表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
94/121

5. 幸せな村の生活

「産まれてからが地獄だからー。特に二人なんて絶対に寝れないと思うわよー」


散々脅されていたセリフ。


口うるさいお母さんなんか、

まるで誰かに恨みがあるんじゃないかと思うぐらい、会うたびに聞かされていた。


それが ―――


「ちよっと、リズちゃん借りていくわねー」

「はーい」


親の私ですら、姉のエリザベス、愛称:リズがどこにいるか分からないぐらい引っ張りだこで、

あちらこちらの家でお世話をしてもらっている。

弟のエリアス、愛称:エリも部屋で泣いていたら、道端で鳴き声を聞きつけた村のお母さんが駆け付け、いつの間にか部屋にあがり込み、世話をしてくれているのだった。

もしかしたら、まともに授乳と寝かしつけをしているのは、夜の間だけかもしれない‥‥‥。

奇跡の双子は、一気に村のアイドルとなっていたのである。


あれだけ怖がっていた ”地獄” は気づけば、

誰かと分け合うもので、何も怖がる必要はなかった。

この村の人たちが、当たり前みたいに手伝ってくれている。


それが、とてもありがたくて、

「本当に、この村で産んでよかったー!」

と、心の底からそう思うのであった。


現在妊娠6ヵ月目のロンドが、


「私のお母さんまで、リズとエリに夢中で、私の子が生まれた後、ちゃんと手伝ってくれるか心配なんだけど‥‥‥」


と言いだす始末。

さすがに自分の娘の子供はもっとかわいがると思うよ 笑


最初の頃は不安定だった気持ちも、

最近はどうにかなるかなーと落ち着いてきている。


どこまでが「エレーミアン神の祝福」なのか分からないけど、やはり神の力は偉大ってことなのかもしれない。


”かもしれないじゃないっ! 偉大なのよっ!”


ツッコミを入れてくるあたりが可愛らしいんだけど 笑


”キィーーー! 神様をバカにするなぁー!”


こんなふうに笑えるのも、きっと余裕ができた証拠。


あのときは、笑う余裕なんて一つもなかったからなー。

それなのに今は ―――。

こんなにも多くの存在に祝福されている。


私の子どもたちは、本当に幸せ者だ。

そして、それは自分が祝福される以上に、それがたまらなく嬉しい。


ああ、これが ――― 親なんだな~。



「リズちゃ~~ん♪ ん、ばぁ~~~っ!」


ディストルなんて鼻の下が伸びすぎて、ちゃんと仕事に身が入っていないから困ったもの 笑


そうそう、シルクさんも子供が生まれてすぐ、

でっかいプレゼントと一緒に駆け付けてくれて、この間お祝いをしてもらっていたところ。

リガール先生を手配してもらって、私の方がお礼をしなければいけないのに、

シルクさんは決してお礼を受け取ってくれなかった。


「私はただ、イリィさんのお子さんが無事生まれてくれただけで、十分嬉しいんですよっ!」


その言葉を聞いた瞬間、胸の奥がじんわりと熱くなったもの。


ああ本当に ――― 、

皆に愛されてありがたいと。


感激のあまり思わず、シルクさんに抱きついてしまって、

あとで、ディストルにちょっと怒られたのは反省しています 笑


なかなか男だった時の感覚が抜けていないのかもしれない。

旦那さん、心配かけてごめんね 笑

でも私にとってディストルは、いつまでも特別な、ただ一人の存在だから安心してね 笑


――――――


シルクさんから聞かされ心配していた、魔導王国の様子も表立っては大きな動きが見えず、

なんやかんやで結局、そこから三年経とうとしていた。

私たちは本当に穏やかな生活を、送ることが出来ている。


穏やかといっても、日々新たな事態との格闘ばかりで、あっという間の三年間。

双子の子育てはやはり大変で、

四元素魔法を取り戻すために、各地を回っていた前の一年より、

この三年間の方がよっぽど短く感じていたぐらいだった。



「リーちゃん、こっちぃー」


うちのリズがロンドの2歳の息子リッキージュニアをおもちゃにして遊んでいる。

その横でエリが黙々と一人積み木を積み上げて遊んでいる。


本当にこの2人は性格が真反対。


姉のリズはお転婆腕白我儘な陽キャタイプ。

弟のエリは気弱で姉に反抗できず、でも自分の世界をしっかり持っている陰キャタイプ。


同じお腹から生まれてきたのに、こんなにも違う。


それが面白くて、

同時に少しだけ不思議で、楽しい。


リズは村の皆さんに甘えかされ過ぎたせいで、こんなになったんじゃないかと、

一時大いに反省したのだけど、どんなに怒ってもへこたれず、

あーこれは生まれ持っての性格なんだなーって今更気付いたところだった 笑


それぞれに、それぞれの良さがある。


私に出来ることは、

この子たちが自分のやり方でこの世界を生きていくときに、

少しでも困らないように手を添えることだけ。


だから今は。

ただ、私の可愛い赤ちゃんたちでいてくれる時間を、楽しませてもらうのだ 笑


「リズー、リーちゃんは自分で遊びたいみたいよー。ママと遊ぼー?」

「えー!? ママ嫌っ! リーちゃんが良い!」


えぇー? ママ、結構ショックなんですけど‥‥‥。

ほんの少しだけ、胸がちくっとする。

嬉しいような、寂しいような。


「ほら、リーちゃんいこっ!」


私たちは村の広場に新しく作った、子供を遊ばせるための遊具があるスペースで3人を遊ばせていた。


三年前にお金をかけてテコ入れしたおかげもあってこの村も、

以前の3倍以上、大きな村に変貌していた。

住人が増えるにつれ、ついに常設の商店まで出来、利便さは格段に向上していた。


ラジーさんが経営する工房もかなり順調みたいで、鉄鉱石の生成依頼が、

以前の月一から週一にまで増えていた。

物の売り買いも、前の物々交換から、今ではフィルムッシュ王国発行する貨幣に変わっている。


これというのも、私が3年前に購入してきた動物たちが、畑の開拓も含め役立っているのと、

シルクさんたち商隊が落としていくお金が、バカにならないということに他ならない。


北のフィルムッシュ王国まで足を伸ばすの大変ということもあり、

シルク商会の魔石の仲介を、この村で一手に引き受けている。

この繁栄の理由の一つでもあった。


三年前、農業と漁業ぐらいしかなかったこの場所が、今では人の営みで満ちている。

それを見ているだけで、私は少し誇らしくなる。

私のおかげと言っていいよね! 笑


私がつい物思いにふけていたら、目を離したすきに、

リズが近くにあった大人の背の5倍は超える大きな樹を登っていた!


3歳とは思えない素早さと力強さ。


「ちょ、ちょちょっ!」

「リーちゃんはやくぅー、おいでぇー」


私は顔を真っ青にして、止めに入る。

心臓が、ぎゅっと締めつけられる。


「危ないから辞めてぇー 泣 お願いだから―!」


木の下でアワアワしながら、リズの下を右往左往していた。

リズはひょいっひょいって、猿のように木の枝から枝に飛び移って遊んでいる。


本当にリズは親泣かせ‥‥。


リズやエリは魔法がほとんど効かないから、

何かあったときに私はほとんど何も出来ないし。

落ちてケガしないか、心配で、心配で、しょうがない。


お願い、辞めてーーー!

エリザベス、あなたはようやく、

自分でお着替えが出来るようになったばかりの3歳なのよー 泣


「ママ、『フローティング』」


はっ!

その時となりで遊んでいたエリが冷静な一言をぼそっと呟く。

3歳なのに発音が完璧なんですけど‥‥‥。



『フローティング』


私は浮き上がり、枝の間を飛びまわっていたリズを無事キャッチする。

ふぅーーー。


「イヤアアア!」


私の胸の中でジタバタ暴れるリズ。


ディストル曰く、リズはこれでも手加減しているらしい。

相当力強いらしく、ディストルはいつも筋肉痛に苦しんでいた 笑


子供の世話のためだけに、『ターフェン』使わないといけなくなるとか、

想像もしたくないです‥‥‥。



奇跡の双子は、何もかも規格外で、


可愛くて、

愛おしくて、

――― そして、ちょっと怖い。


この子たちが、この先どんなふうに育っていくのか、

ちゃんと守りきれるのか、その不安は、いつまでも消えない。


でもそれ以上に、圧倒的に、この子たちと生きていける未来が、

楽しみで仕方がなかったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ