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性別が変わっても俺は私  作者: 蘭熊才王
第四章 風の章
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7. 村の拡張工事

大国の脅威を間近に感じた私は、村長さんに相談して本格的に、この村の防備を固めることにした。


村長さんは、


「そんな大袈裟なことをしなくても、誰もこんな村のことなんて気にしないよ‥‥‥」


と及び腰になっていたが、私があって損はないということで、ごり押しして認めてもらったのだ。


‥‥村長さんは分かっていない。


私達が仲介している魔石が、魔導王国にとって、どれほど目の敵になるものなのか。

もしかしたらタキオン神導国からも、目を付けられるかもしれない‥‥‥。


それに最近、シルク商会が流通経路を確立した、土の魔石も大きな影響を及ぼしている。

土の魔石はコルトラッシュ砂漠から、敢えて海路で北の港町に運び、

この村を拠点にこの大陸の各地に流通させているのだ。

王国にとって、闇の流通経路のハブがこの村。


この村には火・水・土の三種類の魔石を、

大量に格納する貯蔵庫が常備されている。


もし本当にこのことがバレたら、魔導王国といわずとも、

宝石を狙った盗賊団が数多く襲ってくることは間違えなかった。


――― 守らなきゃならない。

この村を、この暮らしを、私の家族を。



私は村長さんとミツルさんとロウだけ連れて、大森林へ繋がる山の峠近くまできている。


「この峠の谷を大量の土砂で埋めてるのが一番だと思いますけど、どう思います?」


私はミツルさんに確認を取る。


「うーん、仮想敵国は魔導王国なんでしょ? それだったら簡単に突破されない?」

「うぅーん‥‥」


「ま、魔導王国が敵なんですかっ!? そ、そんなの襲ってきたら勝てっこないですよ~~~ 泣」


村長さんがすっかり腰を引かしている。


うーん‥‥‥、覚悟を決めるには、まだ時期尚早か。


「村長さん。魔導王国自体はきっとこんな遠くまで来ないから、来るとしたら盗賊ぐらいなもんだと思いますよ」

「そ、そうですよねっ!」


ミツルさんには目配せをして、余計なことは言わないよう口止めをする。

ミツルさんは肩をすくめてそれ以上何も言ってこない。


とはいうものの、ミツルさんの言うことは最もだった。

魔導王国が相手となると生半可な防御設備では何の役にも立たない。

救いは峠に繋がる山道やその前にある森林地帯が自然の要塞となって、

大多数の侵入を防ぐ構造になっていること。


東の空で見たあの大規模な魔法は、ここでは難しいと期待するしかない。


『イラプション』


私は火山流と火山岩で峠と山登りの道の両端を埋め、人が2人ぐらいしか通れない狭い道に仕立て上げるのだった。

登山道も粘性の低い火山流でコーティングして、網目が波打った様なツルツルした道にする。


火山流が固まった岩は相当固くなるので、魔法でもなかなか穴をあけづらい。

そして登山道は山の上からは丸見えだから、攻めてきても、これで少人数で撃退することができる。


一応、山の上には監視と攻撃を行うための足場も『ロック』で作り上げておいた。


少しずつ形になっていく防備を見ていると、それだけで大分違う。

何もできずに怯えているだけじゃない。



次は森林国家ゴルドアに繋がるトンネルの出入り口だ。

村側の出入り口に通行料を招集する簡単な関所みたいな物は作っていたけど、

戦時を考えると少し心細い。


両側の出入り口に、高さ5m近くの巨大な鉄の扉を設置することにする。


私はラジーさんに頼み込んで何枚も正方形の分厚い鉄板と、巨大な真っすぐの鉄の棒を、多数作ってもらっていた。

ここからはロウと工作の時間!


まず『ファイアブレス』で部品をすべて、長時間炙り、真っ黒な錆で覆っていく。


この工程が30分ぐらい続くので、地味に魔力がしんどかったりする。

ロウと二人でやっても、結局魔力切れ寸前になるまでかかってしまったのだった。


「ママばっかり外で遊んでてズルい!」


昼過ぎに全ての焼き入れを終え、ようやく家に帰ってきたら、

暇を持て余していたエリに捕まった‥‥。

そしえそこから、遊びに連れていかされることになる‥‥‥。

こ、これは‥‥‥し、しんどい。


うーん、これはいっその事、ドアの設置はみんな連れて行った方が楽かもしれない。

幸い、明日はディストルも仕事を休めるらしいし。

相談してみるか~。



そして、次の日の朝。


「じゃあ行くかー!」


次の朝、村で唯一の商店から借りて来た荷馬車で、扉の部品を載せて山の下まで運ぶ。

ディストル、エリザベス(リズ)エリアス(エリ)、ロウ、ミツルさん、村長さん、私の陣容。


鉄の部品は相当重たいので、下り坂は下から支えてあげないと転げ落ちてしまう。


荷馬車の上で楽しそうにはしゃぐリズとエリを傍目に、

私とディストルは『ターフェン』まで使って、必死に荷馬車を抑えていた。

完全なる肉体労働‥‥。


‥‥‥。

‥‥ぽた。

‥‥ぽた。


魔法を使っていても額から汗がこぼれ落ちてくる。

この荷物何kgぐらいあるんだろう‥‥。


その時、そんな私たちの様子を見ていたリズが、

何か思いついたように、荷台の後ろから飛び降りる!


「ママ、たしゅけてあげるー!」


あ、危ない!


「リズ! 危ないから! 荷台の上で大人しくしている約束でしょ!!」


リズは荷台の後ろで何かをやっていて答えない。

私たちは荷台を支えるのに必死で、リズの様子をうかがうことすらできない。


その時突然、


ガクッ!?


急に、支えていた荷台が軽くなり、

ほとんど力を入れる必要がなくなる‥‥。


エエッ?


荷台の後ろに繋がっていた紐を、

「よーしょっ☆ よーしょっ☆」

と言いながら、3歳のリズが引っ張っていたのだ!


その見た目の可愛さから、全く想像ができないぐらい恐ろしく力強い‥‥‥。


ディストルもここまでとは思っていなかったらしく、

二人で目を見開き、顔を見合わせているのだった。


「ママ、ゴーレム呼び出したら?」


荷台の上でその様子を見ていたエリが口を挟んでくる。

言われてみれば当たり前だけど、私はすっかり忘れていた。


エ、エリも3歳だよね?!

ゴーレムをエリの前で呼び出したのって、半年ぐらい前だから、エリはまだ2歳半‥‥。


うちの子たち、大丈夫なのかしら。

行く末が恐ろしすぎるんですけど‥‥‥。


『ロック×メタル×ライフ』


途端に鈍く銀色に光るゴーレムが、地面から産み出され、

私とディストルの代わりに荷台を支えてもらう。


「リズ、もぉーだいじょうぶだから、荷台の上に戻ろうね!」


私は荷台の後ろに回って抱え上げると、リズの頭をなでなでしながら、

荷台の上に戻すのであった。


「リジュ、すごい?」


満面の可愛らしい笑みで微笑みかけてくるリズ。

こんな可愛い我が子があんな力を?

未だに信じられない‥‥‥。


「リズ、ありがとうね! 怒鳴ってごめんね」

「へへーん♪」


「エリもありがとうね」

「ふふーん♪」


二人共可愛い過ぎるんだけど、

後ろにいる村長さんとミツルさんが、

驚いた顔で見つめてくるのが気になってしょうがない。


「噂には聞いていたが、本当に神の子だ‥‥‥」

「エレーミアン神様のお導きの賜物‥‥‥」


ちょ、ちょっと!

うちの子を勝手にエレーミアン神の子にしないで!


”クスクス”



その後ゴーレムの力で部品を全部下に下ろした私たちは、鉄の部品と部品を小さく細い高温の『ファイアブレス』で溶接して組み立てていく。


鉄の棒を繋げて、片扉の支柱にして大きな鉄の扉をその側面にくっつける。

支柱の地面側と天井側には『メタル』で念入りに補強した支柱受けを配置している。

特に天井側は周りの岩も含めて補強しておいた。


扉は少し斜めに傾かせて、自重で開くように設計している。

反対側の扉も同じ要領で作成し、完成した暁には、

両開きの巨大な鉄扉が、外に向かって大きく開いているのであった。


外から押し込めば扉が閉まり、完全に閉まり切ると、内側に複数ある閂が落ちる構造。

扉をしめるには、大人の男数人がかりで引っ張る必要がある。


その荘厳さはルクソンの街門にも劣らない。


最終的には魔石の力で開閉を自動化したのだけど、

この時はそこまで考える余裕がなく、そのままにしたのであった。



これで鉄壁の要塞になったと言っても過言じゃないくらい、

しっかりした防御体制が整えることができた!


‥‥とはいえ、

こんなものを使う日が来ないことを祈るしかない。

魔術師相手にはほとんど通用しないだろうし‥‥。


でももし、その日が来るのなら。


そのときはきっと、

この村も、子どもたちも、

絶対に守り抜いてみせる!



村の空は秋の香りが漂い、

季節の変わり目があっという間に来ようとしている。


いつぞやか見た巨大な白い鳥が、

また旋回して我々を見下ろしているであった。

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