……。 プカプカ……。


(※御注意:

 他人には見せられない顔を、晒しています。)


 水槽の外から帰還した金魚の様に放心。

 覗き込むマダム他、心配そうなお顔を浮かべた3柱の女神様方の顔を見た。

 あの、素敵で素晴らしくそして面白いマダムと、何やら揉めていたが、

理解できる状態ではなかった。

 多分、こんな目に遭ったのは、『試練クエスト』だ。


(恐らく、『王』か、もしくは、素敵なマダムから、賜った試練だろーなー。)


 また、神聖なギリシャの神殿の様なここで幾度となく反芻する。

 無茶やご無理は、ご愛嬌! 覚悟して臨むが吉。


「やーねー、生還したし、大丈夫よ!」


「わたくしから、マダム、貴方にモノ言える立場でないこと、

 重々承知しておりますが。 ……やり過ぎです!」


「真面目ちゃんに、怒られてしまったわぁ。 あらあら……。」


「いいえ、マダム、お見事です。

 Fhu-が残した『種』は、もう芽吹いています♪

 ああんっ、どんな美味しい、素晴らしいことになるやら♪」


「よく分からないけど、Fhu-ちゃん、お元気そうで良かったです。」


「……。」


 夢から覚めた夢。

 放心から覚めても、未だ、目は焦点を定められずにいる。

 何が起きたのか、理解できずとも、何かが行われ、何かが起きたらしい。

 人の子には、何一つ分からない。


(全く、あの方々、いっつも、抜き打ちだから、参っちゃうよなー。)


(……でも、その度に、Fhu-氏は強い力を手に入れている実感があるんよ。)


 また、強くなる。






幕間04:

【ミステリー ―― 触れたモノ、それは?】



「……!?」


 まるで、視界が全て失くなって、

同時に、3次元空間すら超えた世界観全てを掴んだかの様に

把握し理解し見えている、万能感。

 この瞳に星が光る気がするのに、それは無くて、

虚無の眼窩かスカスカの乾いた洞穴の果てに風が吹いて1人ぼっち……。

 五感の枠を超えた、超次元的な感覚を知った喜びすらあるのに、

でも、何も感じなくて絶望が険しく深く、悲しみや苦しみが重く圧し掛かる。


「……。」


 何も言えない、何にも触れられない、何をも伝えることすらできないだろう。

 そうだ、心は逸りながらも慌て乱れているのに、胸が無いから鼓動が伝えない。

 ただ、ここに心だけが、宇宙に脳髄だけが1セット、プカリ浮かんでいて、

あらゆる全てから隔離され、なおざりとされて、忘れ去られているのか。

 時間の感覚すら、いつから忘れ去ったのか、もはや忘れて久しい。


「俺は……、何だっけ?」


 手繰り寄せる記憶。

 この時には、小さな記憶の断片が、散らばっている様なそうでない様な、

胡乱な状態で。

 一度、忘却を望み楽になることを求めれば、永久にそれが容易く叶うほどに、

儚く脆い。

 けれど、手の感覚も、手すら無くても、彼の心は手(?)を伸ばした。


「俺は……?」


(宇宙に浮かぶ青の母星。)


(そうだ、あの星の、その表面にある小さな島で生まれ。)


(都会なる場所で育ち……。)


(ちょっと変わった(?)人物像を踏襲?)


(いろいろあって、脳ミソ一丁でここ!)


 理解に大変苦しむが、それが、おおよそ正しいミステリー。

 自身を取り戻した彼は、また別に、感覚も許さぬ虚無の中から、

1つの懐かしい知覚を覚えた。

 まさか、こんなここで何かに触れたと感じるなんておかしいと、

いぶかしんだが、何かに触れた……、らしい。

 だから、本能の導くまま、掴んだのだ。


(そして、その掴んだ『小さな小石』の様なモノに、名前を付けた。)


 それが、ミステリー。






第05章:

【平和な日常】



「……それこそが、かつて、『原初の創造神』が体験した、

 天地創造以前の記憶の再現よ、Fhu-?」


「……!?」


 正確には、人の子が体験してショックで昇天するギリギリを攻めて、

よく似通わせ漸近させたソレだと補足を賜ったが。

 これ以上はリアルを追求しない方が身のためだろう。

 ところで、今、さらっと自然に軽く触れて流したが、『原初の創造神』を、

Fhu-氏は知っている。


(『原初の創造神』……、

 『彼』こそは、このちっぽけな変人、Fhu-氏に、『王』を託した神。)


(そして、『王』が唯一心を許し、最も愛した神。)


「へへ、そりゃあ……、大きく出ましたねぇ……。」


「ふふ、そうでしょ?」


 マダムも思わずニッコリ!

 件の神こそ……、言うなれば、つまりは、『王』の旦那さん。

 無口で気難しい『王』と違って、対称的に、親しみ易く、

柔らかで優しい感じのおしゃべりな方でした、確か。


(詳しくは、どうせ、またどこかで語るさ。)


「それで、そんな畏れ多くも頂き賜りました貴重な体験を通して、

 このちっぽけで名もない臣民如きに、何をお求めになるのでしょうか?」


「そりゃあ……、『王』のためよ?」


 そういえば、ご存知かと思いますが。

 『王』は、Fhu-氏が観測した次第では、女性の性質だったため、

女神であると考えておりますが、実際は、全て無限の性質があるそうで、

もっと複雑とのこと?

 それが、彼女こと、『王』の権能:『無限』と聞いて、随分経つ。


(ならば、その『無限』の女神が、一体何を望み求めれば、

 こんなFhu-氏になんかに勅令をお出しになるのか?)


「『語れ!』……、ですか。」


「そう、『語れ!』、よ!」


 いつか疑問に浮かんだこと。 ……それは、知らずとも語られる。

 語らねばならない。 語れば、遅かれ、知ることになる。


(何せ、『王』と、彼女の旦那さんとの再会を叶えることこそが、

 存在を許された全ての世界の悲願の1つなのだから。)


「語ることに困ったなら、Fhu-……、とりあえず、してみる?

 『異世界転生』!」


「何ですと!?」



***



「『異世界転生』って、知っているか!?

 平成後半から令和に変わった辺りの時代から流行った、そして今でも人気の、

 小説・マンガなどで題材にされた刺激的なテーマの1つなんだ!」



『もし、日常から離れた、全く知らない世界に放り出されたら、

 君なら、どうする?』



「そう、全く名前も声も知らない、君が新しく知った未開拓の世界……。

 そこでの、話をしよう。

 真っ白なノートに描いていく様に、さあ、物語を始めよう。」


 何て、突然なキラーパスが如くの無茶振り!

 こんな面白いトンデモ課題クエスト投げつけるなんて、

くっ……、さっすが、素敵で素晴らしくそして面白いマダム!


「つまりっ、ここでっ、何か面白いことやって、

 不思議な生活や珍しい体験談を物語るってェ寸法か!?

 異世界生活初心者のFhu-氏は、早速エントリー、ばんがるぜェっっ!!」


「……寝言がウゼエェざっっ!」


 ペチンっ!


「ダメだよ、叩いちゃ!」


「……痛っ、Fhu-氏じゃない!

 スピ~。 むにゃむにゃ。」


「……すまんざ。

 何か、寝言のセリフが長いし、妙なテンションざし、

 おまけにウゼエざから、つい、イラっと来て、な。」


 気付けば、場面は変わっていて、どこかの家の居間にいる。

 畳の上、Fhu-氏が寝ている傍らに、3人の少女らが座っている。


「何か……、平和、ですねぇ。」


 ずずず……。


 緑のお茶を1啜り。

 黒髪ショートカットのメガネの、若い尼僧が一言。

 緑色のセーラー服(?)を着ている。


「平和なものか。 忙しいことのこの上無いぞ?」


 白髪三つ編み少女が思い出す。

 困惑色のしかめっ面に、白いマロ眉が浮かんでいる。

 薄灰色の襟のセーラー服を着ている。


「『ブラックコンドル』って何ざ?

 海岸から夕日に向かって、『応援してるからなー!』って、

 1人で叫んでたのは何事ぞ?

 昨日は、道端で変な活動している見ず知らずの変な連中に絡まれたと思えば、

 ワケのわからんヘンテコ歌なぞ紡いで……、

 『アッパー・ラッパー』って、何ぞ?

 連中の、『かもめかもめかちんかちん』なる呪文に何の意味があるざ?

 意味不明ざ!!」


「『意識次元をシフト・アップさせて、愛を響かせてるラッパー集団』、

 らしいよ?

 胡散臭いのは、彼、Fhu-さんも同じだから、意見しづらい。

 ホント、変な人達と仲良くなるよね。

 あと、呪文は“か”の字を抜くらしいよ?」


 何気無く、この前聞いたばかりの俄知識(寝言)を教えた少女。

 紫色の襟のセーラー服を着ている。


 カァー……。


 今、気付いて赤面した。 何を揉むってかァ?

 乙女に、何を言わそうとした??

 それも、3人で気付いたのだから、話題を逸らそう。


「変な宗教は、困りますね。」


「赤いヤツの神社にハマる方が、まだ救いのあるのぞ。」


「赤いと言えば、今、私達、赤面が隠せていない。」


 赤い袴の、赤いリンゴほっぺの少女の神社、それはここ。

 皆一同に集い、彼女の都合も知らずお邪魔して、その一角の居間に、今いるが。


(尚、赤い少女のモットーは、『絶対正義』と、『悪即斬』。)


 姉妹(赤)は抜き身の真剣持って、口の良くない姉妹(黒)と、

今、外でじゃれ合いのケンカしている。

 また、あと黄色と青の2色がからかい半分で野次馬に行っている。


 平和な日常が、ここにある。






幕間05:

【ミニゲーム ―― 天国と地獄】



 その世界では、悲しみが溢れていた。

 白と黒と、そして、灰色で彩られた場所。


(ここでは、災いも争いも絶えない。)


 災いが起こる度、まだ被害の少ない場所、食料や水、資源、人を巡って、

争いが起こる。

 終われば、次の災いが始まる。 繰り返される。


(民間トラブル、地域紛争、そして、宗教戦争……。)


(暗い闇に囚われて、どれくらい経つだろう?)


 そんな中、ある時、奇跡がもたらされた。

 原因不明の不治の病という、無数の困難の中の1つなれど、

困難な災いの1つが、解決の光を受けた。


(とある少女が、奇跡を起こす。)


(その貴き白き御手が触れれば、

 光に満ち溢れ、たちまち、苦しみから解き放たれる。)


(そうして、世界は、少しずつ光を取り戻していく。)


 たちまち病が癒される。

 癒された者もまた、その力を伝搬する。

 救い主が、数知れぬほどに、地に満ちた。


――しかし、世界は救われなかった。


 そんな世界を、彼は見ていた。




 <後編に続く>



続き(後編)は、明日06/02に投稿予定。

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