表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
97/119

8. 私の日常

その後しばらく警戒していたけれど、何も起きなかった。


気がつけば、またいつもの日常に戻っていた。


私の日常は、朝、火種の確保から始まる。


夜の気温が冷めるこの地方では、

それが嫁の、朝一番の仕事だ。


『ファイア』


といって、私はサボり放題だけど 笑


その火種を使ってお湯を沸かしておく ――― と思ったら桶の水が無くなっていた。


各家には小さな貯水升が備え付けられていて、川から水をくんでくるのも仕事。

寒い朝、冷たい水を汲むと、

指先がじんと痺れて、思わず顔をしかめる。


『ウォーター』


これまた魔法で片づける。


この間、その様子を見たミレイが「ずるいーっ!」って、

本気で羨ましがっていた 笑



次にするのは、鶏の餌やりと卵の回収。

牛とかヤギは村の共同飼育だけど、鶏は各家で飼っている。


「バタンッ」


上に上着を羽織り外に出る。


ハァーーー。


毎回白い息を出して、寒さを確認してしまうのは、

自分でもなんの確認なのか、よくわからない 笑


今日もかなり冷え込んでいて、軽く身震いが出る。


裏の鶏小屋に回ると、

今日は5個ほど卵を産んでくれていた。


起きたばかりの鶏たちに、

畑で収穫した麦と虫に食われた野菜を与えていく。


「コッ! コケッ!」


今日は卵とパンとヨーグルトの朝食かなー。


この村に来たばかりの時はパンですら貴重品で、

様々な野草と畑でとれる芋・ライ麦、そして牛乳とチーズが主食だった。

村が発展してきたことで、山の下の食材も簡単に手に入るようになってきた。


私の先見の明のおかげと言っても、良いと思う 笑


ライ麦パンの上に目玉焼きを載せ、軽く白身魚の燻製で作ったフレークを振りかける。

エリが大好きなジャガイモのカリカリ焼きも添え、

ヨーグルトのコップを並べたら皆を起こしに行く。



「起きてー、朝ご飯よー」


私の声に反応してリズとエリは、目をこすりながら起きだした。


ベッドで朝のハグをかわす。

子供達ってなんでこんなに甘い香りがするんだろうね~。


うーん可愛い!


次はうちの旦那さんだ。


寝室に入ると、さすが元執事の息子!

既に着替えていて、机に向かって何か書き物をしていた。


「ごはんできたよー」

「んっ、ありがとー」


軽くキスをする。


子供ができてからのスキンシップがとにかく大事と、

隣の家のヨルテさんから繰り返し聞かされていたもの。


授乳している間は、

彼のことを疎ましく思うことの方が多かったけど、

ヨルテさんの言葉を無理せず実践したおかげで、

今でも、仲良しのままでいるのだった。



そして、皆が食卓についたら、

さあ戦闘開始!

ならぬ朝食開始!


私はグズるリズを、

ディストルはぼーっとしているエリを、

サポートすることから始まる‥‥。


「リジュ、これきらーい!」

「わがまま言わずにちゃんと食べなきゃダメっ!」


「ほらエリー、エリの好きなカリカリだよ?」

「う~~ん‥‥」


毎朝の光景。


こういうところだけは年相応で、

いつまでたっても手がかかる‥‥。


「一番可愛い時期よ」って言われるけど。

‥‥‥当人たちには、余裕なんてない。


どうにか2人を食べさせると、ディストルが仕事に出かける。


日によって、畑仕事、放牧、魚釣りとか、色々変わるらしい。

その日一番必要そうな仕事を皆で話し合ってから担当を決める。

一見効率悪そうにも聞こえるけど、

少ない人数で色んな仕事をするにはこれが一番と。


一方の私は、食器を片付けると、洗濯物を持って村共同の洗い場まで行く。

リズとエリを連れて行って、皆で洗濯をしながら、子供たちの相手をするのだった。


最近はみな、洗濯場で私が来るのを待っているから、早めにいかないといけない。

なぜかというと ―――


『ウォーター×ファイア』


魔法で適温のお湯を出す。


皆が喜びの声を上げて、ようやく一斉に洗濯をし始める 笑

この、私待ちっていう状況は、本当に辞めてほしいんだけどね‥‥。


「ほんとイリィのおかげよね~。ほんと男衆はこの時期の水の冷たさ知らなさすぎるんだから!」

「ほんとよね~。私なんてあかぎれで痛い痛いって言っていたら、舐めときゃ治るなんて言われたんだから!」


そんなことディストルが言い出したら、私は間違いなくキレるでしょうけど 笑


水と火の魔石を使って出来るようになると楽なんだろうけどね~。

残念ながらそんなに安くない‥‥。



洗濯を終えた衣類は、広場近くの共同干し場に干す。

風属性魔法があったら、一気に乾かせるんだけど‥‥。

まー、ないものはしょうがない。


そのまま子供達を、皆の子供と一緒に遊ばせる。


「リーちゃん、いくよー」


この広場で遊ぶようになって、

リズがちゃんとリッキージュニア(リジュ、ロンドの子)のことを待ってあげるようになってきた!

リズは身体能力が半端なく凄い分、思いあがって自己中心的にならないか心配していたんだけど、

まったくの杞憂だった。


さすが私たちの子!


って、親バカ? 笑


一方のエリは広場でも一人遊びばかりで、私の心配の種になっていた。

私が小さい頃は、いつもリオとエミリーと3人で遊んでいたのに‥‥‥。

村という小さな共同社会の中では、周りと一緒に行動するのは必須スキル。


ディストルに相談しても、


「男ってそういうもんだから気にしすぎ、気にしすぎ」


って言うのだけど、


「私も男の子だったんですけど!」


って言いそうになって、何となく言えずもやもやとしているのだった。



――― そんなもやもやも、ある時一気に解決する。


村のガキ大将であるホドが一人で遊んでいるエリを見つけ、

半分以上無理やり、男の子集団に引っ張っていったのだ。


最初は私もアワアワして、心配して様子を見守っていたけど、

さすが小さい子には手慣れていて、

気付いたらエリも楽しそうに皆と鬼ごっこしていた。


子供社会には、子供なりの気遣いとルールがある。

何か親の私の方が、勉強させられている気持ちになっていた。


この村で、この子たちを産めて、本当に幸せだと思う。



正直に言うと、

風属性を求めて旅に出たいという気持ちは無くなっていない。


でもそれ以上に大切な物がこの村に出来てしまったのだから、

その想いは心の奥隅にそっとおいておくしか、今はない。


ただ運命は、そんな私をそっとはしてくれないのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ